ナンタイ山の奥深く、誰も寄り付かぬような暗い暗い森を抜けた先に、旧カラストンビ部隊の基地がある。そこに3号が療養に来ていると2号から聞いたのはほんの数日前のことだ。
ペトロが4号になったとき、3号はあいにく留守にしておりまだ顔を合わせたことがない。見舞いがてら挨拶に来たはいいが、一体何を話せばいいのだろうか。まるで小さな城のように聳え立つ、厳しい木造の民家を見上げてペトロはため息をついた。3号は少し気難しい性格だと聞いている。ずっとヒーローとしての仕事に明け暮れ、ろくにイカらしい娯楽に興じたりもしないだとか。しかし、諸々の礼儀は幼少期に叩き込まれたため何か粗相をすることはないはずだ。
自分にそう言い聞かせ、ペトロは引き戸の磨りガラスを叩いた。しばしの沈黙の後、ゆっくりと扉が開く。
1915