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    huutoboardatori

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    huutoboardatori

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    剣の文字です 短い ほぼ相川(ほぼ相川)
    例のベンチを見に行く相川の話です
    ※ドラマCDを聴けていない女が書いた文字です 許せる方のみよろしくお願いします‼️

     まろやかにに白い石畳を少し行くと、ぶわっと膨らむように秋風が吹く。
     砂埃の匂いに、相川は思わず両目をつむった。遮るように手のひらをあげ、前かがみになりながら歩く。
     風が止んで一息つくと、冷気が痛いほど鼻を刺した。
     そこから灰色の塀に沿って角を曲がると、ぱっと開けた大通りに出る。相川は手をぶらんと下ろし、立ち止まって辺りを見渡す。
     一面、壮麗だった。
     視神経から伝い脳に響くほど強烈に、空の灰色と山吹色の葉のコントラスト。足元にも、木の根元にも、鮮やかな黄色が敷き詰められている。
     そこらをふむとかさかさ軽く音がして、端の方ではくるくる螺旋を描いて枯葉が吹き溜まった。
     相川は、風に乗ってきて、髪の毛をペちんと打った木の葉を指でつまんだ。落ちたばかりの新しい葉は染まりきらず、まだうっすらと黄緑色を滲ませている。しっとりと滑らかな手触りの葉をぽい、と投げ捨てて歩を進めた。

     ちいさなベンチは、まだそこにある。

     平日の真昼だ、誰もいない。空っぽだった。
     てっぺんにある陽を浴びて、青緑がかかるちいさな影を落として、ぽつんとそこにある。照らされて、古びた木の継ぎ接ぎと鉄のレールの赤錆が細かに見えた。
     相川は、ちらりとベンチを一瞥すると、またすぐに背を向けて、落ち葉の積もる地面の方へと視線を移した。なるだけ人に踏まれていなくて、綺麗な木の葉をひとつひとつ拾い集めていく。
    すぐに、預けられた透明なビニール袋は黄色く膨らんだ。ずっとかがみこんでいた相川は、弾みをつけて立ち上がり、ぐうっと背中を伸ばした。灰色がかった空が明るくて眩しい。視界の両脇にぐわっと反り立つ紅葉しきった木々の先から、またぽろぽろ、黄色の葉が舞っていた。

     がさがさと、歩く度に足にぶつかる大きなビニル袋を気にしながら、相川は来た道を静かに戻る。大きさの割には軽いけど、片手に持つには少し重たかった。料理の飾りに使うものだ。形を崩さないよう、相川はもう一度やさしく袋を抱え直す。

     帰り道に通りがかっても、相変わらずベンチは空っぽだ。
    相川はそのまましらっと通りすぎかけて、しばし逡巡、やっぱりと足を戻して、ベンチの前まで戻る。
    座面の埃を少し手ではらい、相川はぺたんとそこに座った。払いきれなかったイチョウの葉が手に触れる。
    そっと葉をつまみあげると、爪でぱりぱりと切れ目を入れる。いくつかの束に別れて裂けた葉を、順番に気をつけながらひとつひとつ組んでいく。
    最後に、くるりと組み合わせた葉をひっくり返せば、あっという間に、小さなきいろい蝶が、相川の手のひらに乗っている。

     剣崎が、作り方を教えてくれた蝶だった。

     もう数年前なのが信じられない位の、今日くらいに鮮やかな秋、たまたま通りがかった道に、綺麗な落ち葉がたくさん落ちていた。剣崎は天音ちゃんに負けないくらい、大はしゃぎして、たくさんの落ち葉を拾い集めた。たっぷり遊んだあと、最後に剣崎はしゃがみこんで、大きな背中を丸めながら、この蝶の作り方を相川と天音ちゃんに教えてくれたのだ。
     天音ちゃんは、今でもイチョウを見る度、半ば癖のようにこれを作る。

     相川は、手の中の蝶をつまむと、色の抜けたような青空にかざした。自分の人より浅黒い指先が、やけに低く、きいろい蝶を飛ばせている。上を見たまま、瞬きになぞりそのまま目を閉じた。

     今となってはわからない。彼がこの景色を好んでいたか、どうだってよかったのか、それとも、嫌いだったのかもしれないし。

     剣崎にきいろい蝶の作り方を教えてくれたのは一体誰だったのだろうか。厚く硬い手のひらのわりに細っこい指で器用に折りあげたちいさな蝶。
    剣崎は教えながら、何か思い出しただろうか。さみしげな幼少期か、あたたかな家族か、本当にまったく相川に想像の及ばない、彼だけが持っていて、見せてはくれずにいなくなってしまった記憶か。

     黄色い木の葉の風景を彼に重ね紐付けているのは相川だけで、しかもぜんぶ自分の中で解決してしまう。これは自分のためだけの、夢想と後悔の綯い交ぜの未練の塊だ。
     それでも架空の足跡や影に縋るように、ときおりここを訪れる。
     少しづつ、本当に少しづつ、しかし確実に粒子が荒くなっていく記憶を、この秋だけはと。手触りでも色彩でも匂いでも、なんとかつなぎ止めていたかった。

     大きな風が吹く前の、一瞬辺りがが引いたように静まりかえる気配がする。相川は目を開けた。
     途端に、予想通りに、あたりの落ち葉を根こそぎ浮かすような大風が吹く。相川はそれに合わせてぱっと手をひらいた。
     巻き上がる落ち葉の嵐のような中に、小さな蝶が飛び上がっていく。
     くるくる回りながら、風に乗って飛んで、どこかに紛れてしまった。

     どうか落ちないでくれ。あわよくばとどいてくれ。

     漠然と願うくらいならいい気がした。 

     風が止まないうちに、相川は立ち上がる。
    道草が長くなってしまって、待ちくたびれた天音ちゃんに怒られてしまうかもな、と苦笑する。
     そしてそのまま、大きな落ち葉の袋を抱えると、くるりと踵を返して、ハカランダへ向かう。
     
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    huutoboardatori

    DONEオーブの文字です ブラックホール直前くらい?
    死人がガバガバ出てるので注意‼️
     ぐうううううと、そこらを思い切り鳴らすような音がした。

    「お前……」
     ジャグラーは、思わずガイの顔を見つめた。
     ガイは手に持った松明をぱちぱち言わせたまま、まだちょっと理解が及んでいないであろう顔で呆然とした。自分のお腹の音に。
     そこらの倒壊した柱で組まれた櫓が燃え盛っている。焼かれた死体はすっかり炎におおわれて、黒い影のようだ。濃いタンパク質の匂いが、辺りにたちこめていた。

    △△△

     辺境の戦いなんかにろくろく兵は出ない。
     駆け出しのガイとジャグラーが指揮を執るような、一小隊も組めずの分隊が二つ、それと通信兵が一人。軍医は居ない。元々救助隊のガイがいるから割り当てられなかったのかもしれないが、指示を出しながら怪我人の面倒なんて到底見られない。つまるところの使い捨てだ。兵の質もたかが知れていて、逃げたり、死んだり。夕刻あたりに燃えだした村は、日付が変わる頃には耳に痛いほど静かになっていた。小さな火事がいくつも起きて、月も無いはずの暗い夜は不気味に明るかった。燻った家の瓦礫は煤煙がぶすぶすと立ち、足元には息絶えた人間がごろごろ横たわる。ガイはもう一周だけ、と言って村の残骸を見回りに行く。もう悲鳴すらひとつも聞こえないことは、ガイがいちばんわかり切っていた。
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