受け取り合うボクら古いビルの鉄製の重い扉を開けると、むわりと熱気の高い風にさらされる。
夕涼みという言葉が幻かのように暑い七月の東京。
赤い西日が長い影を作って、アスファルトの上でゆらゆらと揺れている。
さっきまで空調のきいたブックカフェでアルバイトをしていた黒子には、この熱気がひどく辛かった。
まるで鉄板の上で焼かれる肉にでもなった気分だ。
(バニラシェイクが飲みたいですね……)
冷たく滑らかなシェイクを飲み下す瞬間を思い出して、強い渇きを覚える。
帰宅ルートを変更して買い物に行こうかと考えていると、茜に染まったガードレールに腰を掛ける人物がいた。
「お疲れ様、黒子っち!」
ゆらゆらと沈む夕日のように輝く瞳が、黒子の姿を捉えて溶けた。
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