現パロ無鉄(彫刻家×貧乏美大生)その7 今日の夕飯はハンバーグだから、遅くならないうちに帰ってこい。そんな予告を聞いて、浮き足立たない訳がなかった。逸る気持ちを抑えながら大学を出る。それで帰宅すれば――玄関に、見覚えのない靴があったのだ。
黒のハイヒール。マンションにはたまに無頼漢の仕事相手が訪れることはあるが、女性が来るのは珍しい。大概来客がある時は知らせてくれるのだが、急な訪問だったのだろうか。俺は気持ち衣服のシワをのばし、恐る恐るリビングへ足を踏み入れる。そこにいたのは。
「おじゃましています。ご無沙汰ですね、我が子」
「……………………」
見間違いだろうか。そう思って瞬きを繰り返す。しかし何度視界が開けてもそこには淑やかな女性が――イゾルデが、いる。
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