Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    semio_nkgr

    @semio_nkgr
    らくがきとか文章とか

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 2

    semio_nkgr

    ☆quiet follow

    需要あるか分からなくて放置していたものをそっと供養。債務者と借金取り(オリキャラ)。

    無題「俺より良い家住みやがる」
    「おかげさまで」
     道の先にあるマンション。多額の負債を抱える人間が住んでいるなど到底思えない外観に、思わず舌打ちした。まったく借金取りのくせに債務者の護衛など、我ながら馬鹿げている。ぐしゃぐしゃと頭を掻き、無造作にジャケットの内ポケットを探る。取り出した、もう残り少ない煙草に火を点け、口に咥えた。ふらふらと前を歩く男に目をやる。
    「金は返せよクソガキ」
     期待はしない。どうせこの男は金を返す気などさらさらないだろう。
    「わかってるって」
     ひらひらと振られる掌。揺れる赤髪を見つめながら、やはり今回も駄目かと落胆するでもなく煙を吐く。すると、何故か彼の足がこちらに向いた。一筒と目が合う。
    「おいおいな」
     悪戯な笑み。釣られそうになる口角を抑え、代わりに肩を竦めた。ふふん、と彼が満足げに鼻を鳴らす。
     再び背を向け、歩き出す姿を見送る。刻まれたロゴマークを見て、はたと気づいた。そういえば、彼の仲間のことを深く知らない。幾度か遠くから見かけたことはあるが、直接関わったことは一度もなかった。
     だんだんと距離が遠ざかっていく。呼び止めようと口を開きかけて、やめた。聞いたところで返答に困るのは目に見えていたし、今はただ、彼の行く道を眺めていたかった。
     がさ、と耳に通信が入る。また上の人間からどやされるのだろう。むしろどやされる程度で済むかどうか。うまい言い訳を考えなければならない。息を吸う。
    「悪いな、逃げられたようだ」
     こんな無意味なことをするのに理由はない。強いて言うならば、それが面白そうだったからだ。
     そこまで考えて、あまりの馬鹿馬鹿しさに鼻で笑った。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works