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    setouchCAZ

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    なんでもありで節操なしです。絵も字も上げます。

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    🎨→Twitterにそのまま上げるのを憚られる絵を上げます。主に露出の多い女体化百合やR-18絵。
    🖋→Twitterのリプツリーログ等。30日CPチャレンジ走り切りたい……

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    ・アップロードする作品のタグ付け・CP等についてはプロフカード(https://profcard.info/u/9AFapn8DWZXHRMAIV1BLfrtrPGd2)を参照ください。
    ・R-18はTwitterリスト限定にしております。高卒済相当18歳以上の方であればどなたでも追加致しますのでお気軽にリプやDM等でお声がけください。

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    30日CPチャレンジ3日目
    Watching a Movie 映画を見る
    ———
    現パロ(大学生)
    Cに片思いするJと、無自覚にひどいCのCJ

    ##CJ
    #30日CPチャレンジ
    30-dayCpChallenge

    3:Watching a Movie 日曜日の昼下がり。ジョセフはシーザーと共に映画館に来ていた。
    スクリーンに流れるのは先週末に公開されたばかりの恋愛映画。今流行りの人気俳優と女優がダブル主演を務めているとかで、公開前から世間の関心を惹きつけていた。ジョセフたちがいる映画館にも多くの人が集まっている。そのほとんどがカップルと思わしき男女二人組ばかりなので、ジョセフは少々居心地の悪い気分になっていた。
     そもそも何故ジョセフがさほど興味のない恋愛映画を、それも男二人で見ているのか。話は数時間前に遡る。


     この日の朝、大学の講義もバイトのシフトもないジョセフはアラームもセットせず、のびのびと布団の中で丸まっていた。しかし枕元に置いた携帯から突如発せられた軽快な電子音と小刻みに繰り返される振動によって、彼は意図せず夢の世界から引き剥がされる。
    こんな朝から一体誰だよ、と携帯を開いたときの時刻は午前十時半。このまま眠っていたていで無視を決め込んでも良かったのだが、急を要する内容であると困る。仕方なくジョセフは重い目蓋を何とかこじ開けながら、受信したばかりのメッセージを開封する。

    『今から一時間後、駅前の噴水の前に来てくれ』

    差出人の名はシーザー・A・ツェペリ。物心付く前からの幼馴染で、親友の名だ。
    詳しい説明もなく、たった一行に纏められた連絡にジョセフは欠伸よりも先に溜め息を吐く。
    こんな素っ気ない文章を寄越されたところで、普通の人なら誰でも見なかったことにするか、間髪入れずに『今日は無理だ』なんて断りの連絡を入れるだろう。親切な人であれば理由を聞いて、その返答によってはこの横暴な指示に従うかもしれない。
    しかしジョセフはメッセージに返信するより先に、暖かな布団から這い出て身支度を始める。勿論、言われた通りの場所へと赴くために。
     ジョセフはシーザーからのこうしたお願いを断ることができない。彼に脅されているとかいう不穏な事実はなく、ジョセフ自身が自主的にそうしている。ただの一方的で無益な献身だと言われても構わない。
     ジョセフはシーザーに対し、どうしようもない恋情を抱えている。

    「ったく、せめてもうちょっと時間に余裕を持たせてくれよな」

     顔を洗って歯を磨き、寝癖を整え服を着る。いつでも家を出られるようになった時点で、指定された集合時刻まであと二十分。これなら走ることなく待ち合わせ場所へ辿り着くことができそうだ。ジョセフは携帯を取り出し、寝起きに受け取ったメッセ一ジに一言『今から行く』とだけ返信する。
     シーザーとは長年の付き合いであるジョセフには、これから起こることが何となく予想できた。というのも、何の前触れもなく連絡を寄越しては、ジョセフの予定などお構いなしに呼びつけようとしてきたのは一度や二度のことではない。そしてその要件の大抵は女性がらみの色恋沙汰ばかりだったので、正直彼に会うまでもなくすでに気が重い。こちらの気も知らずに呼びつけやがって、と思わなくもない。
    それでもジョセフが彼のもとへ訪れるのは、少しでも彼に頼られたいというエゴによる。無類の女性好きであるシーザーがジョセフの方を振り向く可能性は無いに等しいと、誰よりも一番当の本人であるジョセフが理解していた。だから彼は自分の恋心をどうにか押し殺し、気の置けない親友の顔で彼の隣に立ち続けようとする。
     そして今日もジョセフは胸の奥がじりじりと痛むのに気づかないフリをして、玄関のドアノブに手をかけた。


     ジョセフがメッセージに書かれた駅前の噴水前までやってくると、そこにはすでにシーザーの姿があった。彼は普段大学で会う時よりも一段とおしゃれな格好をしていて、雑踏の中でもすぐに見つけ出すことができた。後ろ姿を遠目に見るだけでもファッション誌のモデルのように“さま”になっていると思うのは惚れた欲目だろうか。つい見惚れそうになる気を抑え、何でも無い風を装って彼に声をかける。

    「よォ、シーザーちゃん。いくら幼馴染とはいえ、いきなり呼びつけんのはどうかと思うぜ?」
    「Buon giorno,JOJO……来てくれるって信じてたぜ」

     慣れ親しんだ母国語で爽やかに朝の挨拶をするシーザーだが、微笑みを浮かべる彼の頬には通行人ですら思わず振り返ってしまいそうな程の赤い痣があった。シーザーの両頬には生来天使からキスを落とされたみたいな魅力的な痣があるのだが、尋常でない頬の腫れはそれすらを覆い隠してしまっている。あまりの痛々しさに自然とジョセフの眉間に皺が寄る。

    「……随分男前になっちゃって、まァ」
    「男の勲章というには少し痛みが強いがな」
    「誰にやられたの? 彼女?」
    「ああ。さっき別れたばかりだから、元が付いてしまうか」

     彼の話を簡潔にまとめると、今回の彼女は随分嫉妬深かったらしく、フェミニスト代表のようなシーザーとは少しばかり相性が悪かったらしい。たまたま街で女性に対し“親切”にしていたところを目撃され、本日のデートの出会い頭に頬の勲章という素晴らしい置き土産を残して去っていったのだとか。恐らくシーザーの元彼女は彼が女性に優しくすることを詰り、そしてシーザーは自身の態度を曲げようとしなかったのだろう。ジョセフには目に見えて浮かぶようだった。だってシーザーの女性好きは半ば信念や信条に近しい域で、シーザー自身にもそう簡単に変えることができない性質なのだ。ましてや付き合って数ヶ月も経たない他人なら尚更である。思い上がったなざまあみろ、とジョセフは誰にも聞かれないのを良いことにシーザーの元彼女たちを内心で散々にこき下ろす。それが出来たらもう俺がやってるっつーの。
    しかしシーザーは平手打ちをして帰ってしまった元彼女に対しても怒りの感情を見せない。それどころか彼女の心情に思いを馳せて眉尻まで下げる始末だ。何処までも女性に優しいように見えるが、ジョセフは実際にはシーザーが女性に対し、来るもの拒まず去るもの追わずのスタンスを徹底していることを知っているので、むしろ残酷なようにも思われた。しない善よりする偽善? この男はどちらかと言うと水をやりすぎて根を腐らせるタイプなのだ。同情は決してしないけれど。

    「それで、俺は何のために呼ばれたわけ? その痛々しい頬っぺたを冷やしてほしいのかしらン?」
    「違う、JOJOに手伝って欲しいことがある」

     ジョセフがおちゃらけた態度で本題を促すと、シーザーはバッグの中から二枚の紙切れを取り出す。それは映画のチケットのようで、聡いジョセフは目の前の男が次に言うセリフを察してしまう。コイツが次に言うセリフは、

    「俺と一緒に映画を見てくれ」
    「やっぱりそう言うと思ったぜ!」

     最早口に出す気にもならなかった。今しがた別れたばかりの女性と見るために用意したであろうそれ。恐らくシーザー自身も映画に対してはそれほど興味がなく、一人で見ようとは思えなかったのだろう。かといって折角用意したチケットが一気に二枚も無駄になるというのは少々経済的とはいえない。

    「……なーるほど、だから一時間後って言ったわけね」
    「そういうことだ。待ち合わせ時間に余裕を持たせておいてよかった」
    「シーザーが先にチケット買うなんてキザなことしなけりゃ、野郎二人で興味もない映画見ることにはならなかったんだよなァ〜」

     切り替えが早いと言うのだろうか、すでに別れた彼女のことよりも紙屑になりかけていた映画のチケットの方に思考の比重が傾いている。無垢な上でこうなのだから、本当に恐ろしい。
     シーザーが握るチケットも、彼が身につけている服飾も、目の前にいる今のシーザーを構成する全てはジョセフではない女性ただ一人のために用意されたものである。正直いって気分が悪いが、それを覚悟した上で今ここに立っているのだから、彼にシーザーの申し出を拒否するという選択肢はない。ジョセフが差し出された紙を一枚手に取ると、シーザーは安堵の表情を浮かべた。

    「ありがとう、お前が来てくれてよかった」
    「……どーも」

     どうせならその言葉は初めから自分と出かける予定の日に聞きたかった。ジョセフの心情を何も知らずに笑うシーザーを少しだけ恨めしく思う。


     そうして二人は映画館に足を踏み入れることになった訳である。シーザーは最後列の通路側の席を購入していた。画面からは少し離れているが、後ろが壁なので背もたれを蹴られる心配も、多少動いたところで誰かの視界に入る心配もなさそうだ。映画館の座席選びという予想だにしなかった部分でシーザーの手馴れっぷりを実感し、ジョセフは一人でにばつが悪い気持ちになる。
     いきなり呼び出したから、という事実を振りかざし、ジョセフはシーザーにドリンクやらポップコーンやらを色々奢らせた。ジョセフの独りよがりな嫉妬によって生じた鬱憤を晴らすための半ば八つ当たりのような提案だったが、シーザーは文句ひとつ言わずに買い与えてくれた。そういうところが世の女性たちを図に乗らせるんだぞ、と癇癪を起こしたくなった。そういうところなのだ、本当に。ただ代わりとはいえども、その“代わり”に毎回自分を選んでくれているという事実に免じて口に出すのは堪えておいた。

     そうして間もなく上映時間になり、館内の照明が落ちるとスクリーンだけがほのかに光る。映画の内容は至ってテンプレートに沿ったものだった。親の決めた結婚や自由恋愛に翻弄される数人の若者たちが、愛憎入り乱れさせながらストーリーを展開していく。もうすぐ中盤に差し掛かる頃だが、ジョセフの推測ではこの後クライマックスにかけて何らかの障害が立ち塞がるだろうと思われた。病気か引っ越しか、恐らくその辺りだろう。
    ともあれ映画が始まった後もジョセフはその内容に興味が持てず、ひたすらにポップコーンを食べ続けることだけを楽しんでいた。ただポップコーンを掴もうとした指先がカップの底に触れるようになってきたので、食べることで暇を紛らわせることもそろそろできなくなりそうだ。

    (シーザーの頼みとはいえ、やっぱり映画じゃないところにしようって言えば良かったか?)

     最後列から見下ろす映画館の中には沢山の人がいる。そのほとんどは互いに面識がないにもかかわらず、皆が一様にスクリーンの方へ視線を向けているというのは中々滑稽な光景のように思われた。ジョセフは横目で隣に座るシーザーを盗み見る。スクリーンからの反射光が彼の横顔を浮き彫りにしていた。薄暗い中ではよくわからないが、彼の頬には今も真っ赤な痣がある。もしかしたら映画を見ている間に変色してしまったかもしれない。けれどシーザーは何事もないような表情のまま、他の観客と同じように黙ってスクリーンを見つめ続けている。
     ジョセフは映画を見るのではなく、映画を見るシーザーの様子を観察することで気を紛らわせることにした。彼は女性相手であればどのような態度で映画を見るのだろう。ベタではあるが、暗闇に乗じて手を握り込んだりするのだろうか。今のような映画に集中していますよ、という澄ました表情のまま、何でもないように指を近づけて優しく手の甲を撫で、そのまま滑るように指を絡めて……。それとも誰も二人を気にしないのを良いことに、初めから大胆に繋いだりするものなのだろうか? 想像したそのどれもがシーザーがジョセフに対しては絶対にすることがないものなので、確認のしようがない。むしろ徒に自らの心を傷つけただけとなり、ジョセフは胸の痛みを逃すように小さく深呼吸をする。

    (……考えない方がいいってのは分かってんだけどな)

     頭でわかっていても、シーザーの存在を近くに感じる度に勝手に浮かんでしまうのだ。早く側にいられるだけで何もいらない、と思える慈愛の域に達してしまいたい。シーザーの言動に一喜一憂するのをやめたい。この恋を捨ててしまうことはできないけれど、誰も傷つけない感情に変わってほしい。
     ジョセフが一人悶々と想像を駆け巡らせているうちに、映画はすでにクライマックスすら通り越してしまった。これではもう最後に立ちはだかったであろう障害の正体を知る術はない。途中から映画のストーリーがすっぽり抜けているジョセフに構うことなく、人気アーティストの歌声に乗せてスクリーンはスタッフロールを映し出した。
     答えを得ぬまま無慈悲に終わった物語がジョセフの恋と重なるような気がして、最後の最後までこの映画のことを面白いとは思えなかった。


    「今日の映画はハズレだったな。主人公が奥手すぎてイマイチ盛り上がりに欠けた」

     映画が終わったあと、二人は映画館の近くにあるカフェ昼食を取っていた。ジョセフはフォークにトマトクリームパスタをくるくると巻きとりながら、評論家気取りで映画の感想を述べるシーザーを見やる。

    「すっげえ辛口。女の子たちにもそんなこと言うの?」
    「んなわけあるか。彼女たちの気分を害することは俺の本意じゃない」
    「……あっそ。お優しいこった」

     巻き取ったスパゲティを口に運ぶと、トマトの酸味が効いた濃厚なクリームが口内に広がり、ジョセフは思わず舌鼓を打つ。
     その正面でシーザーはサンドイッチを食べている。食事の合間に飛び出す言葉はどれも容赦ない映画への批評だ。実のところシーザーも登場人物の心情描写を重視した動きの少ない恋愛映画よりは、アクション映画などの迫力のある画の方を好んでいる。集中して見ているように見せかけて、本当はつまらなくてたまらなかったのだろう。
    ジョセフにはこの映画を見たがったらしい女のセンスを理解できなかったが、それを口に出すと揉めてしまいそうなのでやめておく。せめてもの皮肉に「俺なら今やってるアメコミの新作を選んでたな」と言うと、シーザーは少し吹き出して笑った。

    「そうだな、確かにそっちの方が面白そうだ」
    「だろ? 何ならこのジョセフちゃんが今度一緒にデートしてあげてもいいわよン」
    「はは…………お前と付き合う人はきっと毎日が楽しいんだろうな」

     ジョセフはシーザーのその一言に硬直する。あれほど美味しいと思ったパスタの味すら思わず忘れてしまうほどだった。
    ジョセフが人目につかぬよう大切に育てている恋心を知らないシーザーは、もちろんジョセフの親切が自分だけに向いていることを知らない。誰にでも優しくしていると思ったら大間違いだぞ、と声を大にして言ってやりたいところだが、それができたらこんな女々しく惨めな気持ちにはなっていない。
    シーザーの言う『お前と付き合う人』の中には当然彼本人が入っていない。それが改めてされた彼からの拒絶のように思われて、ジョセフの身体からはどんどん血の気が引いていく。何気ない軽口のつもりで放った言葉にまさか即死級の豪速球が返ってくるなんて。ジョセフはいっそ泣き出したい気持ちになった。

    (じゃあ俺と付き合ってみる? 俺ならお前の頬を打ったりしないし、どれだけ急に呼び出してきてもお前の側まで駆けつけてやるからさ……)

     心に浮かぶ期待は決して音になることはなく、切ない痛みに変わって腹の底へと溜まっていく。ジョセフの心の内を読む術を持たないシーザーは、黙り込んだままのジョセフに不思議そうな表情を向けた。

    「……? JOJO、食べないのか? 冷めてしまうぞ」

     シーザーの純然さがジョセフの心を殺す。幼馴染で親友だからといって、真っ先に頼ってもらえるからといって、シーザーの無垢な断罪は彼と付き合ってきた彼女たちと同様に等しくジョセフにも及んでいた。
    結局のところこの男に恋慕の情を抱いたときから、ジョセフは断頭台の階段の一歩目を踏み込んでいたわけである。

    「……シーザーが変なこと言うからだっての。言われなくても食べるぜ」

     今もなお、ジョセフは鮮烈な罪を犯している。
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