関ヤノ 据え膳食わぬは男の恥とはよく言ったもので、矢野さんに食えと言われれば俺は食わざるを得ない。今日は中華。しかも大衆食堂じゃない、中華街にあるような、立派な歴史ある中華屋だ。
回るテーブルの向こう側に矢野さん。どんどん運ばれてくる大皿料理たち。パチンと指を鳴らして、矢野さんは俺に言う。
「お前の実力、俺に伴う。お前の力、イコール俺。夢だったんだぜ舎弟よこうして歩く摩天楼。たんと食べて大きくなれ、そして俺を楽させてくれ」
「はい、ありがとうございます。頑張ります!」
矢野さんが俺を誰かと重ねているのは知っていた。俺と話しているにもかかわらずどこか遠い目をしているのはしょっちゅうだった。それに気付いてわざと少ししょげた顔をしてみると、慌てたようにまた韻を踏み始めるんだ。俺はお前が大事だって、お互いが確かめるように。
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