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    anosora_story

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    anosora_story

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    子供の頃、一人で居るのが怖かった先生とぬいぐるみの話。
    💎くんはちょっとだけ。

    #仗露

    ぼくとみーちゃん ぼくは子供の頃、一人寝のできない子供だったらしい。それどころか、家に一人でいるのを怖がった。常に何かに怯えている……そんなぼくに、ある日祖母が大きなミニーマウスのぬいぐるみを買ってきてくれた。子供のぼくはそのぬいぐるみを『みーちゃん』と呼んで、どこに行くにも抱いていたそうだ。
     あの頃の写真を見ると、確かに同じぬいぐるみをいつも抱えている。絶対にみーちゃんを離さない。そんな意思が感じられる必死さがあった。
     物心がつく頃には、幼いときの自分がどうしてあんなふうだったのか理解できなくなっていた。ぼくはいつも堂々としていて迷いなく行動していたし、一人が寂しいなんて思わなかった。漫画のために行動するのが信条だったから、むしろ連れはいないほうが都合がいい。机に向かう時はいつも一人だし、だんだんとむしろ孤独を愛するようになっていた。
     ところで、この夏ぼくは自分の記憶が欠落しているのに気付いた。これまでは幼い頃だから覚えていないんだと思っていた杜王町の記憶。それらは恐らくぼくの意思や両親の意向で眠らされていたのだ。
     ぼくの家には、杜王町で撮影した写真が1枚もない。不自然だと思っていなかったが、同じ時期でも東京や祖母の家で撮影されたものはあるのだ。恐らく、父と母が写真を処分したんだろう。ぼくが、あの晩のことを思い出さないように。
     杉本鈴美の両親は、ぼくの両親の友人である。うちの父母にしたら、友人一家が全員死んでしまい、息子は殺人鬼と鉢合わせたという恐ろしい事態である。きっと自分たちを責めたりもしたんじゃないだろうか。
     ぼくの両親にとって、あの事件は息子に忘れて欲しいものだろう。夜が怖い、一人が怖いと泣いている息子のトラウマとなった出来事だ。長い時間をかけてようやっと忘れさせたのに、何かの拍子で思い出したら困る。だから、写真は処分しあの頃の話も全く口にしない。杜王町の家にあったものは、何一つ実家に存在していなかった。
     さて、ぼくを守ってくれた『みーちゃん』に話を戻そう。
     あのぬいぐるみも、いつしか抱きしめることはなくなりベッドの端に横たわるだけになった。ボロボロになっていたんだが、捨てようとも思わずそのままにしていた。
     こないだ実家に帰った時に、それを杜王町まで持ってきたのだ。ひとまずリビングのソファに座らせてみたが、どうにもみすぼらしい。スカートは黄ばんでいてどれだけ洗濯しても汚れが落ちない。綿も硬くなって偏り、いつも頭が俯いている。
     この酷い有様はぼくを守り続けてくれた証なんだが、きれいにしてやりたいとも思った。もうぼくはあの夜を乗り換えられたし、ありがとうとねぎらいたい。あの『お姉ちゃん』の代わりにぼくといてくれた、みーちゃんを。

    「鈴美さんのみーちゃんなんスか?」
     新品同様に生まれ変わったミニーマウスを抱いて、東方仗助が尋ねてくる。その質問を聞いて、ぼくは唖然とした、
    「いや、ミニーマウスのみーちゃんだと思うけど」
    「そーなんだ。てっきりガキの頃の露伴が鈴美さんのこと思い出してつけたのかと思った」
     違うと強くは否定できなかった。手渡された可愛らしいぬいぐるみは、確かに彼女の面影があるように感じる。いや、気のせいか……。
    「どっちにしろ、露伴にとって大事なモンならそれでいいんじゃねーの」
     それはその通りだ。どちらでも子供のぼくが救われたのには変わりない。
    「ありがとな」
    「なんでお前が礼を言うんだよ」
     ぬいぐるみの鼻の先を指でつつき、仗助が笑う。まあ、どうでもいいか。
    「寂しくなったら、俺のこといつでも呼んでほしーっス」
     ついでのように口説かれて、思わず笑ってしまった。
    「お前は抱いて寝るにはデカすぎる」
     そう言ってから、ぬいぐるみを抱き締めた。『みーちゃん』は、随分小さく感じられる。もう、この子にぼくの寂しさを埋めてもらわなくてもいい。
     ぼくは一人でも平気になったし、目の前に腕を広げて笑う馬鹿がいるからである。
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