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    80yen_DST

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    取り急ぎ文章でネフィリア過去編
    これの一部をイラストにしてあげる予定

    (自分用メモのクオリティです)

    ネフィリア過去編『とある天使の手記』人間は日記というもので日々の記録を残すらしい。そこで私も人間を真似て記録を残すことにした。

    これは、ある天使が天使をやめるまでの話…


    私の上司はネフィリア様という第三位階の天使であり、生者の死を管理する天使だ。ネフィリア様は淡々と、死んだ者の魂を刈り取った。その姿は美しく、儚いものだった。そのネフィリア様にも上司がいらっしゃって、しかし彼は上に立つものには見えない態度であった。時間は守らず、見た目に気遣う様子もない、だらしない天使だった。それでも私の上司、ネフィリア様は彼を慕い、彼にだけ笑いかけた。

    「ネフィリア様、××様が…」
    「え、また?ごめん、ちょっと待ってて」

    ネフィリア様は急いでその場から離れ、騒ぎの元へ向かう。向かった先には大天使の1人が輪と中心にいて騒いでいた。この後会議があるということを忘れて。

    「××、会議忘れてるでしょ、みんな集まってるって」
    「え、あ!ごめん、ネフィ!今行く!」
    「謝るのは僕にじゃないでしょ、ちゃんとみんなに謝ってよね」
    「わかってるってぇ!でもネフィも来てくれるでしょ!?」
    「僕は仕事あるし大天使様の会議に出られないよ」
    「えぇ!?ネフィ来てよぉ…」
    「行かない、泣く暇あるならさっさと行って」
    「ネフィいじわる!」
    「はいはい」

    呆れながらも笑みを浮かべて走り去る彼を見送る。
    あぁ、私も一度でいいからあの笑みを。


    「あ、いたいた!君ネフィのとこのだよね?ちょっとネフィに伝言いいかな?」
    例の彼が声をかけてきた。私を認識していたのか。伝言というのはとても幼稚なものだった。
    でもあの彼に話しかけられた。天使の長命でも大天使と話せることなんて、滅多にないだろう。これは残しておきたい。


    「何してんだ!」
    「ネフィには関係ない!」
    「関係ないわけないだろ!僕の仕事増やすな!」

    珍しいネフィリア様の大声。相手はやっぱり彼で、でもあの御二方がモメているのは初めてのことだ。

    「ネフィがやらなくてもいいって言ってるじゃん!」
    「君がやらないから僕がやってるんだろ!君が仕事やらなくて困るのは君以外なんだ!いい加減にしろ!」
    「うるさいなぁ!ネフィは」
    「うるさくさせてるのは誰だ!あ、おい!逃げるな!」

    「ネフィリア様?」
    「うん、ネフィリア様の声」
    「怒っていらっしゃる」
    「怒った姿も大変麗しい」

    そんな声も聞こえたが、これはそんなものではない。あのネフィリア様が大声をあげるなんて、彼、今度は何をやらかしたんだ。余程の事じゃないと…

    目が合ってしまった、ネフィリア様と。まずい、興味本位で覗いたのが悪かったか。

    「ねぇ、ちょっと来て」
    「わ、私…ですか、?」
    「そう」

    叱られる、そう思った瞬間ネフィリア様の手が伸びて、こちらに向かってくる。
    痛みや刺激を覚悟していたのに、それは一切なく、何故か頭を撫でられていた。

    「ごめんね、心配させて。大丈夫だから。悪いけど、これ進めておいてもらえる?」
    「え、あ…!はい!分かりました」

    あの笑顔には程遠いが笑いかけてもらえた。ネフィリア様から直接仕事を振ってもらえた。ネフィリア様とお話している。先日大天使の彼と話した時以上の喜びを感じた。これは、油断したら堕ちてしまう。


    それからしばらく、ネフィリア様と彼が口論している様子が伺えた。そこまでネフィリア様を怒らせて楽しいのだろうか。
    私はネフィリア様の部下ではあるが、彼の部下ではない。ネフィリア様がご自身で作り上げた地上視察するための部署が私の所属だ。だから彼は上司に当たらず、ネフィリア様の迷惑になっている(ように見える)彼は、私の目には善く映らない。

    「でもネフィリア様は彼がいいんだろうな」
    「僕が何?」
    「ね…っ、ネフィリア様…!?」
    「何かあった?」
    「いっ、いえ!何も!し、仕事がありますので…!」

    いや、これは話をするチャンスか?
    ネフィリア様がまた声をかけてくださったのだ。その機会を逃す訳には。

    「ネフィリア様、今お仕事は…」
    「一段落して戻ってきたところ」
    「そうでしたか、お疲れ様です」
    「ねぇ、」
    「は、はい…!」

    やっぱり急に話逸らしたのはまずかったか。それともさっきの一人言について減給されるか。どちらにせよ言い訳は…、

    「君、名前は?」
    「へ、あ…!トレイズです」
    「トレイズね、覚えた。この前の子だよね。色々心配かけてごめん」
    「い、いえ!そんな、謝らないでください、ネフィリア様!」
    「…なんで僕が××といるのか気になる?」
    「…、はい」

    聞かれていたのなら正直に答えるしかないだろう。教えていただけるのなら私としても光栄だ。

    「僕は××のために生まれたようなものだから、どうしてもあいつの傍にいないといけないんだよね」
    「彼のため…?」

    ネフィリア様曰く、大天使様には専属の天使を持つ方もいるらしい。

    「ほら、あいつダメダメでしょ?」
    「はい…、あ!いいえ!」
    「あはは、正直だね、トレイズ」
    「す、すみません…」

    ネフィリア様にとっては大事な方を貶してしまった。消えたい。

    「でもその通りでさ。そんなダメダメな天使は神様に妙に愛されてしまって、だから神様はその天使を補佐するために、新しく天使を作ったんだ。それが」
    「ネフィリア様…」
    「そう、だから傍にいたいんじゃなくて、傍から離れられないんだよね」
    「……、苦しく、ないのですか?」
    「苦しい?いや、そんなことないよ?」

    ネフィリア様はお強い方なのか、単に苦痛を感じないのか。それは私ごときに分かり得なかったが、この時のネフィリア様の異変に気付いていれば、と今でも後悔するが、むしろこれが正解だったのだとも思う。


    その日はいつもより天界が騒がしく、バタついていた。

    「何があったんだ」
    「大天使様のおひとりが裏切ったらしい!」
    「天界を追放されるとか」
    「私は消滅だと聞いたよ」
    「またあのお方だ!」

    「ネフィリア様…」

    彼が裏切り者ということなら、ネフィリア様が危ない。どういう形であれ何かしら関わるだろう。そうなったらネフィリア様だってただじゃすまない。

    「……行かなくては」


    「ふざけるな!」
    「ふざけてないよ、ネフィ」
    「××がそんなことするわけ…!」
    「したから消えたんだよ。ネフィなら、分かるよね?」
    「うそだ…」

    いた。ネフィリア様、と話しているのは大天使のおひとりか。今私が出たところで状況が変わる、どころか悪化する可能性もある。機を見てネフィリア様だけでも。でも、ネフィリア様が信じていらっしゃった、離れられないとおっしゃった彼が消滅するなんて。ダメな天使だとはネフィリア様もおっしゃっていたが、神に愛されすぎた彼が神を裏切るなんて。何よりネフィリア様が選んだお方が…。

    「ほら、ネフィ。みんなが混乱してる。手伝ってくれるよね?」
    「……」
    「ネフィ、急がないと混乱で荒れてしまうよ」
    「触るな!」

    ネフィリア様の大声…、あの時とは違う、拒絶するような声。

    「っ、ネフィリア様!!」
    「君!出てきたら…!ネフィ、落ち着いて!」
    「うるさい!××はそんなことしない!ダメダメな天使だけど、そんなことするようなやつじゃない!」

    羽が、黒くなっていく…。天使が堕ちるところなんて初めて見た。見る機会なんてないと思っていたのに、それがネフィリア様のだなんて…。

    「あいつは、物覚えが悪くて、仕事も出来ないし、時間も守れない、ダメ天使だ。でも、誰よりもいい奴で」

    パキ…

    「誰よりもこの世界を愛してて」

    …パキ……

    「僕の存在を許してくれたんだ…!」
    「ネフィリア様っ!!」

    パ…キン……

    輪っかが黒くなって、割れて、真っ黒な何かがネフィリア様を包み込む。やめろ、ネフィリア様を連れていくな…!

    真っ白なネフィリア様を真っ黒な闇が包み込む。

    「…これが…、堕ちるということ…?」
    「ぁ…ああ……っ」

    ネフィリア様の苦しそうな声、なんでこんな時にあいつは…!

    「大天使様…!彼は、彼はどうしたんですか…!」
    「…裏切り者は、消滅したよ」
    「消滅…、あの天使、何したんですか…」
    「……」

    答えてもらえなかった。それは私が下級天使だからなのか、それとも言えないほどのことをやらかしたのか

    「或いは何もしてないが都合が悪いから消した…?」
    「……どれでもいいよ…、ダメダメな天使でも、僕の存在意義だったんだ…」
    「ネフィリア様…」

    1滴、また1滴血の涙がこぼれる。その姿はもはや天使ではなく、

    「あいつがいない世界は…壊れてしまえばいい…!!」
    「ネフィ…」

    ネフィリア様から禍々しい気配、どす黒い気配が溢れ出す。ネフィリア様が魔法を使えることは知っていた。ただあんな魔法…

    「全部、全部!!壊れろ!!!」

    建物が崩れ、地上にまで及んだその魔法は、草木を枯らし、生物の命を奪っていった。

    「……こんな…、ネフィリア様…」

    綺麗だと感じてしまった。ずっと遠くで見ていたあの方がこんな近くで。ずっと感情が見えなかったあの方があんなに怒って。
    あぁ、私は、この方と共にありたい。

    力尽きてしまったネフィリア様を止めるために大天使がネフィリア様の片翼を掴んで、引き抜いた。ネフィリア様の背中からはドロドロと血が溢れ出る。痛そうに悶える姿もまた、綺麗だと思った。

    片翼を無くしたネフィリア様は飛べないまま、落ちた。

    「っ、ネフィリア様!」
    「ちょっ、君!危ないよ!ここから落ちたら天使でもただじゃ済まない!」
    「ネフィリア様がいない世界なんか必要ない!ネフィリア様を苦しめるあなた達と一緒になんて居られるものか!」
    「だめだ!ネフィは特別だけど君なんかじゃ…!」
    「それでも!ネフィリア様から離れたくないのです!」
    「…っあ!」

    暑い、苦しい、こんなにも…。
    ネフィリア様は羽を奪われたんだ。もっと苦しかったはず。
    堕ちて落ちて、痛くて苦しくて身体の中から熱を感じる。

    「ネフィリア様、すぐそちらへ…」
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