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    TIKI_nakatoba

    通りすがりの腐女子です。

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    TIKI_nakatoba

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    モブ隊員に夜のお誘いをされるおみと、それを撃退するジャンの話。
    わが家のジャンおみは仲良しのネコちゃんたち。
    ※ジャンさんの女性相手の初体験の年齢や状況などを捏造しています。

    #モブおみ
    #ジャンおみ
    janmi

    「なぁ、ジャン……」
    「おい、御神苗……」

    呼びかけが重なった。視線を見合わせ、「なんだよ」「そっちこそ」と、普段の彼ららしくなく話し淀む。
    二人がいるのは、南米に設置された研究所の内部だ。地中から見つかったオーパーツの発掘のために数ヶ月前に仮設され、発掘や警備の人員が多数寝起きしている。他機関からの斥候が増えたたため防衛隊の増員と同時にスプリガン二人も派遣されたが、今のところは小競り合い程度だ。

    「高校生は仮眠の時間じゃねーのかよ?」
    「まだ二十二時だぜ、中学生だって寝てねえよ」
    「おい、オレにもカップ取ってくれ」
    「ほらよ」

    油断をしているわけではないが、深夜の食堂でコーヒーを飲むくらいの時間はあったし、顔見知りがいれば雑談するくらいの余裕はあった。コーヒーの良い香りが彼らのいる一角を満たす。ジャンは、カップを傾けながら口を開く。

    「で? さっさと話せよ、言いかけてやめられると気持ちわりーんだよ」
    「てめーも言いかけてただろ」
    「おめーの方が一秒早かった」
    「子供かよ!」
    「失礼だな、とっくに酒の飲める歳だぜ」

    御神苗は、少し困った様子で側のベンチにどかっと座った。

    「分かったよ、じゃあオレから言うけどよ……おまえ、って、……童貞?」
    「……は?」
    「その、セッ……とか、そういうこと、したことあるか?」

    御神苗の言葉は尻つぼみに小さくなって、直接的な単語に至っては感覚器官の発達したジャンでなければ聞きもらすほどだった。

    「あるぜ? なんだよいきなり」
    「えっ、あ、そうなのか? いや、その」
    「たりめーだろ、オレをいくつだと思ってやがる」
    「そ、そうだよな、じゃ、」
    「待ちやがれ」

    と、御神苗が立ち去ろうとするのを、ジャンは肩に手を置いて引き止めた。最初は突然すぎて正直に答えてしまったが、焦って戸惑う御神苗の反応は、からかってくれと言っているようなものだ。

    「ハハーン、さてはおまえは童貞だな?」
    「わっ、悪ぃかよ! しょーがねーだろ! 彼女作るヒマなんてねーよ!」
    「悪くはねーよ、おまえいくつだっけ? 十八?」
    「十七だよ! 別に普通だろ!」
    「ニッポンの事情は知らねーけど別にいいんじゃねーの? まーオレは十三の時に捨てたけど」
    「は? それはさすがに早すぎねぇか?! 彼女も同い年くらいだろ?」
    「バーカ、彼女なわけねーだろ、近所に住んでる売春婦だよ」
    「はぁ?! ……っ」

    御神苗が目を白黒させるのを、ジャンはニヤニヤと眺めた。
    日本人の感覚でいえば、売春婦相手の初体験など良識とやらに反するのだろう。しかし彼は、ジャンの故郷がパリの下町であること、売春婦の世話役に拾われて育ったことも知っている。世間の裏の裏まで見尽くしたはずの年少の同僚の、このような善性や配慮、健全さ、思いやりといった心持ちは、ジャンにとっては物珍しく、同時に形容し難い思いを掻き立てる。
    コーヒーを片手にベンチに腰掛けると、御神苗も隣に座った。ジャンは少しだけ話題を変えることにした。

    「ところで、なんでいきなりそんなこと聞いて来たんだよ」
    「いや、その……」

    と、口ごもったあと、御神苗は開き直ったように話し出した。

    「昼間聞かれたんだよ、童貞か、って。三十代くれーかな、初対面の奴に」
    「おいおい、ずいぶん不躾なやつだな。防衛隊の新人か?」

    急な増員で所内は知らない顔ばかりだが、セキュリティは万全のはずだ。身元の怪しい人間の入る余地はない。

    「あぁ。傭兵部隊時代の隊長の仲間らしい。イタリア人って言ってたかな。よくしゃべる奴だったぜ」
    「……もしかしてあいつか? 夕飯の時におまえの隣に座ってベラベラ喋ってたヒゲの男」
    「その通り。なんだ、いたのかよ。声かけろよ」

    焦げ茶色の瞳を見開いて驚く御神苗を見て、ジャンは、はぁっと深くため息をついた。
    実は、ジャンが聞こうとしたのもその男のことだったのだ。あの男なんなんだよ、と。
    ジャンが見たのは、テーブルに座る二人の後ろ姿だけだ。食後にポーカーでも、と古参の職員に誘われて食堂を出る寸前だったためしっかり見たわけではなかったが、それでも妙に距離が近いなとは思った。やたら密着して肩まで抱いて御神苗が距離を取ろうとしているのにお構いなしのように見えた。
    顔馴染みなのだと思っていたが、新人だとしたらS級工作員であるスプリガンに対して取る態度じゃない。そこでふと思いつく。

    「……あいつ、もしかしておめーがスプリガンだって知らねえんじゃねーか?」
    「あー、そうかもな。別に構わねーが」

    仮設の研究所内では電力は制限されて、冷房設備はあまり稼働していない。高地で気温はさほど高くないとはいえ、そのため職員はみな軽装だ。ジャンも御神苗も、例外なく薄手のシャツ一枚で過ごしている。下は、ジャンは少し太めのミリタリーパンツだが、御神苗はAMスーツの下だけを履いていることもある。
    アーカム内部にスプリガンの名前は知れ渡っているが、容姿までは知らない者も多い。ジャンは「クソ長い金髪」という目立つ特徴のせいで分かりやすいが、AMスーツを脱いだ御神苗は全く普通の少年に見える。高校に通っているだけあって戦闘中の威圧感は普段は感じられないし、体格のいい男どもの中ではちょっと目立つほど若くて小柄だし、「かわいい男の子」と評されているのを、ジャンも何度か耳にしたことがある。……あのイタリア人、そういえばこいつのケツを撫でてなかったか?

    「おまえをスプリガンだと知らないであんなにベタベタしてたってことは……おい、あいつに何言われたか、よーく思い出してみろ」
    「はぁ?」

    ジャンのセリフに、御神苗は眉をひそめながらも、えーと、と考え始めた。素直な奴、と心の中で突っ込む。

    「メシ一緒にいいか、って聞かれて、暑いな、って言われて、今日のシフトを聞かれて、夜は何してるんだって聞かれて、何もないところで退屈だろう、って言われて、オレの部屋で気分転換しないかって誘われて、やめとくって言ったら、おまえは未経験かって……あ、あれ?」
    「やっと分かったかよ、バカ」

    多人種が集まる場所では英語が多く使われる。英語では童貞も処女も同じくバージンなのだ。女性の経験ではなく男性の経験を聞かれていたということにようやく気づいて、御神苗が青くなる。ジャンはわざとニヤニヤとしてみせる。

    「傭兵部隊じゃ少年兵が夜の相手を勤めてたのかも知れねーな。で、どーすんだ? あいつの部屋に行って、童貞の前にケツ処女捨ててくるか?」
    「誰が行くか! クソ、哨戒行ってくる!」
    「おいおい、シフト確認してから行けよ、あいつと外で鉢合わせてーなら別だが」
    「ゲッ、そうだった……! あいつどこの班だ?」
    「やれやれ、相変わらずおめーは抜けてんな。所属くらいチェックしとけよ」
    「なんだと……! って言いたいとこだが今回は恩に切るぜ、助かった」
    「ずいぶん素直じゃねーか。明日は手榴弾でも降るんじゃねぇか?」
    「縁起でもねーこというなよ……」

    ギャアギャアと話しながら食堂から移動する。こんな話は冗談で片づけたほうがいい。
    ジャンは、この同僚の抜けたところも、案外気に入っているのだから。



    後日。
    アーカム防衛隊のモブ新人は、目当ての少年はいつ現れるかとウキウキしながら、昼の食堂に長居をしていた。
    所内で東洋人は珍しいので来たらすぐに分かるだろう。まだ十代半ばに見えるため最初は所員の息子かと思ったが一応防衛隊員らしい。見習い兵だろうか。なんにしろ、気の滅入る長期任務で彼のようなかわいらしい少年に出会えたのがラッキーだ。
    もともと東洋人は好みなので、すぐに目が止まった。東洋人らしいアーモンドアイは魅力的だし、太めの眉もやんちゃな感じがしてかわいらしい。跳ねた黒髪に快活な笑顔、そして何より、彼がぴったりとしたスーツを着ている時に見てしまった、きゅっと締まったすばらしいお尻! あれに触りたいと思わない男はいないだろう。いや、あまりいても困るのだが。
    数日前の夕食の席で初めて声をかけた。周囲の隊員には戸惑われたが、恋愛は自由だ。本国に帰ればパートナーがいるので一夜の恋愛にはなってしまうが、双方同意の上なら問題ないだろう。
    彼はあまり慣れていないようだった。ウブな反応がまたかわいらしかった。バージンかと聞いたら滑らかな頬がパッと赤くなり、熟れたての桃のようなそれに思わず齧り付きたくなった。どさくさに紛れて触った尻は、ぎゅっと筋肉が詰まっているのにやわらかく、最高だった。
    あの日はシフトが合わず夜の約束はできなかった。今日こそは、と意気込んでいたのに、現れた彼は、なんと、スプリガンのジャン・ジャックモンドと一緒だった。美形だが冷酷そうな印象があるあの男は近寄りがたい。
    なぜ彼が、と戸惑いながら、それでも声をかけるチャンスが伺っていたが、隙がなかった。給水機に水を取りに行くのもトレイを下げるのも、ずっと一緒に行動していた。二人は常に軽口を叩き合って、親しい間柄のように見えた。もしかしたら『そういう』ことなのか? と男は内心で青くなった。
    彼らの帰り際、それでも名残惜しく魅惑のお尻を眺めていたら、隣を歩いていたスプリガンがチッと舌打ちをして、自分が着ていた丈の長いジャケットを彼の肩にかけた。

    「なんだよ? 別に寒くないぜ」
    「いいからおとなしく着てろ」

    不思議そうに首を傾げる彼が前を向いた隙に、金髪のスプリガンは素早く振り返って男を見た。ヒッと悲鳴をあげてしまいそうな目つきだった。

    『失せやがれ』

    口パクと、ビッと中指を立てるサインで威嚇される。モブ隊員は思わず両手を上にあげ、完全降伏の意思を示した。なおも睨まれ、首を何度も横に振ったり縦に振ったりと、ともかく戦意の喪失を訴える。やっと視線が外されて二人が視界から消えた時には、安堵のあまりテーブルの上に突っ伏してしまった。

    スプリガンのお手つきって分かっていたら、最初から手なんて出さねーよ!!






    終わり
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