「じゃあ、僕は出かけるからな。」
カーヴェは、行先も告げぬまま何食わぬ顔をして家主であるアルハイゼンに背を向け家の扉を閉じ鍵を閉めた。そして周りを警戒しながら、目立たぬ様に夕日に照らされたスメールシティを早足で進んだ。ひとつの家の扉を戸惑うこと無く開け素早く隙間に身を滑り込ませる。
「アルハイゼンに悟られなかっただろうな。」
部屋の奥から、ペタペタと足音を立てながら一人の男がでてくる。カーヴェはその男に視線を向け息を整える。
「あ、あぁ...ちょ、ちょっと待ってくれ、緊張して息が、」
ハァハァと荒い呼吸を落ち着かせているカーヴェに男は容赦なく言葉を続けた。
「...カーヴェ、今からそんなに疲れていては身が持たないんじゃないか?」
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