そわそわ、そわそわ。チコーニャは広場の前で落ち着かない様子のまま立っていた。今日は最愛の人とおでかけする日である。自分のことを娘と呼んで愛している相手である以上、デートとも呼べないなにかなのだが。故にあんまり気合いを入れるのも、と思いつつ、異性として意識されたい気持ちもまだまだあるためいつもは着ないような女の子らしい格好をしてみたが、果たして反応やいかに。
「チコちゃんお待たせ〜!やー服どれにしよか迷ってしもて。やっぱ年頃の女の子と一緒に歩くわけやし、オシャレはせんとなー思て気合い入れてしもたわ」
「……ッスーーーーーー……いやまあ……集合時間より5分早いので遅刻ではないんすけど……忘れてましたね。あなたのファッションセンスのやばさを」
「え?」
声が聞こえた瞬間ぱっと嬉しさを顔に浮かべたものの、彼が着ている服を見て表情が消える。ドギツイ原色の服に、でかでかとしたアニマルプリントが繰り返されている服。幼児服ですら許されない暴挙に目眩がするようなとんでもない服。そして謎のノースリーブの上着に謎のアクセサリー。無論これが彼なりのオシャレであることはチコーニャもわかってはいるが、思考を放棄したくなるような情報量である。自分の服がどうとか言っている場合では無い。彼が気合いを入れてくれたと好意的に捉えてこのままにしておくべきか?とチコーニャは頭を悩ませた。
「……………………ま」
「ま?」
「まず服を……服をプレゼントさせてください……あと買ったあとはそのまま着て」
「えっ」
「情報量が多いんですよその服……処理に時間がかかりすぎる」
「情報量」
オシャレや思ったんやけどとしょんぼりしてるのを横目に、ドグマが甘やかすから!と行き場のない怒りをこの場にいない恋敵にぶつけつつ、チコーニャは服屋へとプロキオンを引きずって歩いた。
尚、後々ドグマどころか彼の義母であるアーテルでも矯正は無理だったと聞いてチコーニャは愕然とする羽目になる。