傘青峰山は紫陽洞。天気は昼食後より、雨。現在、日暮れ。
「よし、今日はここまで!」
「ありがとうございました!」
しとしとと降りつづいた雨が、挨拶を待っていたかのように強さを増した。
礼をした天化の髪から大きな雫がいくつも落ちたはずだったが、掻き消された。
「びしょびしょさ……」
天化が屋根を求めて走り出そうと構えたとき、道徳がおもむろにジャージを脱いだ。
「入るか?」
高く、ジャージを広げる。傘代わりにしろということらしい。
頭から、下に着ていたTシャツまでぐっしょり濡れながら。
たまらず吹き出した。
「ぶはっ!今更さ、コーチ!!」
「それもそうだな。走るか!」
「おう!ふ、……あはははっ!」
「そんなに笑うな!置いてくぞっ!」
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