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    しぐまきお

    @kiosiguma_97

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    しぐまきお

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    えすふぉHO1 小さい頃の話 ネタバレ注意

    幸せを思い出したの 「おねえちゃん待ってよ!」
     首に白いレースのリボンを巻いたテディベアを抱きしめて、アーサーは若葉の隙間から漏れる柔らかな日差しを浴びながらかけた。まだ小さい彼は優しいお姉ちゃんが大好きだが、お姉ちゃんはお年頃の女の子。弟と遊ぶより、友達の女の子とオシャレをして街を歩きたいのだ。ついてこないで!なんてすげなく振り払われて、アーサーはとぼとぼと公園にたどり着いた。昼間なのに公園には人っ子一人いなかった。思わぬ静けさに、なんだか寂しくなる。
     お姉ちゃんっ子のアーサーには特別仲のいい友達はいない。最近のリトルボーイは青いサロペットを着て、真っ赤なミニカーで遊ぶものだ。髪の毛を肩まで伸ばして、ぬいぐるみを抱きしめるものじゃない。
     あんまり寂しくて、家に帰ろうかと立ち上がった時。突然目の前に揺れるブロンドが現れた。ぱっと顔をあげてこちらを見つめたのはやわらかい蒼色の瞳。びっくりするアーサーに、その少年は元気に声をかけた。
     「はじめまして!君はこの辺の子?」
     驚いて声を出せないでいると、少年は続けて話す。
     「俺はアイザック!君の名前は?」
     毒気のない笑顔と優しい声に、アーサーもポロリと言葉を漏らす。
     「アーサー....アーサー・ボルドール。」
     名前を聞くと少年、アイザックは目を輝かせてアーサーの手を取った。肩を揺らす姿に構うことなく、アイザックは楽し気に言った。
     「君もAなんだ!じゃあ、俺たちダブルAだな!」
     ダブルA。キラキラした同い年の新しいともだち。二人はすぐに打ち解けて、近所でも知られる仲良しコンビになった。両親も嬉しそうに毎日話を聞き、子犬みたいについてこなくなったアーサーに思うところがあったのか、姉はブロンドを翻して構いに来てくれることが増えた。
     たくさんたくさん時を重ねる中で、アーサーはアイザックが優しい心を持つことに気が付いた。その姿が、いつだって小さなヒーローに見えた。いつか彼は、世界を守る優しい正義の味方になるのだろう。それならば、自分も一緒に誰かを助ける人になりたいな。なれるだろうか。そんなことをアイザックに問えば、彼はダブルAは不滅だろ、と歯を見せて笑った。ずっと二人でヒーローをやっていよう。
     そんな幸せな夢だった。



     夢を見た。ああ、誰かが語りかけている。自分が死ぬ日が来たのだろうか。もう何もわからない。何も覚えていない。心は果てた。次は体が果てるのだろう。




     守れなかった世界に別れを。そして新しい地獄に。
     さようなら、なにもない世界よ。
     幸せの面影など、どこにもない世界よ。
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