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    ぴろきさや

    そのとき書きたいものを書いています。よろしくお願いします。

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    ぴろきさや

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    「君と僕との恋愛位階2」にてネットプリント頒布したものの再録です。

    フルサービス「フルサービス」

     明日の小テスト対策に、分からないところを教えて欲しいとお願いしたところ、快諾してくれたアズ君と共に放課後、僕は魔具研の部室へやって来た。クララは家の用事で居ないのがちょっと、いやかなり寂しい。
    「よいしょっと」
     傍に片付けていた机を部屋の中央へ運ぶ。そしてその前へ腰を下ろした。アズくんは机を挟んで向かい側へ座る。正面からなかなかアズくんをじっくり見ることはないのでなんだか嬉しい。二人っきりというのもほとんどなくて、なんだかドキドキした。
    「ではさっそく始めましょう」
    「うん!」
     張り切って教科書を勢いよく鞄から出すと、一緒に別の本が飛び出した。パサリと畳の上に落ちたそれは、雑誌だった。なんだろう? と拾い上げてよく見ると、それは少し大人向けの週刊雑誌。表紙にはかなり薄着、というか下着姿のお姉さんが魅惑的なポーズをとっている写真が一面を飾っていた。
    「ええ! なにこれ?! 僕のじゃないよ! ――あっ」
     昼休み、断っても断ってもしつこくリードくんが押しつけてきた雑誌だったことに気づく。一瞬の隙をついて、僕の鞄にこれを忍ばせたのは、横に居たジャズくんかもしれない。アズくんも僕の持ち物じゃないこと、誰の仕業かに気づいたようで顔をめちゃくちゃしかめていた。うん、後でフォローしとかなきゃ。じゃないとクラスメイトの丸焼けが出来てしまう。
    「でもそんなにこれ、面白いのかな?」
     雑誌を机の真ん中に置いて、しみじみと眺める。僕だって男だから、いわゆるエッチな雑誌に興味がないわけじゃない。でも照れくささが先に立って、読むことが出来なかった。
    「どうでしょう? 私も読んだことはありませんので。どこが面白いのでしょうね? 低俗な奴等の思考は理解できません」
     アズくんが首を捻る。うん、アズくんがこんなの読んでいるイメージは全くない。でもだからふと、アズくんがこれを読んでどう思うのか聞いてみたくなった。それに恋しい悪魔がエッチな雑誌を前にしてどんな態度をとるのか見てみたかった。
    「ねえ一緒に・・・・・・よ、読んでみる?」
     好奇心が羞恥心に打ち勝ってしまい、僕はお誘いを口にする。
    「入間様が読まれるのでしたら」
     アズくんは居住まいを正して即答した。雑誌を二人で見やすいように、彼の隣へ移動する。机は狭くはないけど広くもないし、何より雑誌なので互いがくっつくようにして肩を寄せないとよく見えないよねと、自分に言い訳しながらアズくんにぴったりと寄り添って雑誌をめくる。
    「じゃあ開くね」
     ドキドキしながら、一ページ目を開くと、表紙のお姉さんがさらにセクシーな表情をしてポーズをとっていた。「わっ」と声を上げかけたけれど、横目で見たアズくんは涼しい顔をしてそれを眺めていたので、慌てて声を飲み込んだ。危なかった。でも次のページもその次のページもエッチなお姉さんばかりが登場してきて、めくるたびに声を上げそうになる僕は目を薄目にして唇を真一文字に引き絞る。アズくんは相変わらずほぼ無表情で時折「ほう」とか「ふん」とか言いながら読んでいた。アズくんが何を考えているのかさっぱり読めない。何だかものすごく悔しい。
    「入間様、どうされました? 頬が膨らんでいます」
    「なんでもないよ! 次、行くね! あれ?」
     真ん中辺りのページをめくると、その次のページとその次が袋状になって綴じていた。いわゆる「袋とじ」というものだった。
    「開けてみますか?」
     アズくんが爪で綺麗に破ってくれる。悪魔の爪って、こんな使い方も出来るんだ。便利で羨ましい。
    「ありがとう――わっ!」
     お礼を言う前に袋とじの中身が目に飛び込んできて、とっさに叫んでしまった。こんなの黙っているなんて無理だよ。だって、なんとオンナノコが自分の下着の中に手を突っ込んでいたんだもの。その写真のタイトルは「初めてのひとりエッチ♡ セルフは気持ちいい♡」と可愛らしい文字で書かれている。僕は反射的に雑誌を閉じてしまった。
    「アズくん・・・・・・見た?」
    「見ました」
     やっぱりアズくんは平然とした表情で頷いた。なんでコレ見てまだそんな顔、出来るの?! と突っ込みたくなったけれど、それはさすがに恥ずかしくて言えない。でも聞きたい、聞いてみたい。こんなプライベートなこと聞いたら怒るかな? でも男の子同士だからいいよね。そう心の中で自分に言い聞かせてから恐る恐る尋ねてみた。
    「アズくんは、その、アレしたことあるの?」
    「はい。あります」
    「ええ?! そうなの?!」
     驚いてから、アズくんは大人っぽいからそりゃそうかと納得する。
    「入間様、まさかまだ?」
    「――はい、そのまさかです」
     目を僅かだけど見開いてそう聞いてくるアズくんに、子ども扱いされたようで、少々頭にカチンと来た僕はちょっとつっけんどんに答えてしまった。図星だったのもある。
    僕はまだそういうことをしたことがない。だから、どんな風にするのかも、どうなるのか分からない。うっすらなんとなくは分かるけれど、別に調べることもないしとそのままにしてきたツケが回ってきてしまった。
    「だって、そんな必要に迫られてないというか・・・・・・どうやってすればいいか分からないというか・・・・・・」
     ゴニョゴニョと独り言を言っていると、アズくんは満面の笑顔を浮かべて。
    「そうですか。ではお手伝いしましょうか?」
    とんでもないことを言ってきた。
    「お、お手伝い?!」
    「はい」
    「あの、大丈夫です! 一人で出来ます!」
    「一人で初めてするのは大変なのでは?」
    「え、みんなそうなの? お手伝いしてもらうの?」
    「大抵は一人でしますが、私はなかなか上手く出来なくて手伝ってもらいました」
    「そうなの?!」
     悪魔の初めての一人エッチはそうなのかと、いわゆるカルチャーショックに開いた口が塞がらない。
    「では早速しましょう。さあお脱ぎください」
    「えっ! で、でも、こんなところで! 誰か来たら!」
    僕は思わず後ずさった。アズくんはゆっくり近づいて来る。他の悪魔が来たらというのはもちろんあったけれど、アズくんに僕の恥ずかしいところを触られると考えるだけで、恥ずかしさに顔から火が出そうだった。体が金縛りにかかったように動かない。
    「さあ入間様」
     アズくんの手が僕の下半身に伸びる。極度の緊張で思わず目をつぶった。
    「え?」
     するん、と靴下を脱がされて。目を開けると、アズくんの膝の上に僕の片足が乗っていた。
    「ペディキュアは悪魔の嗜みのようなもの。しなくてももちろん構いませんが、されたほうが爪も強く美しくなって良いかと」
     アズくんはポケットから小瓶を取り出し、僕の足の爪を丁寧に付属の小さな刷毛で塗り始めた。あっという間に片足が終わり、すぐに両足の爪が手のそれと同じ黒で染まった。
    「終わりました」
    「ありがとうございます・・・・・・」
     机に置いていた雑誌を慌ててめくると、例のページの次のページには、ほぼ裸のオンナノコがペディキュアを塗っている写真が掲載されていた。
    「こっちを見ていたんだね・・・・・・とんだ勘違いだよ・・・・・・」
     苦笑いして思わず独り言をつぶやくと、アズくんが「なんでしょう?」と手元を覗き込んできた。見ちゃダメ! と雑誌を閉じるも、もう遅かったようで、アズくんの顔がたちまち真っ赤になった。あれ? なんかすっごく可愛い。
    「あの入間様、少々お伺いしてもよろしいでしょうか?」
     頬を赤らめたアズくんが僕の顔を流し目で見ながら聞いてくる。
    「え、うん」
     なにこの展開?
    「その、入間様は・・・・・・まだ?」
    「その質問、さっき答えたよね」
     僕は恥ずかしくて俯きながらボソボソと拗ねたような口調で言う。
    「そうですか!」
     アズくんはなぜか嬉しそうに頷くと僕に抱きついて「お手伝いしましょうか」とささやいた。
     思わず「お願いします」と返してしまった僕の頬へ、アズくんはとっても綺麗な笑顔を浮かべながら、キスを一つ落として。

    【終わり】


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    Replies from the creator

    ぴろきさや

    DONEバビデビif人間界オンリー開催おめでとうございます!
    あすさとSSです(折ロビ要素あり)マンションに引っ越した入間君。お隣からエッチな声が聞こえてきて…のお話です。全年齢ですがエッチな声の描写があります~!
    宜しくお願いします。
    お引っ越し!(あすさとSS)「ふ~、なんとか片付いたかな?」
     入間は額に浮かんだ汗を首にかけたタオルで丁寧に拭いながら、ほっと息を吐いた。一人暮らしには広すぎるくらいの広さのこの部屋なのに、あちこちにまだまだ段ボール箱は山積みになっている。必要最低限の物だけ持って来たはずだったが、あの狭いアパートの一室にこんなに物があるとは思わなかった。
    「もうひと頑張りしなきゃ!」
     腕まくりをしながら気合いを入れたそのとき、玄関のチャイムが鳴った。引っ越して来たばかりのマンションに当然知り合いはおらず、配送業者も帰ったばかりだし、電気ガスなどの業者が来るにはまだ早いよねと腕時計を見やった入間は「しまった!」と顔を青くする。慣れない片付けに手間取って、自分が考えていたよりもかなり時間は経過していた。鳴らした主に十分な心当たりがあるので持っていた荷物を文字通り放り出して、長くはない廊下を全速力で走って玄関へ向かった。
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