新調した毛布にくるまって、片割れとぴったり身体を寄せ合う。体の芯まではなかなかあったまってくれない二月の朝。那由汰はぶるっと震えた身体をアラーム代わりに目を覚ました。
…………二度寝すっか。
そう決心する瞬間が幸せだったりする。スースーと寝息を立てる兄の体温を借りようと、腕をまわして再びまぶたを閉じた時。
「おーい! 珂波汰ぁ!」
ドンドンと玄関のドアが激しく叩かれ、部屋全体がたぶん、揺れた。那由汰の口からは迷わず舌打ちが飛び出す。寝たふりを決め込むか、ドアを開けるか。迷っている間にも、兄の名を呼ぶ聞き慣れた声とノックの嵐は止まない。
…………マジで諦め悪いな。
かれこれ五分くらい経った頃、とうとう那由汰の方が折れて布団のぬくもりを手放し、渋々玄関へと向かった。
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