「チコちゃんはもちもちやなあ」
何の気なしに発したその一言。それがぐさりとチコーニャに刺さった。ぷるぷる震えながらそっと自分のお腹のお肉をつまむ。それを見たプロキオンはあっと言いたげな顔をした。何か決意を固めた顔を彼女がするので、プロキオンは焦る。
「いや……ちゃうよ?チコちゃんは漸く健康的な身体付きに」
「痩せます」
「ち……チコちゃ……」
「ダイエットします!」
わーん!と泣きながら腕の中から抜け出し走り去っていくチコーニャを見送り、しまった……とプロキオンは頭を抱える。しかし胃袋はこちらが掴んでいるのでなんら問題はない。プロキオンは食事にチコーニャが特別好きなものを出す決意を固めた。美味しいデザートも用意したらきっと考え直すはずである。そうでなければ困る、これ以上痩せられたら身体に良くないのだ。
「ほらー、チコちゃんの好きなハンバーグやで〜」
「……」
「なんや食べさして欲しいんかー?甘えたやなあ。ほらあーん」
チコーニャは親の仇を見るような目でハンバーグを見ている。しかし漸く標準体重まで持ってきたところだったので、プロキオンはめげずに一口分をチコーニャの口元に押し付けていた。
一方何も状況を知らないルピナスは何してるんだろうと言いたげに両親を見ながらプレイアと一緒にハンバーグを齧っている。
「……プロキオンさんのいじわる!」
「えっ」
「なんでダイエットの邪魔するんですかっ!ばかーっ!」
そんな風にしばし怒ってプロキオンを叩きつつも、結局欲求に勝てずしおしおとした顔でチコーニャはハンバーグを頬張った。プロキオンはホッと胸を撫で下ろす。
「美味いか?」
「おいしい……」
「うんうん!ほなよかったわ」
もちもち……そんな擬音が付きそうな様子でハンバーグを食べるチコーニャを見て、プロキオンは満足そうに頷いた。