言えないひとこと(好きのひとこと) こんなに誰かを好きになるなんて、今までにない経験だった。女子に告白されたのは数え切れないし、数人と付き合ったこともある。けれどこんなに胸の奥がちりちりと熱せられるように誰かを愛したのは初めてだった。今までの経験全てが役にたたなくて、本を破り捨てたくなったのは初めてだった。そしてまだ二十年も生きていないのに、きっと自分の人生のほとんどをこの男と過ごすのだろうと思ってしまったのだ、俺は。それくらい宜野座伸元という青年は鮮烈な印象を俺に残してしまった。
「熱いな、エアコン壊れた部屋で待機ってのもゼミの先生もひどいよな」
「仕方ないだろう、廃棄区画に行ったのがバレたんだから。退学にならないだけ優しいよ」
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