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    ああああ

    チラシの裏

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    ああああ

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    ノアが犬を飼ってるお話
    ※現パロ、クリノアホモ成分有り
    ※人物やイヌの名前等はフィクションであり、実在しません
    何でも許せる方だけどうぞ

    いいタイトルが思い付かねぇ! 連日、強烈な日差しと茹だるような暑さが続いている。今年の夏は例年に比べ暑い日が続くと、3ヶ月予報で聞いていた通りだ。毎日とにかく暑くて仕方がない。夕方ですら、アスファルトは日中に溜め込んだ熱を放出し、いつまでも陽炎が絶えず地を揺らしている。
    「俺よりもお前の方が暑いよな、クリス」
    「ワフ?」

     金色の毛が眩く光るゴールデンレトリーバーのクリスは、ノアの掛け替えのない大切な家族だ。歳を重ね落ち着いてきたと言えど、活発で矍鑠とした…と言うにはまだまだ若い、大型犬らしい立派な体格の10歳の成犬だ。本当なら河川敷やドックランにクリスのお気に入りのフリスビーでも持って連れて行き、ヘトヘトになるまで目一杯走らせてやりたいところだが、連日の暑さに最近は早朝といつも以上に遅い薄暮の中の散歩くらいだった。

     今日も日が傾き、夕立ちの跡もほとんど乾いた道を窓から確認したノアは溜め息を吐き、重い腰を上げる。
    「お待たせクリス、散歩行こう」
    「ワン!!」

     クーラーの風で微かに毛が揺れる特等席で横になっていたクリスはその言葉を待っていたと言わんばかりに跳ね起きると、ジャカジャカと忙しない爪音を立てながら玄関へ駆けて行った。
     その間にノアはキッチンのカゴに伏せておいたペットボトルに水を入れ、ワンタッチで開閉出来るフタを取り付ける。住宅が犇めくこの閑静な地域で、マナー水は必須だ。他にもおやつや飲み水、ビニール袋が入っているかを確認しながらおさんぽバッグに詰めていると、見計らったようにクリスが首輪の付いたリードを咥えて戻って来た。

     クリスはとても賢い子だ。こうやってやりたい事、更にはノアのやりたい事や欲しい物を察しては咥えて持って来てくれる。よく散歩中に見つけた黒い棒も誇らしげにノアに渡してくれるが、それはまあ、その…申し訳ないが帰りにこっそり捨てている。
     ノアがカバンを腕に掛ける。準備が整ったと分かりぴょんぴょん跳ねるような足取りになるクリスと一緒に玄関に移動し、靴を履き、首輪を付けてやる。
     ドアの隙間から手だけ伸ばしポストを開くと、年に一度配られるハザードマップが投函されていた。それを取ると確認するまでもなく玄関の隅に放り、外に出た。途端にむわ、と未だ残る昼間の熱が肌に纏わりつく中、いつものコースを回り始めた。


     クリスはいつも通り、電柱や背丈のある草をフンフンと嗅いではマーキングをしていく。彼にとって縄張りを守る大切な行動だ。そしてノアがそこに水を掛け終わるまで立ち止まり大人しく待つ、本当に優しくて賢い子だ。
     角を曲がり、また電柱にマーキングをする。またその次の電柱にも。最後はいつも寄る公園の木の下で手頃な黒い枝を探す。それがいつもの散歩コースだ。しかし今日はどうしたのか、クリスは公園へ向かう道とは反対の、登り坂が続く曲がり角に向かおうとノアを振り返る。

    「え?そっち行くのか?」
    「…。」
    「珍しいな。いいよ、たまには探検も悪くない。」
    「ワフッ!」

     坂の上は災害時の避難場所に指定されている小高い丘があるくらいで、他は特にこれと言った物は無い。あってもせいぜいハザードマップの看板と、遮蔽物の無い夕焼け空と住宅街を見渡せるまずまずな眺望程度だ。帰りに寄る公園が一番好きなクリスは滅多にここを回ろうとしない。その程度の認識の場所だった。

     珍しくクリスはリードが真っ直ぐ伸びる程にノアを引っ張りながら、ハフハフと息を荒らげ坂を駆け上がって行く。ノアも少し息を弾ませながら一緒に登って行った。

    「クリス、もう少しゆっくり行こうよ」
    「ハフハフ!」
     普段あまり来ない場所に興奮気味なのか、クリスはノアを引っ張りながら一気に駆け登る。こんなにクリスがリードを引っ張るのはいつ以来だろうか。まだあどけないやんちゃな頃のクリスを思い出したノアは自然と頬が緩んだ。


     一気に上まで駆け上がり、ノアはハアハアと息を切らす。流石に疲れた。それはクリスも同じようで、ヘッヘッと懸命に口から熱を逃しているようだ。確か木のそばにある避難経路の看板の前にベンチがあったはずだ。そこで少し休憩しようと、大木の下まで足を運ぶと、先客がいた。こちらに背を向けベンチに座り看板を見上げていた。おまけに犬まで連れている。クリスも気付いたのか、弛めたリードをまたピンと張る程に引き、その先客の元へ向かう。

    「ワンッワン!」
    「クリス待て!びっくりさせるだろ!」
    「…え?」
     クリスが吠えながら駆け寄って行くので、流石に向こうもこちらの存在に気付いた。クリスの声に飼い主の足元に伏せていた黒い犬は跳ね起きると、ギャン!と高く吠えながら飼い主の足の間に頭を捩じ込むよう潜り始めた。ほら見たことか。
     クリスのような大型犬は身体が大きいというだけで大抵の犬を驚かせてしまう。犬の世界ではままある事だ。おまけに今日は興奮して全力疾走で近寄るものだから、尚更だ。

    「こんにちは、驚かせてすみません」
    「こんにちは。ふふ、君は毛並みが綺麗だね」
    「ワン!ワン!」
    「飼い主さんに綺麗にしてもらったのかな?」
    「はは、ちょうど昨日シャンプーに連れて行ったばかりなんです」
    「そうか、だからふわふわなんですね」
    「ハフハフハフ!」
    「良かったなクリス、撫でて貰うの大好きだもんな」
    「君、クリスくんって言うんだ…」
    「クゥン…」
    「ああごめんごめん、大丈夫だから出ておいで」

     クリスに負けず劣らず、金髪が眩しいお兄さんにわしゃわしゃと撫でて貰いクリスはご満悦のようだ。失礼極まりないが、もしもクリスが人間になったらきっとこんな感じなんだろうな、と言いたくなるくらい金髪が映える穏やかな眼差しの人だった。なんて呆けていたら足元から、か細い声が聞こえた。
     声の主は黒柴だった。突然自分より一周りもふた周りも大きな犬に襲来された上にご主人を取られて寂しかったのか、足の間から弱々しく主張をしている。
     飼い主に出ておいでと軽くリードを引かれた黒柴は、耳を寝かせ、尻尾を下げながらクリスを嗅ごうと恐る恐る出て来る。

    「クリス、ご挨拶。ステイ」
    「!」
     
     ノアの言葉を聞き、クリスは金髪のお兄さんから顔を離しピタリと動きを止めた。これもクリスが犬の社会でスムーズにやっていくために必要かと教えていた、しつけの一環だ。黒柴は怖ず怖ずと出て来るとクリスの後ろに回り込み、お尻をクンクンと嗅ぎ始めた。クリスは動じず、どうぞと言わんばかりにじっとしている。

     大きな金色の毛むくじゃらに敵意が無いと分かり慣れてきたのか、黒柴は耳を持ち上げ、縮み込めていた身体を解すようにその場でくるくると回り始める。終いにはハフハフと舌を出しながら尻尾を嬉しそうに振りだした。

    「よしクリスもういいぞ、良かったな。」
     ノアが指示を解除すると、クリスはパッと緊張を解き、黒柴とマヅルを寄せお互いをフンフンと嗅ぎあった。どうやら仲良くなれたようで、ノアは胸を撫で下ろした。このように大型犬は社交時に気を遣う場目が結構と多いのだ。


    「君もクリスって名前なんだ、お揃いだね。」
    「え?」
     金髪のお兄さんがクリスを撫でながら嬉しそうに呟く。名前が被ることなんてそう珍しくない。実際散歩の時に会う犬で、赤柴のソラちゃんとダックスの空くんと、ポメラニアンのそらくんがいるくらいだ。

    「へぇ、君もクリスって名前なんだ。お揃いだな」
    「いやその子じゃなくて、僕がです。」
    「へ?…あ、ああ〜飼い主さんの方ですか!すみません」
    「ふふふ」
     
     間の抜けた声を出してしまったのと、黒柴ではなく、黒柴の飼い主さんの名前の事だったと遅れて気付いたノアは、恥ずかしさを誤魔化すかのように思わず頭を掻いた。いつだったかたまたま付けていた昼のワイドショーで、[人間にペットのような名付けをするのは如何なものか]等と熱い議論を交わしていたのが急に頭をよぎり、素直に喜んでいいものかと、何とも複雑な気分になった。 
     という事は黒柴の名前は…?と何とか話を逸らそうと思っていたのを察したかのように、"クリスさん"は口を開いた。

    「ちなみにこの子はノアです」
    「え!?」
    「ノア、です。5歳男の子で…」
    「あ、ああノアくん…」
     クリスさんは俺が聞こえなかったと思ったのか、再度教えてくれた。ノアは勿論聞こえていたが、正直、驚きと焦燥でそれどころではなかった。

    「あの、実は、俺もノアって名前で…」
    「…え?そうなんですか?」
    「本当に奇遇ですね、ははは」
     思わずクリスさんに言ってしまった。こんな偶然なかなかにあったものじゃない。そんな二人の会話を他所に、犬の方のノアとクリスは楽しそうにじゃれ付く程に打ち解けている。ノアくんに関してはアウアウと楽しそうな唸り声を上げながらクリスの眼の前で遊びたそうに飛び跳ねている程だ。

    「こんな事あるんですね。僕とノアは先日引っ越して来たばかりで、早速お友達が出来て嬉しいですよ」
    「本当ですね、また会った時はぜひ遊んでやって下さい」
    「ええ。さてノア、そろそろ帰るよ」
    「俺たちもだクリス。日が暮れる前に帰るぞ!」
     
    いつの間にか日はすっかり落ち、どこからか夕飯の匂いが漂って来る時間になっていた。そろそろ帰らなくては、とお互い挨拶もそこそこに丘を後にする。明日の散歩も今日くらいゆっくり涼んでからあそこに行くとしよう。と気分が高揚していたノアは、クリスのリードを揚々と無意識に揺すっていた。
     また明日も、そのまた明日も、会えるといいな。







    「ただいま」
    「おかえり」
    「何見てるんだい?」
    「今年度のハザードマップ、ポストに入ってたから興味本意でさ」
    「ああ、そんな時期か」
     ダイニングチェアに座り、小振りなバスタオルくらいありそうな大きな地図を広げているノアの隣にクリスは腰を降ろす。

    「貰ってきたよ。住民票と戸籍謄本と…」
    「うん」
    「あとこれ。申請する手続きの用紙」
    「ありがとう」
    「一緒に書こう、ノア」
    「…うん」
     クリスに誘われ、ノアは静かに地図を折りたたむ。

    「それから、これも貰ったんだけど一緒に書かない?」
    「何?……………クリスこれって」
    「役所のお姉さんが添えてくれたんだ。僕は何も言ってないよ」
    「…俺たち、こっちは提出出来ないだろ」
    「でも書くのは自由だよ」
    「まあそうだけどさ…」

    「ノアが書きたくないなら捨てるけど?」
    「…書きたくないとは言ってないだろ」
    「ノアってこうゆう時、急に素直じゃなくなるよね」
    「クリス!」
    「しー、"ノアとクリス"が起きちゃうよ」
    「っ〜〜!もう、クリスのばか」
    「ふふふ、それはどうも」

     暖かい日差しの差し込む昼なかの窓辺で丸まり寄り添い眠る2匹を見つめながら、二人はパートナーシップ受理証明書と、婚姻届に、静かにペンを走らせた。

     
     
    おわり
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