ままごと【ウツハン♀】 不意に頬に触れた唇の感触は柔らかくあたたかであった。
「もう子供じゃないですよ」
そう言ってむくれる君は飴を欲しがり泣いたあの頃と同じ顔をする。けれど、二十年という歳月は寝食を共にした幼子を確かに大人にしたようだ。
子供の成長とは時に侮りがたく、俺の想像を遥かに超えてやってくる。
「子供じゃないと言うけれど、やっぱり俺にとっては可愛い可愛い愛弟子だよ」
これは気付いてはいけないものだ。自覚してしまったらあとには戻れない。
たぶん、きっと。
俺はこの『優しいままごと』をもうしばらく続けたいのだ。
「……ウツシ『教官』はズルい人なんですか?」
彼女の問いに答えるように、俺は曖昧に微笑んだ。
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