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    kirikawhite_jj

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    kirikawhite_jj

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    滲む黒、光彩の紅/フミキサ

    本当は違う話になる予定でした。
    何故か書いているうちにこうなり、無理矢理終わらせた感じの話。

    暗めというか心の闇の内容&会話多め。でもハピエンで終われるように纏めました。
    正直読みづらいけど、ここまで書いたんで供養ということで🙏
    (タイトル変えました。すみません)

    滲む黒、光彩の紅(早く来すぎたかな……、あと二十分もある)
    待ち合わせた場所には沢山の人。
    親友である茜あおから玉阪座の新春公演のチケットが取れたとの知らせをもらったのは、冬公演の稽古真っ最中の頃だった。
    「毎年、その時の公演役者さんたちが最後にお着物でご挨拶してくれるの!今回高科さん出てるよね!希佐ちゃんも一緒に行こう〜」
    そう誘われて一緒に観劇の予定を組んだのだ。
    元旦は実家に戻っていたフミさんは今回公演が入ったため当然戻ることは叶わず。高科家の恒例行事である餅つきは兄である一助さんに託したのだという。
    「ま、こればっかりは仕方ねぇよ。兄貴に頑張ってもらうしかねぇわ」
    そう言って、申し訳無さそうにしながらも、話をすることが楽しみなのか嬉しそうに電話をしていたフミさんの姿を思い出して頬が緩んでしまう。
    今日あおと出かける事は伝えてあるが、観劇することはフミさんには内緒にしてある。
    「希佐ちゃーん!おまたせー!」
    「あお、わぁ素敵!」
    息を切らしながら小走りで掛けてきたあおは、ピンク地に赤や黄色など鮮やかな色合いの小花を散らしたデザインの着物を着ていた。
    「ごめんね〜遅くなって」
    「ううん、大丈夫。それより着物で来るなんて聞いてなかったからびっくりしちゃった。可愛いね、よく似合ってる」
    「えへへ〜、ありがとう。学校のお友達のお姉さんが美容師さんでね。いつもカットお願いしてるんだけど、折角の正月観劇ならお着物どう?って進められてね」
    「それで着てきたんだ。着付けができる人なんだね」
    「そうなの〜。練習も兼ねてるからって少しだけ着付け代安くしてもらっちゃった。後でお茶する時奢るね。いっぱい待たせちゃったお詫び」
    「え、良いよ。そんなに待ってないから」
    「いいの!私が奢りたいの!」
    「ん〜、じゃあお言葉に甘えて」
    「やったぁ!あおに任せてね!」
    「分かった。お願いね」
    (……着物って華やかだな。女性らしさが際立つというか……雰囲気が全然違う。……いいな)
    周りを見れば、あおと同じように着物で来ている人が沢山いる。正月らしいといえばそうなのだが、自分が着ることは無いのだろうと思ってしまう。
    夏に浴衣を着て出かけた事もあるが、あの時はまだフミさんが在学中だったからさり気なくジャンヌとして着られる物を用意して、助けてくれたことを思い出した。
    まだ私はユニヴェールにいる。
    ――まだ男でいなければならないのだ。
    「希佐ちゃん、どうかした?」
    「え?……ううん、何でもないよ。もう時間来るかな、中入ろうか」
    「うん、そうだね」
    僅かな憧れが変化して、ぽとりと一つ心に影が落ちた。
    気付かないように、誤魔化すように会場である玉阪テアトルへと足を向けた。

    ***

    「すごかったね〜!高科先輩バチゴリ綺麗だった〜!」
    「そうだね。……フミさんのアイメイク、今度教えてもらおうかな……」
    「……希佐ちゃん、役者さんの顔になってるよ」
    「え……ごめん」
    「ふふっ、そんな希佐ちゃんも大好きだよ」
    「あお……ありがとう。だめだね、どうしても素直に観ることが出来ないや」
    「勉強熱心だね」
    本幕が終わり、観客席がざわつく中であおと感想を言い合う。
    あの場面の台詞がカッコ良かった、ダンスの振りはこうだった、話し出せばきりがない。
    幕間の僅かな時間はあっという間に過ぎていき、ブザーが鳴る。
    「あ、始まるよ!」
    あおが言っていた役者陣の着物での挨拶。フミさんは何も言ってはいなかったけど、どんな姿なのだろう。
    少しだけ心臓が高鳴る気持ちを抑えながら、舞台へと視線を向けた。
    緞帳が上がると今日の出演者が並び立ち、客席に向かってお辞儀をしている姿が見えた。
    「わ……全員紋付きなんだ……」
    「ね!カッコいいでしょ!」
    「うん……」
    今日のフミさんの役どころは比女だったから勝手に女性物を着て出てくるのだと思っていた。
    男性着物でよく見る紋付き袴。
    演者は全員男性だ。何もおかしいところはない。
    フミさんは比女メイクを直し、後ろへと緩く撫でつけた髪型にしている。
    あまり見ることのない姿に目が離せなくて、心臓の音が煩い。
    (フミさん、かっこいい……)
    夕方、彼の家に行くことにしていたが、これでは彼の顔をまともに見れないかもしれない。平静を保つ自信がない。
    舞台にいる彼の姿が眩しすぎて、またぽとりと影が落ちる。
    (……お家、行くの止めようかな)
    舞台では座長が挨拶をしているにも関わらず、殆ど頭に入ってこなかった。

    「素敵だったね〜希佐ちゃん!」
    「う、うん、……そうだね」
    「この後ロビーでお見送りもあるんだよ!楽しみだね」
    「えっ!そうなの?!」
    「言ってなかったっけ?」
    「聞いてないよあお〜」
    知らなかった情報に一気に頭が冴えた。
    これではフミさんと会ってしまう。
    何より観劇をすることを伝えていないのだ。
    驚かせるつもりはないのだが……自分は今どんな顔をしているのだろう。
    出来るだけ心を落ち着かせたくて、深呼吸をして席から立ち上がった。

    ロビーに向かえば、先程見た主演者がずらりと並び観客とハイタッチをして見送りをしていた。
    「希佐ちゃん行くよ〜」
    「……うん」
    スタッフに促されて列を作り、歩みを進める。
    始まってしまえばなんてことないのだろう。
    あおが着物を着ているせいか、演者からお礼だけではない言葉も良くかけられている。
    (あお嬉しそう)
    親友が見せる笑顔に自分まで嬉しくなる。
    でも、芽生えてしまった黒い感情は消えることはなく。無理矢理そこに蓋をした。
    次々とお礼や感想を簡単に言いながら列は進み、フミさんの姿が近い。
    「希佐、来てたのか」
    「フミさんお疲れ様です。とっても素敵でした」
    「あんがと。……また来てくれな」
    「っ……はい」
    言葉の最後に触れる手。瞬間的に柔く握られた。
    構わず進む列。そのままテアトルの外へと進むことになり、人だかりの中で思わず深いため息をついてしまった。
    「希佐ちゃん大丈夫?」
    「……あお、よく平気でいられるね」
    「これでもいっぱいドキドキしてるよっ!どこかでお茶しながら話そう。いつものところで良いかな?」
    「うん、良いよ。行こう」
    その時背後から歓声と拍手が上がった。振り向けば、見送りが終わり最後に一礼をして戻る役者陣の姿が見えた。フミさんも手を振り歓声に応えて笑顔を見せている。
    観てくれる人がいてこその舞台。
    『好きなことさせてもらってんだ。期待には応えねぇとな』
    期待の新人比女として玉阪座に入り、活躍しているフミさんの言葉が頭をよぎる。
    華やかな世界。夢を見させてくれる最高の時間。
    その為の努力は惜しまず、全力で取り組んでいることも嫌というほど知っている。
    ……嘘だらけの私が、彼の隣にいていいんだろうか。
    ――また少しだけ心に影が落ちた。
    「希佐ちゃん?」
    「っ、ごめんね。行こうか」
    心配そうに私の顔を覗き込むあお。
    大好きな親友にこれ以上心配はかけられない。
    笑顔を作り、この場を離れるよう促す。
    (……また一枚仮面を被ってしまった)

    遅いランチを取るために訪れた店は落ち着いた和食の美味しい店で。個室に案内され、あおと二人で一息ついた。
    観た舞台を振り返り、感想を言い合う。と言っても殆どがあおの一人喋りで。でもそれが心地よくて。
    そんな彼女に黙っているのは心苦しくて、思い切って考えていることを告げた。
    「え……、希佐ちゃんそれ……」
    「ごめんね、あお。楽しい時間に水を差すようなこと話して」
    「ううん。……そっかぁ。もう決めちゃったんだね」
    「……うん」
    「……希佐ちゃんが決めたことならあおどんなことでも応援するよ。話してくれてありがとう。ユニヴェール公演、絶対観に行くね!」
    「あお……うん、私こそありがとう」
    最終学年で挑む最後の公演。
    卒業と同時に私は演劇の世界から離れることを決めた。
    夢だったユニヴェール学校の舞台に立てて、先生方にも先輩にも同期にも恵まれてこんなに幸せなことはなかった。
    でも、所詮は嘘で固められたもの。
    このまま演劇を続けられるとは思っていない。どこかでけじめをつけなければ、私を支えて助けてくれた人たちに迷惑がかかる。
    ……私を愛してくれているフミさんにも。
    早々に校長先生とは相談をしていた。高卒の資格は取れる予定だ。
    時間を見つけては勉強を重ね、大学受験も済ませてあとは合否を待つだけ。
    この地から離れて私の知らない人のいる場所へ行く。
    ただそれだけ。
    なのにこんなにも心が寂しくて悲しくなるのはなぜなんだろう。


    「……知らない場所に紛れ込んだみたい」
    ポツリこぼれた言葉は宛もなく歩いて辿り着いた比女彦神社の境内に転がり落ちる。
    本当に正月なのだろうかと思う程人がいない。
    足元の玉砂利の音が響くほど静かな空間。
    明日一緒に初詣に行こうとフミさんと話していたのに、先に一人で来てしまった。
    あおと別れる寸前に来ていた彼からの連絡に返事を返せないでいる。
    心に落ちた影は墨汁のようにじわりと広がり、表面は既に真っ黒だ。
    彼には悟られたくないのに。
    ……ユニヴェール公演まで、もう会わないほうがいいのかもしれない。
    思わず天を仰げばどんよりと灰色の空が見えた。
    「……ここにきて決心揺らぐのやだなぁ」
    「何の決心だ?」
    背後から聞こえた声に心臓が跳ねた。全身が心臓になったかのようにドクンドクンと音が響く。
    ……どうして、いるの?
    「……フミ、さん」
    「連絡つかねぇから心配したわ」
    「……公演は」
    「俺は昼だけ。夜は面子変わるから」
    「……何でここ」
    「んー、何となく?で、俺に話したいことあるんじゃねぇの?」
    「っ……」
    話しながら近付いてきて。目の前で少しだけ悲しそうな顔でそう問われて。
    話さなきゃ。でも、言葉が出てこない。
    伸ばされた手も拒めなくて、ゆっくりと彼の腕の中に捕らわれた。
    「……なぁ希佐、……俺、そんな信用ない?」
    「っ!違います……私が意気地なしだから」
    「だから俺から離れんの?」
    「……なんで」
    分かっちゃうんだろう……。
    だらんと落としたままの手が無意識に彼のコートを掴んでいた。
    「……今日希佐来てんの舞台から見えて知ってたよ。嬉しかったんだ俺。でもさ、ロビーで見たお前、苦しそうに笑うから何でかなぁって」
    「……フミさん」
    「ん?」
    「……私、わたし……」

    フミさんのこと好きなのに
    好きだという気持ちは大きくなる一方なのに
    でも私の存在が貴方の活躍を邪魔しそうで怖かった
    今日のあおの姿を見て自分は女でいられないことを突きつけられた
    遅かれ早かれ何時かはバレてしまう私の嘘で沢山の人が非難され叩かれるのを見たくなかった
    憧れと並行した不安や恐怖が今日見た舞台で逆転してしまった
    積み上がった奇跡は脆くて簡単に崩れてしまうことが急に怖くなった
    ……私がいなくなれば、消えてしまえば
    そう思ったことは数えきれなくて、何度心が折れそうになったことか

    「……そっか」
    ポロポロと溢れ出した思いは止まらなくて。
    伝えてしまったことに罪悪感が大きくなる。
    フミさんは関係ないのに。
    私の勝手な思いをぶつけられて嫌な思いしかしないだろうに。
    話を聞きながら頭を撫でていた大きな手がぐっと私の体をキツく抱きしめた。
    「……フミさん」
    「……別れよっか?」
    「……ぇ」
    彼の一言が私の心に冷水を浴びせた。
    ……今なんて
    「……希佐の気持ちは分かった。でもさ、残された方の気持ちは?希佐の気持ち尊重したいけど俺の気持ちも知ってほしい」
    「フミさ、」
    「好きだよ。希佐の事すげー好き。離したくねぇの。でも……これがお前を縛ってんなら、俺はこの気持ちを手放す」
    「ま、待って」
    「何で?希佐は俺のこと」
    「違う!」
    「希佐……」
    「色んな事が矛盾してるのは分かってます。理解してもらおうなんてそんな都合のいいことなんてない。私……」
    ――自分勝手すぎた
    フミさんに言わせてはいけない言葉を言わせてしまった。
    「ごめんなさい……ごめん、っなさい……」
    降り出した雪が足元に落ちて溶け地面を濡らす。
    顔を覆うことも拭うこともできない涙も一緒に……。

    ***

    このままだと風邪を引くからと、フミさんの自宅へと促された。
    「……落ち着いたか?」
    「……ごめんなさい」
    「謝んなくていいよ」
    ソファに並び座り、手渡されたマグカップから伝わるじんわりとした温もりが気持ち良かった。
    一口含んだカフェオレは私好みの甘さ。
    どこまでフミさんは優しい。
    「後で目冷やそうな。赤くなってる」
    「……別に、いいです」
    「…………」
    無言の時間が続く。
    これを飲んだら寮に戻ろう。そう考えていたのに、体は動いてくれなかった。
    それを察したのか、フミさんが口火を切った。
    「希佐」
    「……はい」
    「ちょっと整理していい?」
    「……はい」
    「学校出たらもう板の上には上がらないのか?」
    「……私の夢はユニヴェールの舞台に立つことだったから。……沢山夢を見させてもらいました」
    「その後どーするんだ?決めてることあんの?」
    「……大学受けました」
    「……もう決まってんの?」
    「まだです。来週結果が出ます」
    「遠い?」
    「……ここからは」
    「そっ、か……」
    沈黙を埋めるかのようにフミさんがマグカップを口元へ運ぶ。
    お揃いで色違いのマグカップ。
    一緒に選んで、この家の棚に並ぶのを見た時気恥ずかしかったのに。慣れてしまったこの光景ももうすぐ見れなくなると思うと急に寂しくなる。
    「……なぁ希佐、……俺のこと、好き?」
    「…………好きですよ」
    「……でも離れんの?」
    「……嘘ばかりの私が側にいても邪魔なだけです」
    「……ここでプロポーズしてもダメ?」
    「……は?」
    「俺はそれだけ希佐のこと離したくねぇんだわ」
    「フミさん……?」
    急に立ち上がって寝室に向かったフミさんは手に小さな箱を持って戻ってきた。
    「無理に離れなくてもさ、別に遠距離でもいいんじゃね?」
    深蒼のビロードの箱を開けると見えたピンクゴールドの指輪。
    彼の綺麗な指先でつまみ上げられたそれは私の左手の薬指にピッタリ収められた。
    「……これ」
    「ホントはバレンタインに渡そうと思ってたんだ」
    予定早まっちまったな。
    そう言って笑うから。
    「……どうして」
    「希佐のこと好きだから。誰にも渡したくねぇから虫除けだな」
    「っ……」
    「……俺は希佐に沢山助けられたよ。希佐の思いに気付いてやれなかったのは悪かったと思うけど」
    「……けど?」
    「……今度は俺が希佐のこと助けていきたいし支えたい。さっきも言ったな、遠距離でも良いじゃねぇか。頑張ったんだろ、絶対大学受かってる。行っといで」
    「…………っ」
    「……泣かせてばっかだなぁ俺、……ごめんな」
    話すこともできず、流れる涙を拭うこともできず。
    首を振って答えることしかできない。
    「フミさ、……フミさん」
    「……なぁに」
    「なんでこんな、……わたし……」
    ……貴方を裏切ろうとしていたのに……どうして……
    絞り出した声に優しく声をかけてくれる。
    指で涙を拭われ、頬を両手で包まれた。
    額を合わせて紅玉が柔らかく細められる。
    「どんな希佐でも好きだよ。……大好きだから。……俺が守ってやるから」
    「……わたしも、……好き、です……大好き……」
    「ん……離さなくてい?」
    「私で良いんですか……」
    「希佐じゃないとやだ。……四年後またプロポーズさせて」
    「……気が変わるかもしれませんよ」
    「んなことさせねぇ。ぜってー捕まえとく」
    「……離さないでくださいね。……捕まえてて」
    「もちろん。……キスしてい?」
    言葉の代わりに一つ頷く。
    頬を包んでくれている手に自分の手を重ねて瞼を降ろした。
    触れた唇は優しくて、甘くて。
    フミさんの気持ちが伝わってくる。
    こんなに想われているのに、一方的に離れようとしていた。謝っても謝りきれない。
    離れた唇が瞼に落とされ、残っていた涙を掬われた。
    くすぐったくて思わず口元が緩む。
    「やっと笑ってくれた」
    そう言って抱きしめくれた彼の温もりを何時までも感じていた――

    ***

    受験した大学は無事に合格し、春から大学生になる。
    ……女としてまた学校に通う日が来るなんて思ってもみなかった。
    ユニヴェール公演も優勝を勝ち取り、先日卒業式も終えた。
    玉坂の地を離れる生活を望んでいたのに、今は何だか寂しくて。
    「希佐、もう時間」
    「……フミさん」
    「駅まで送るな」
    「……はい」
    下腹部に僅かな違和感を感じながらも、私の心は満たされていた。
    昨夜共に過ごしたこの部屋を訪れるのは次は何時なのか。
    差し出された手を握り返すと不意に影が落ちてきた。
    玄関で軽く触れるだけのキス。
    「外じゃできねぇだろ?」
    口端を上げて不敵に笑う彼に、仕返しのようにぐっと背伸びをして頬に口付けた。
    「っ……きさぁ」
    「お返しです」
    戯れるようなやり取りも当分お預けだ。
    「フミさん」
    「ん?」
    「……ありがとうございました」
    「……行ってらっしゃい。無茶するなって言ってもするんだろうけど」
    「もうしませんよ……。フミさんに心配かけたくないもん」
    「……浮気すんなよ」
    「その言葉、そっくり返しますね」
    彼に貰ったあの指輪は同じデザインでフミさんも買っていて。
    揃いでつけた指輪が当たり、カチリと音を立てる。
    私は左に、フミさんは右に。
    その感触をより確かめたくて強く握り返す。
    それに応えるように再度近付いてきたフミさんと深い口付けを交わした――
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