ハイの記憶が無くなるとノイはハイの目の前に現れないようになる。地球と宇宙との物理的距離で容易に可能になるコンパスよ。
とはいえノイは吹っ切れてる訳じゃないから日がなぼーっとすることが増えて、チャが痺れを切らして動く。
チャがコノと連絡取り合って新造艦の会議としてハイノイふたりを引き合せるんだけど、ノイが無表情貫くし、ハイも何も思い出さないから仕事の話だけして終わってしまう。
コノとハイが部屋から出ていったあとマリュさんとノイとチャだけになった部屋で、「…どうしてこんなことするんですか」って、今まで一度も人前じゃ泣かなかったノイがボロボロ泣いて心が痛むチャとマリュさん。
チャ「泣くってことは、諦めきれてないんだろ?お前はこれでいいのか?このままハイ大尉の記憶が戻らないまま、なかったことにするのか?」
ノイ「…今までが間違ってたんだ。コーディネイターの中でも天才とされて家柄もしっかりしてる人が、同じ男で、ナチュラルの俺なんかと付き合ってた方が間違ってたんだ。なかったことにできるなら、あの人のためになる」
チャ「…じゃあなんで、お前は泣いてるんだよ」
ノイ「っ…」
チャ「俺はお前が幸せになるなら、お前が選んだのならとあの一癖も二癖もある天才様とでも幸せになれよって笑って送り出したつもりだったのに、なんでお前が今泣いてるんだよ!大体、あんたナチュラルとかコーディネイターとか気にしないのになんで今更気にしてんだよ!」
ノイ「っ、…だって、だって仕方ないだろ?!あんなに感情が篭ってた筈の目で、本当に無関心な人間に向けられる目されて、今更『俺とあんたは恋人だったんですよ』とか言えるかよ!!」
チャ「いつものお前なら言えるだろ!!お前はそんなに臆病者だったのかよ!!」
ノイ「っ、悪いかよ!!!」
チャ「っ…!」
ノイ「俺だって人間なんだ!いつだって思い切りがいい訳じゃない!ましてやこれは仕事でもなんでもない、俺自身のことだ。客観的に判断できても、感情が、心が、追いつかないんだよ!…だから、時間を置けばなんとかなるって、アルバートと離れて、時間が経てば落ち着くって、この想いを忘れられるって思ってたのに、」
チャ「ノイマン…」
ノイ「なのに、あんな本当になにも覚えてない無関心な顔されて、本当に忘れたんだって思ったら、もう、訳が分からなくて」
マリュ「…ノイマンくん」
ノイ「艦長…?」
マリュ「大事な人から忘れられるのって、辛いわよね。胸が張り裂けそうで、頭の中もぐちゃぐちゃで、やり場のない憤りや悲しみで心が壊れそうになる」
ノイ「あ…」
チャ「艦長…」
マリュ「でもね、その人はただ忘れてしまっただけで、実際にあった出来事はなかったことにはならないの。今はノイマンくんだけが覚えていると思うかもしれないけれど、彼の頭の片隅にも残り続けているの。ただそれが、鍵が掛かった箱の中に仕舞われてしまっただけ。あったことは、なかったことにはならないのよ」
ノイ「…」
マリュ「きっと、彼もなにかきっかけがあれば思い出せるはずよ。…あの人が、ムウが、そうだったようにね」
ノイ「…艦長は、こんな想いをしていたのですね。こんな、つらくて、しんどい気持ちを、おひとりで…」
マリュ「私の場合はミリアリアさんや、それこそノイマンくんやチャンドラくんが傍に居てくれたからなんとか正気を保てていたのよ」
チャ「え、いや俺たちはそんな、なにも」
マリュ「私の場合、ムウと過ごした記憶を誰かが覚えていてれた、それだけでも心強かったの。私の頭の中だけじゃなくて、他の人にもムウ・ラ・フラガの記憶がるんだってことが、支えになったわ。ノイマンくんの場合は、チャンドラくんが傍に居るでしょう?それだけでも、心強いんではなくて?」
ノイ「………はい」
チャ「…軽率なことして悪かった。ごめん」
ノイ「…後で一発殴らせろ。それでチャラにしてやる」
チャ「…お前の拳痛いから、正直嫌なんですけど…」
ノイ「人の気も知らないで行動起こしたやつに文句言われる筋合いは無い」
チャ「ご尤もで…」
マリュ「ふふ。いつもの調子、戻ったみたいね」
ノイ「はい…。すみません、お見苦しい所をお見せしました」
マリュ「私の方こそごめんなさいね。チャンドラくんが主体となって動いてくれたけれど、私もノイマンくんのこと心配で、この場を設けたのはコノエ艦長と私なの」
ノイ「コノエ艦長も、ですか?」
マリュ「ハインライン大尉本人はともかく、あちらも周囲の人たちが気にしちゃってるみたいでね。でも、コノエ艦長曰く、『本人もたまにわけもわからず気が立っている時がある』と仰っていたわ。…もしかしたら、もしかするかもね」
ノイ「…そんな、さっきの会議ではそんな素振り一度も」
チャ「アンタ達、二人揃って仕事とプライベートはきっちり分けるタイプでしょう」
ノイ「う…」
チャ「んで、これからどうするんだよ。本当に諦めるのか?」
ノイ「お前…ここまで人を焚きつけといてその言い方はないだろ」
チャ「生憎、俺が知ってるアーノルド・ノイマンはあんな弱っちぃ男じゃなかったもんで。いつ動き出すのかと待ってたんですけどね」
ノイ「…お前ほんと、後で覚えとけよ」
チャ「全部丸く収まったら甘んじて受けてやるよ」
ノイ「その言葉忘れるなよ」
チャ「へーへー、男に二言はございませんよっと」
で、チャにたきつけられたノイが、今度は積極的にハイに絡むようになって、ハイは鬱陶しいと思うんだけど無碍には出来なくて、すったもんだしてたらノイがミレニアムを操舵しないといけない案件が起こって、ノイの操舵技術を体感したハイが記憶を取り戻してハッピーエンドよ!!!
チャはキツめの肩パンで許されるよ!!やったね!!!(????)
いや長いわ(反省)