「ダリダ、はい」
「はい? …チョコですか? 美味いですね、これ」
「うん、そうだね」
「え? …ん~~っ!?」
チャンドラにチョコレートを与えたコノエはそう言いながらチャンドラの顎を掬い上げて、己の唇でチャンドラの唇を塞いだ。
突如口にチョコレートを放り込まれて、飲み込む間もなくコノエに唇を奪われたチャンドラは咄嗟のことに抵抗しようとするが、コノエの大きな手のひらががっしりと後頭部を抑えているため逃れることが出来ない。
「ちょ、…まっ……!」
「甘いね」
「んぅッ……!」
口付けの角度を変えるためにほんの一瞬唇を解放したコノエはそう呟いて、チャンドラの唇に付いたココアを舐め取りながら再びチャンドラの唇を自分のそれで塞いでしまう。
コノエの舌先が伺うようにチャンドラの唇を擽ると、チャンドラの肩がぴくりと震える。
コノエと恋人になってから随分時間が経ったチャンドラは、それがコノエが己の咥内を蹂躙したいと思っている欲の表れだと知っていて、もう何度この熱い舌に蹂躙されたかなど覚えていないが、しかしこれは己を気持ち良くさせてくれるものだとも理解しているチャンドラは、おずおずと唇から力を抜いた。
「んぁ……んぶっ……」
コノエの舌先がチャンドラの咥内へ滑り込む。
チョコレートを口にしたばかりのチャンドラの咥内は酷く甘ったるく、鼻からチョコレートの香りが通り抜ける。
普段とは趣が異なる口付けにチャンドラは困惑しながらも、己の舌を絡め取るコノエの舌先に応えるように絡め返すと、口付けはより深いものになっていって。
「んぅ……ッ……!」
くちゅくちゅと音を立てながら舌を絡めて、時より悪戯に歯列をなぞって上顎を擽ってやるとチャンドラの身体が小さく震え、もっとと言わんばかりにコノエに縋り付く手に力が込められるのが可愛くて堪らない。
コノエはチャンドラの咥内に残っていた僅かなチョコレートの塊を舌で転がす。
殆ど溶けていたそれは互いの熱であっという間に溶けてなくなってしまったが、それでもチョコレート特有の甘い香りの余韻は残り続けて二人の思考回路も甘く蕩ける一方で。
「……ん……、」
「は……、……んっ、……ンぅ……っ!」
二人は無我夢中に互いの唇を貪り合う。
コノエがじゅるりと音を立ててチャンドラの舌を啜ればチャンドラも拙いながらも啜り返し、チャンドラの上顎を擽ってやれば無意識に奥に縮こまろうとする舌を逃さないと言わんばかりに再び絡めとる。
甘くて濃厚で激しい口付けはどれほど続いただろうか。
唇に少しの痺れを感じるほど長い時間求め合っていた二人が名残惜しげに顔を離したときには互いの顔は上気に染まっていた。
二人して息を荒らげながら見つめあっていると、コノエは今にもチャンドラの口端から零れそうなほど溢れた唾液に目が行って。
コノエはチャンドラの顎を支えていた手でするりとチャンドラの喉をなぞった。
「飲み込んで」
「……ん…、く……」
最初の抵抗する力はどこに行ったのか、今やコノエからの濃厚な口付けとチョコレートの甘い香りに酔いしれてしまったチャンドラは、ただ従順にコノエの言葉に従って、喉を鳴らしてゆっくりとチョコレートが混じった甘い唾液を飲み込む。
「ぁ……、」
「いい子だ」
コノエがなにか指示をする訳でもなく、言われた通りに全ての唾液を飲み込んだことを証明するようにチャンドラが小さく口を開く。
確かにそこには先程まで溢れそうになっていた唾液はなくなっていて、呼吸と共に揺れるチャンドラの赤い舌が覗いていて酷く艶かしい。
コノエが従順なチャンドラを褒めるように濡れた唇を親指でなぞると、チャンドラの瞳がますます蕩ける。
チャンドラは蕩けた瞳をそのままに、自分の唇をなぞるコノエの親指に舌を伸ばしてちろりと舐めた。
舌先に感じる少しばかり硬いコノエの皮膚の感触と、先程チャンドラにチョコレートを食べさせた時に手にしたチョコレート甘い香りに誘われるように、チャンドラはちろちろと舌をコノエの親指に奉仕してしまう。
「美味しい?」
「ん……」
「それは良かった。でも、僕は親指じゃなくてこっちが嬉しいかな」
「ン、ぅ……!」
蕩けた表情で自分の指を奉仕するチャンドラも大変艶めかしくて可愛らしいが、それでもやはりコノエはこちらがいいと再びチャンドラの唇を己の唇で塞いだ。
ほんの少しだけ甘さが残るチャンドラの咥内は今度は最初からコノエを歓迎して受け入れてくれて、首には縋り付くように腕を絡められる。
コノエはチャンドラの舌先を甘噛みしながら、チャンドラをソファに押し倒した。