呪術師の体ってね、この世に残るの、あんまり宜しくないんだ。
バルコニーに並んだ背中がひとつよどめいて動く。
さっきまで一定の頻度で鳴っていたチップスの咀嚼音もそのシュウの言葉の後に段々止んで、静寂の中リビングを歩く飼い猫の首輪の鈴がチリンと響いた。
「だからさ、僕の肉も血も…骨も、何もかも全部、この世に残らないの」
『…燃やすの?全部』
あくまで優しく、真っ直ぐ。空を見上げたまま、お互い目は合わさずに言葉のキャッチボールをする。
この会話がもし本当にキャッチボールなら、きっとボールはボーリングの玉ぐらい重くて、ゆっくりゆっくり二人の間を転がりあって、時々受け止めるのに失敗して痣になるんじゃないかな。そんな事を他人事みたいに脳みその端っこで考える。
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