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    アルミ

    @alumihilum

    碓○ア○トくんを性的に見ているだけの一般人。シンアブ&モブアブ。 9割不健全
    NTR/BSS/女装/男性向け

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    アルミ

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    モブ女子生徒中心の高校生シンアブシン匂わせ小説。モテ男碓氷くんと同級生の女の子の話。

    ひみつのS 碓氷アブトくん。私の高校で学年トップ5位の秀才で、運動神経も抜群。背の高さとその身体能力から、数々の運動部からスカウトを受けたものの、軒並み辞退。クールで人馴れせず、告白は一度も了承したことがないらしい。いつも自分を貫き通す孤高の男子生徒……私の友人Tは、彼のことを、まるで自分の武勇伝みたいにうっとり語ります。私は、この名誉を何度聞かされたか分からないので、うんざり。
     確かに、超ハイスペックだと思います。文武両道なんて中々できるものじゃないし。でも、なんか人間味がないなって思うんです。どこか欠けたところがあるんじゃないか、粗を探してしまいます。そして、そんな超人と、もし運よく付き合えたとして、私みたいな凡人なら気おくれしてしまう、と思う。孤高の、ってのも引っかかるし。
     Tは、孤高なんだけど、人付き合いが悪いわけじゃないってとこが素敵、とさらに陶酔します。私が何を言ってもTの妄想は深まるばかりだし、一度スイッチが入ったら、頬杖をついて、じっと待っているくらいしか私にはできません。
     お弁当を食べ終わって蓋を閉めると、Tは改まった顔で私に言いました。
    「ねえ、R。私、やっぱり言おうと思う」
    「碓氷くんに?」
    「そう」
     Tの顔はおどけてはいませんでした。口を真一文字に結んで、決意に満ちた表情、と言った感じ。私はその堅すぎるTの決意が、却って危なっかしいなと思いました。
    「無理だと思うなあ」
    「分かってるよ。でも、可能性残したまま終わらせたくない」
     その目がすごく真っ直ぐなので、本当に好きなんだなあ、と思います。身の程知らず、なんて言いません。Tはすごくいい子だし、活発で、友達も多くて、嫌味じゃない。確かに、可能性は0じゃない。
     Tは一言で言うならチャレンジャーです。Tはテニス部員で、この学校はテニス部に力を入れていて、全国大会まで勝ち進んだこともある、なかなかの成績を持っています。
     Tは、中学の頃はバスケ部に所属していました。テニスは学校の体育の授業でやったくらい。ほぼ未経験でした。なのにTは「できる気がする」と言って、高校生になって初めて強豪テニス部に入ることになりました。Tはなんでも卒なくこなすけど、まったくの初心者となれば、爪弾きにされたり、最下層からの出発になるかもしれません。
     でも、Tはその時も、「可能性を残したまま終わらせたくない」と言って、テニスを始めたんです。Tは3年になれば、大会に行けるかもと言って嬉しそうに笑います。負けない、めげない。決めたことは真っすぐ突っ走る。そんなTが、友達としても誇らしかったから、私はいつもTの突拍子もない行動を止められずにいるのです。
    「じゃあ、行ってきなよ」
    「今?」
    「今って言うか、放課後」
     Tはしばらく悩みましたが、うん、と短く言って、空のお弁当の包みを袋に仕舞って、私の近くに置きました。
    「これ、ちょっと持ってて。お弁当持ったまま行ったら、真剣じゃないって思われちゃう」
    「ふふふ、うん。頑張って」
     Tは立ち上がって消えて行きました。あと10分で昼休みが終わります。屋上の空をなんとなく見上げて、Tをちょっと羨ましく思いました。一人の人に真剣になれるなんて、私には想像もつきませんでした。

     Tは運動委員会の役員とかなんとかです。先日体育祭が終わって、Tはその後の作業で、まだバタバタしていました。だから、今日の放課後も急にその予定が入っちゃって、教師に緊急収集されたんです。
     碓氷くんを呼び出してしまったのに、Tは、多分少しで終わるから、と放課後その集まりに顔を出しました。私は、彼が帰らないように、屋上へと続く階段のところで待ち伏せをするようTから頼まれました。厄介な用を引き受けることになってしまいました。
     碓氷くんは屋上のガード付近で携帯を度々触りながら、手持ち無沙汰にしていました。屋上には数人いましたが、彼のことを見ている人はいません。Tの集まりは結構長く続いて、20分くらい経ちました。遠くの彼が一つ、溜息を吐くと、こちらに向かってきました。こうなると碓氷くんはちょっぴり不憫でしたが、私は役目を果たそうと、階段を降りようとしたところで声を掛けます。
    「あの」
    「っ、え…何ですか」
     碓氷くんは、静かに驚くと、敬語で返しました。
    「私、Tの友達なんだけど」
    「…ああ」
     すると碓氷くんは、また小さく息を吐いて、
    「すまん。急いでるんだ。あと、告白なら断っておいてくれないか」
     そう言って、返事を待たずに降りて行ってしまいました。
     私はその態度に、無性に腹が立ったのです。急いでいるのはわかります。でも、相手の告白さえも受け止めず、ましてや友人に断っておいてくれ、なんて、Tの気持ちを無下にしているにも程があります。それに私は、碓氷くん関係で色々押し付けられて、なんとなくいら立っていたのです。それが怒りに拍車を掛けました。
     碓氷くんは背も高くて、近くで見ると、モデルみたいに綺麗で、色白でした。でも、それにかまけて、さぞ楽に生きてきたんだろうな、と、勝手に思い込んで、余計むしゃくしゃしました。女の気持ちがわからないあんたに、Tを渡すもんか!と、小姑みたいに怒って、丁度階段を上がってきたTに向かって、私は降りて行きました。
    「碓氷くん、やめた方がいいよ」
    「どうして?」
     Tは意味が分からずはてな顔です。
    「私に伝言だって。断っておけって言われた。面と向かって言うならいいけど、伝言なんて最低。絶対、やめた方がいい」
    「そうなんだ」
     Tは、ほんの少しだけ寂しそうでしたが、再びTらしい、屈託のない笑顔を見せました。
    「Rが言うならそうだね。でももう、これで吹っ切れた。今度はもっと、身近な人にする」
     それがいいよ、と後押ししました。Tは次の日から、碓氷くんの話をめっきりしなくなって、なんであんな人好きになったんだろう、と疑問顔でした。恋とは儚いものです。
     今度は私の方が彼を気になり始めました。というか、もやもやとか、怒りとかが消えなかったんです。碓氷くんが褒められる度に、Tをあんなに適当に扱ったくせに、と、一人むかついていました。でも、あの時急いでいたのはなぜか、というのを、聞いてみたい気持ちにもなったんです。
     私は週末、Tと買い物に行くことになりました。夜は焼肉食べ放題、と妙に張り切っていたのを見ると、やっぱり碓氷くんのことで、多少なりとも傷ついていたのかもしれません。
     私が山手線に乗り込んで、待ち合わせ場所に行こうとしたときのことです。田端駅に着いた途端、車内のどこかから、聞いたことのある、というか、引きつけられるような声がしたんです。私は左奥の人混みをじっと眺めました。すると、人影から、水色の髪の毛が少し見えたんです。
     あっ、と思いました。紛れもなく碓氷くんでした。碓氷くんは車両から降りると、ベンチの前で待っていた、深緑の髪の毛をした、活発そうな男の子と合流しました。
     その時私は勘付いたんです。ああ、この人がいるから、付き合えないのかもしれないって。
     私は咄嗟に山手線を降りてしまいました。碓氷くんと、見知らぬ男の子が肩を並べて歩いていきます。もちろん、恋人だとしたら、相手は男性なので、碓氷くんがゲイということになります。
     でも、それを確信するくらいにしっくり来て見えました。色が薄くてどこか浮いて目立つ。そんな碓氷くんが、隣の彼といると、田端駅の石と蔓の壁に溶け込んで見えたんです。孤高な彼が初めて、人と心を通わせている所を目撃した。そう感じました。
     改札を出る直前になって、私は思い切って声を掛けてしまいました。それからすぐに失敗だったと思いました。何もプライベートで呼び止める必要無いじゃないか。学校でよかった、って。
     碓氷くんは振り返ると、ちょっと驚いて、隣の彼を先へ行かせました。その彼はうなずいて、青い瞳でこちらを一瞥すると、駅舎の向こうに消えました。
     私と碓氷くんは壁際に沿って話し始めました。
    「この前の…だよな」
    「うん。私服なのに、ごめんね。少しだけだから」
     緊張して早口になります。碓氷くんの顔が見られませんでした。彼と話すことになったら、ぶつけてやろうと用意していた言葉たち。それを今一度、心の中で反芻しました。でもなんだか、申し訳なくなってきました。声を掛けたときに、とっくに勇気は使い果たしてしまっていたのです。もう、この叱責の言葉を激しくぶつける気にはなれません。私は、そのセリフを、弱弱しく投球しました。
    「Tは、碓氷くんと接点なかったかもしれないけど、結構好きだったんだよ。毎日、私に話してくるぐらい。ほんと、うんざりするくらい聞いてたの」
     茶化して笑っていたけど、ほぼ愚痴みたいな話でした。碓氷くんは、それに同調してか、なのかわかりませんが、なんだか微笑んでいたように見えたんです。
    「あの時、急いでたって何があったの?」
    「外部の団体で仕事を請け負っているんだ。だから、急がないと困った。すまないな」
     なんとなく濁した言い方でしたが、それが堅い言い方だったせいか、彼がとてつもなく重要な任務を負っているのがわかりました。ここまで秀才なら、そのような企業からのスカウトや仕事があってもおかしくはないのかもしれません。私には到底想像のつかない世界です。
    「でも、断るなら面と向かって、きっぱり断ってほしかった」
    「ああ。悪かったと思ってる」
     本当に反省しているようだったので、この話はあっさり決着がつきました。
    「Tには今度、直接謝ってね」
    「わかった」
     碓氷くんは素直にそう言いました。案外誠実な人なのかもしれません。となると、やっぱり彼の隣にいた、溌剌とした雰囲気の男の子が気になるところです。
     私はそれが素直に聞けずに、遠回りをした言い方をしました。
    「相手がいるならいるって、ちゃんと言った方がいいよ」
     学校では彼に相手がいるなんて、そんな噂一度も流れたことはありませんでした。それなのに、相手がいると断定するような口調になってしまった。後から気づき、慌てて口をつぐみました。
    「相手か」
    「いや、いるなら、だけど。でもあの人、だよね。多分」
     間違っていたら恥ずかしいから、うつむきました。でも、彼は素っ頓狂な高い声を上げて、
    「わ、分かるか」
     と、私に問いかけてきました。
    「やっぱり、あの人なの?」
    「…ああ。…すごいな。わかるのか」
     碓氷くんは素直に感心していました。彼の顔が、学校では見ない、綻んだ顔になったので、してやったり、と思いました。それから、腕組みして改札の奥を見ると、私に話したんです。
    「あいつも、そういうやつだ」
    「あいつって?彼のこと?」
     碓氷くんはゆっくり頷いて、笑いました。
    「オレのために、真剣に怒ってくれるんだ」
     大切にされてるんだね、と言ったら、君もな、と微笑みます。
    「それに、オレもあいつの趣味の話を延々聞かされる」
    「趣味って?」
    「オカルトとか。さっぱり興味がないから退屈だ」
     ああ、だから、碓氷くんの話をTから聞かされてうんざりしてる、って言ったとき、彼は笑ったんだ。
     碓氷くんは、話してみると結構普通の人でした。確かに、格好いいし、オーラはあるけど。でもやっぱり、同年代の高校生だなって、雰囲気が同じだってなんとなく分かるんです。
     彼の話をするときは一際優しくて無邪気な顔になるんです。悪戯っぽく指さすのが、関係の深さを示していました。話したのはわずか10分くらいでしたが、それでも、彼の人柄と、お相手さんとの関係を図るには十分な時間でした。
    「じゃあ、私もう行くね。彼と」
    「シンだ。新多シン」
     碓氷くんが口を挟みました。
    「シンくんと仲良くね」
    「ああ。お互いな」
     改札の向こうから、シンくんの声が聞こえます。
    「アブトー!」
     私は、それに倣って、
    「またね、アブトくん!」
     そう言って手を振りました。アブトくんは、嬉しそうに一瞬翻って、去っていきました。

    「T、あのね、さっきアブトくんに会ってさ」
     待ち合わせ場所に着いて、最初に出したのはさっきの話題でした。Tは怪訝そうな顔を向けました。
    「R、まって。いつから下の名前で?」
    「今」
    「何それ、ずるくない?」
     Tはまだ、アブトくんのことをさっぱり忘れたわけでは無かったようです。やっぱり、謝ってと言ったのは正解でした。
    「まあいいけど。もう吹っ切れたし」
     私はつんとしているTに言いました。
    「アブトくん、付き合ってる子いるって」
    「え」
     残念だけど、Tには敵わない。新多シンくん。Tのその前、S、T、U の、Sだもん。アブトくんの最も大事な秘密のS。彼が学校でシンくんのことを言わないのって、自分だけの秘密にしておきたいからなのかも。まあ、S、T、Uのその前、その前、O、P、Q、RのRが私なんだけどね。
    「内緒だからね」
    「Rが碓氷くんの何を知ってるって言うの…!」
     だだをこねるTに、くすっと笑いました。
    「気分転換だよ、T。新しい人見つけよ」
     私はTの手首をぐいっと引っ張って、交差点へと歩いていきました。

     その後、アブトくんはちゃんとTに謝ってくれました。そのことを真っ先に聞いたのは、Tではなくアブトくんからでした。あの日田端で会ってから、私とアブトくんは連絡先を交換したんです。残念ながら、Tに謝ったって報告からメッセージを交わすことはあまりありませんでしたが。そしてこれは、Tにも秘密でした。だって何か関係を疑われてしまいそうだし。Tを裏切りたくないし。関係良好が一番です。
     卒業するまで、アブトくんに相手がいる、という噂は、具体的には流れませんでした。相手が男性だったのもカモフラージュに役立ったのかもしれません。アブトくんがシンくんのことを積極的に隠したがっていたのかは推測するところでしかありません。でも、なんとなく気恥ずかしかっただけなのかなとも思います。
     アブトくんが誰もが知る有名大学に進み、私も大学生生活を始めた頃。彼から一つだけメッセージが送られてきました。
    『シンと付き合い始めた』
     え?まって。君たち付き合ってなかったの?
     私はひとまず、おめでとう、とクラッカーの絵文字付きで送りました。その後送られてきたのは、はしゃいだことが丸わかりの、ぶれぶれの写真で。そこには、机の隣でケーキを食べながら、シンくんらしき撮影者から顔を隠している碓氷くんが、ぼんやりと映っていて。
    『アブトには秘密 by新多』
     被写体ぶれぶれで、顔も隠していて。まるで、この手の内側の素顔は自分だけの秘密だ、って言ってるみたいでした。
    『お幸せに』
     私が入っていいところじゃないな、と思って、わざと素っ気なく打ちました。
     きっと、ここからは2人だけの秘密です。ケーキの写真はいつの間にか消えていました。私は送られてきた山手線のスタンプに既読だけを付けて、画面を閉じ、もう一度心から、おめでとう、そしてお幸せに。そうつぶやいて、小さな秘密をそっと胸に仕舞いました。
     ひとまずこれが、私が知っている、碓氷アブトくんが学校では見せない裏の顔。天才で運動神経が良くて孤高なアブトくん。そんな彼の、普通で、大切で、些細な秘密の話です。
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