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    しぐまきお

    @kiosiguma_97

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    しぐまきお

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    とりあえず肩書紹介

    御寺の若君 「あら、可愛い子いるじゃな〜い!」
    煌びやかな照明が真っ赤なベルベットのソファを照らしている。甲高い女の声と、接待される中年男性たちの楽しそうな声を浴び、彼女はいつものように入店した。ボーイが滑らかな動作で彼女に礼をする。しかし慣れ切ったはずのボーイはピクリ、と身体の動きを止めると、コツリ、と近づいてくる静かな足音に「支配人」、と慌てて頭を下げた。
     黒いファーのついたコートを羽織り微笑む男。彼は彼女、「菫」に優しく声をかけた。

     「菫。先々月の分のツケは払ってくれたようだね。先月と今月はまだだけれど。」
    低く穏やかな声で喋りながら肩を抱く。そんな男に、菫は陽気な声でカラカラと笑った。
    「やだ〜〜!あかざちゃんじゃない!」
     胸の前で手を組み身体をくねらせ腕から抜け出す。慣れた会話ではあるが菫は内心冷や汗が止まらない。この男がわざわざ出向くときは、何か自分にお願いがある時だから。
     お願いという名の、命令が。

     「菫。一つお願いを聞いてくれるかな?」
    彼女の想像通り、腕を組み微笑む彼はイエス以外の返事を受け入れる気は無いようだ。
     「勿論よぉ!あかざちゃんのお願いなら何でも聞いちゃうんだから!」
     菫は調子良く返事をした。その言葉に彼はそう言ってくれると思ってたとわざとらしく言いながら、VIPルームに彼女を導いた。

     沈み込むようにソファーに腰をかけ、シャンパンを注がせると男はさっき分かったと思うけど、と話を始めた。菫はそれを遮るように声を上げる。
     「さっき私がかわいいって言った子でしょ?何か問題あったかしら?」
     「君はやはり賢いね。そう、あの黄緑の髪の子なんだけど…」

     ツーカーの仲、とでもいうべきか。二人はテンポよく会話を重ねていく。菫を驚かせたのは、あの可愛い子は男だという彼の発言だった。後ろ姿しか見ていなかったとはいえ、白い肌と長い髪を見て菫はてっきりお店の女の子だと思ったのだ。

     「あの子にはちょっかいをかけない方がいいんだ。」
     一息ついて、彼は語る。
     「菫は聡い子だから知っているかもしれないけどね、俺の事を若、って呼ぶ人が今までにいただろう?実を言うと、あれは真っ赤な嘘…というか、そう思いたい人間が一定数居るってだけで、俺は組の若頭でもなんでもない。俺は、あくまで今の組長補佐。

     漆寺組の跡取りは坊ちゃん、漆寺御門。」

     組を継ぐのに相応しい人だ、と笑う彼は、菫を更なる深淵に引き摺り込むのだろう。
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