帰り道の幸せ いつもの冥殿さんからのお使いの帰り。マルチが修行に出ているからエクスとバードの二人だけでお使いに出かけ、二人とも重たいエコバッグを手に下げてた。どういう勘が働くのか、こういう時に限ってテンカは駒刃寿司に現れない。
五分後には忘れてしまうだろう、適当なお喋りを楽しみつつ、二人は肩を並べて歩く。人通りが多いスーパーマーケット付近では仮面X選手に握手を求める列が出来ていたが、そこを離れてしまえば時折車が横を走るだけの閑静なビル街の歩道だ。エクスのことをXではなく本名で呼びながら気楽に歩く。
エクスが「手がしびれてきた」とわざわざ呟いてバッグを持っている手を右から左に移した。
バード側の手が空いたことに気付き、「手を繋ぎたいな」と、なんともなしに、唐突に、そんな思いがバードにふっと降りてきた。
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