猫渋谷の喧騒から離れた路地裏で、ミチロウは足止めを食らっていた。原因はミチロウの足元で腹を出して甘える、一匹の白猫。
喉を鳴らして転がる愛らしさに癒やされるまま撫でていると、ふと誰かの足音が近づいて来ている事に気付き慌てて人影の方を見やった。
しかし薄暗いビルの隙間を歩いてくるのが見知った青年──真凛だったので、ふっと肩の力を抜く。向こうもこちらの存在に驚いたらしく、真凛はきょとんとした顔で声をかけてきた。
「ミチロウさん?こんなところにしゃがんで何してるの。」
「いやぁ、この辺通るたびに見かけてた子がね、今日ようやく撫でさせてくれて……つい長居を。」
手元で寝転んだままの白猫を撫でて見せてやると、真凛はふぅん、と興味のなさそうな返事をしてミチロウの隣にしゃがみ込んだ。
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