滲む黒、光彩の紅(早く来すぎたかな……、あと二十分もある)
待ち合わせた場所には沢山の人。
親友である茜あおから玉阪座の新春公演のチケットが取れたとの知らせをもらったのは、冬公演の稽古真っ最中の頃だった。
「毎年、その時の公演役者さんたちが最後にお着物でご挨拶してくれるの!今回高科さん出てるよね!希佐ちゃんも一緒に行こう〜」
そう誘われて一緒に観劇の予定を組んだのだ。
元旦は実家に戻っていたフミさんは今回公演が入ったため当然戻ることは叶わず。高科家の恒例行事である餅つきは兄である一助さんに託したのだという。
「ま、こればっかりは仕方ねぇよ。兄貴に頑張ってもらうしかねぇわ」
そう言って、申し訳無さそうにしながらも、話をすることが楽しみなのか嬉しそうに電話をしていたフミさんの姿を思い出して頬が緩んでしまう。
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