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    アルミ

    @alumihilum

    碓○ア○トくんを性的に見ているだけの一般人。シンアブ&モブアブ。 9割不健全
    NTR/BSS/女装/男性向け

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    アルミ

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    今度出すかもしれないやつの冒頭です 未推敲 36話バッドエンド軸の🆕と🔧のお話(CPなし)です

    かくして英雄となる※注意※

    ・36話でシンがアブトに敗れた世界線
    ・死ネタ
    ・捏造過多

















    悪を討ち、少年は英雄となった。




    「彗星が地球に落ちる確率っていくつぐらいだと思います?」
     男の白い息が結露となり、寒空に舞い上がった。
    「どうだろう。100万分の1とかかな」
     もう1人が答える。
     星々は明滅しながらそこに留まり続けている。岩石の歪な物体よりも、イルミネーションのライトの方が似通って見える。だが、あれが落ちてくるときには、きっと途方もなく大きく、自分たちなど一瞬で飲み込まれてしまうのだろうと彼は思った。
    「25万分の1です。これって、多いと思いますか?少ないですか?」
    「多いんじゃないかな」
    「だって、25万ですよ」
     大げさに強調されると、どうも大きすぎるように思えた。
    「微小確率の過大評価です」
    「ほう」
    「人は小さい確率を自然と多く感じてしまうんです」
     男はふうん、と顎に手を当てた。
    「フェルミのパラドックスって知ってますか」
    「エンリコ・フェルミですか」
     片方の男は天文学者の端くれであった。
    「そうそう。フェルミは、この宇宙には数十億の星があって、地球外生命体が存在する確率はかなりあるはずなのに、どうして地球には一人も到達していないのかと言った」
    「紛れているのかもしれない」
    「そうかもね」
     眼鏡の学者は考古学者であった。彼は右左を見回した。黒々とした林がしんと広がっている。
    「いました?」
    「目が良くないから」
    「レンズ厚かったら見えましたか」
    「違う世界が見えてしまうかもね」
     駆け出し天文学者は大口を開けて、からからと笑った。彼は博物学者の空想が好きであった。
    「生命体が地球人だけだとしたら、銀河系だけでも2000億分の1か」
    「もう1人くらいはいてほしいな」
     2人は顔を見合わせて笑う。
    「そしたら1000億分の1だ」
    「ずいぶん上がりましたね」
     天文学者は腕を組み、言った。
    「僕はね、人が希望を捨てないように、脳がね、そうやって確率を多く見積もるんだと思うんですよ」
     古代学者は天文学者が時折見せる、ロマンチズムが好きであった。
    「なるほど」
    「そうだ、新多さん……」
    「あの、僕の名前、キボウって言うんですよ」
     おお、と相手は言った。
    「いい名前ですね」
    「はい」
     手先が凍りそうなほど冷たくなってしまうと、2人は挨拶をしてそれぞれのテントに潜り込んだ。考古学者は寝袋から2度顔をのぞかせて、レンズ越しにくっきりとした空を見た。いまにも自分の瞳に向かって、大きな星々が降り注いでくるように見えた。


    「はい。はい。ありがとうございます。ええ……本当にありがとうございます」
     トキの目蓋はやつすように瞳を覆っていた。リビングに一人佇み、受話器を両手で握っている。スピーカーから流れる不安そうな声色は、深く考え込んでいるせいか途切れ途切れに聞こえた。
    「ええ。はい…5年の初めから。はい、そうですね、6年は……」
     トキは受話器を握り直すと、硬く瞳を閉じた。
    「なるべく行くように説得します。ええ、ありがとうございます。はい、失礼します……」
     がちゃり、と子機を定位置に置くと深々と溜息をついた。掃除機をかけたとき、黒く艶を出すぱんぱんのランドセルが、息子の部屋に大人しく掛けられていたのを思い出す。トキはソファに腰掛け、軽くもたれた。
    「宿題……やったかな」
     学期末は近づいていた。前期の通知表の結果を想像して、母は一人倦んだ。


    「気をつけて」
    「はい」
     長い髪を持った長身の女性は、少年を簡潔な言葉で見送った。彼女はいつもホームに見送りに来た。だがいつも、それ以上言葉を発することはなかった。
     エメラルドグリーンの機体に乗り込み、着席してすぐにハンドルを握る。加速度を上げ、光のトンネルで変身が完了すれば、シンは声を上げて自分を奮わせる。
    「行くぞスマット」
    「いくゼーット!」
     タラップを開ければ宇宙空間が広がり、テオティにはデアボルと呼ばれる、ムカデ状の生物がこちらを見定め襲撃を始める。シンは波を描きながら這い寄るそれの、関節を狙って刃を食い込ませた。
    「後ろだゼット!」
     剣を振り抜き、背後の敵にも斬撃を加える。片手の剣でもう一振りすると、爆破を伴って消滅した。だがこれで終わりではない。彼らの周りにはまだ山ほどターゲットが控えていた。
    「いつもより多いな……」
    「何か異変が起きたゼット…?」
    「来る!」
     突撃してくるデアボルを飛んで避け、背後を取られる前にロケットでターンすると、クロスさせた剣で怪物の胸を斬った。
    「キリがない!」
    「一列に並んだ敵を一掃するゼーット!」
    「よし、行くぞ…!」
     デアボルの大群向かってパワーを溜め、掛け声を上げる。
    「Zグランクロス!!」
     溢れんばかりに光を蓄えるビームが暗闇を貫くと、デアボルは次々と被弾し、宇宙の粒子となって消えていった。
     敵を殲滅したシンがホームに戻ると、子供たちが駆けてきて彼を出迎えた。
    「シン!お帰りら!デアボルは消えたか…?」
     シンはにっこりと微笑んだ。
    「うん、もういないよ。大丈夫」
    「やったら!また平和が戻ったら!」
     子供たちはくるくると回って喜んだ。
    「シンはわっちらのヒーローら!」
     セツラの無邪気な言葉に、シンはどきり、と胸が跳ねた。固まるシンに、セツラは首を傾げる。
    「どうしたんら?」
    「え、ああ、なんでもない…!」
    「今日はわっちらが作った料理があるんら!これを食べればシンもきっと元気になるら!」
     セツラと数人の子供がシンの手を取る。
    「さあ、温かいうちに!」
     シンは子供たちに引っ張られるままユゴスピアの居住地へとついていった。

     セツラと子ども達が自ら作ったのだと自慢げに話す、スープのような飲み物は橙色の鉱石で温められている。このユゴスピアのエネルギーは、ほとんど地下に眠る鉱石が利用されていた。
     ユゴスピアにある全ては地球とは違っていた。だがシンはそれを見ることはなく、食事を早々平らげると、箸を真似たような食器を置いた。
    「ごちそうさま。うまかった」
    「また作るから食べてくんろ!」
    「うん。ありがとう」
     シンは立ち上がり王宮の方を見る。機を待っていたらしく、壁の影からアストレアが姿を現した。
    「今日も会っていくでしょう」
    「……はい」
     シンは奥の部屋に歩み、地下への階段に踏み出そうとする。するとアストレアは立ち止まった。
    「鍵よ」
     アストレアの手には、手のひらほどの大きさの石板が握られていた。渡されるまま持つとずっしりと重い。
    「いいんですか」
    「私は仕事があるの。部屋を出たら王の間に戻してちょうだい」
     アストレアの口元は緩やかに閉じられていた。
     地下の戸の前に着いたシンが石板に刻まれたコードをディスプレイに読み込ませると、重たそうな扉はゆっくりと開いた。歩み、中に入ると、狭い通路の奥に洞窟のような、天井の高い空間がある。不格好に見える岩壁は欠けた洞窟彫刻の名残だった。
     その中心に赤く光る鉱石が置かれていた。煌々と明滅する光は、まるで息をしているようだった。
     シンは歩み寄ると微笑んで語りかける。
    「アブト。元気か?」
     光の具合が変わらないことからすると、反応はないようだった。
    「今日もデアボルを倒したよ。これでしばらく平和になると思う」
     光は落ち着き弱まる。
    「きっと元に戻すからな」
     鉱石が鋭く光った。
    「なんでだよ。お前も、それじゃ息苦しいだろ」
     シンは呆れて笑う。
    「研究所の人たちが、みんな頑張ってくれてる。お前を戻すために一生懸命だよ。確率は少ないらしいけど、オレは信じてる。可能性はゼロじゃないからな」
     光は輝き続けている。
    「…また来るよ」
     シンは鍵を締めると、真っ直ぐ階段を登っていった。
     地上に出てアストレアに鍵を返す。
    「もう帰るのか」
    「はい。明日も学校があるので」
    「…そう。ホームまで見送るわ」
     シンとアストレアはE5のある方角に向かって歩く。数人の子供たちや人々の屈託のない送迎の裏に、冷たい瞳をした人々が隠れている。
    「アストレア様!こいつはカンナギ様を……」
    「シン。行きましょう」
    「アブト様はどこにおられるのですか」
    「救世主の復活を…!」
     シンはそれを一瞥して、軽く手を振り見送りに応え、コックピットに乗り込んだ。
    「……歓迎してない人もいるのでございます」
    「…うん。しょうがないよ。カンナギだって、ユゴスピアでは慕われてたんだから」
     シンはいつも通り発進する。重力負荷が無くなると、スマットは話しかけた。
    「…シンは、ヒーローでいいのでございますか?」
     シンはスマットを見る。
    「前、シンは自分はヒーローになりたいわけじゃない、そう言ってたのでございます」
    「…うん。でも、今はちょっと違う」
     近づいていく青い星を見つめて言った。
    「アブトがどうして救世主になろうとしたのか、それが今ならわかるんだ。テオティの人たちの笑顔を守りたい。オレも、それでみんなが安心できるなら、ヒーローになってもいいんじゃないかって思うようになったんだ」
     シンは瞳を輝かせて笑う。それでも、その光は前よりはずっと弱くなっていて、スマットはモーター音をぐるぐると心地悪そうに唸らせた。

    「シン」
     乾いた青草が頬と脹脛を撫でた。耳障りの良い声が頭上から聞こえ、シンはゆっくりと目を覚ます。
    「アブト……」
     星々がひしめく濃紺の空を、遮るように白銀の髪の毛が揺れる。シンが状態を起こすと、アブトの両手が肩を掴んだ。
    「頼む。オレの願いを叶えてくれ」
    「願い……」
    「分かるだろ、お前なら」
     シンには心当たりがあった。頷いて笑う。
    「ああ」
    「よかった。…お前しかいないんだ」
     アブトは眉を下げて言った。
    「大丈夫だ。みんな助けるから。もちろん、お前もな」
     アブトは肩に置いた手を引っ込めた。
    「オレはお前を信じてる。頼むぞ、シン」
     変電所前の空間は目の前から薄れ、シンの瞼を車窓からの夕日が貫いた。寒気も熱もないのに体が妙に重たい。
     桜島へは時間短縮のため飛行機でのフライトが多かった。だがそれを批判するように、シンが移動中見る夢の中で、アブトが出てくるのはスカイライナーの中で僅かな時間眠ったときだけだった。
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