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    リゲル

    愛に苛まれる

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    リゲル

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    勘違いしているモブ(ネロ推し)とブラネロの話。

    無題俺は賢者の魔法使いが好きだ。

    パレードだって全部参加したし、メダルも全員分集めた。あまり知られていない、彼らの裏話も知っていたりする。中央の魔法使いカインは、実は騎士団長の場から外部の力により降ろされたこととか、とにかく彼らに関して色々と知っているのだ。
    その中でも、俺の推しは東の魔法使いたちだ。俺が東の国出身なのも勿論あるが、彼らは凛としていて、落ち着きのあるかっこよさがあって、大好きだ。その中でも特に好きなのが、ネロ・ターナー、銀色の箒の青年である。

    彼の髪の毛の色は水色で、目は夕日を閉じ込めたかのように美しい。彼の実際の年齢までは知らないけど、噂話によると東のどこかで料理店を営んでいたという。その店に訪ね損ねたことが非常に残念だったが、カウンター越しにせっせと誠実に働く彼の姿は想像に難くない。俺は密かに彼のことをとても気に入り、応援している。今日もどこかでネロが頑張っているんだろうな、と思うと自然に元気が湧いてくるのだ。うんうん、好循環。

    そんなある日、やっと俺の住む田舎にも異変が起きた。池で巨大化した魚が暴れるくらいの出来事だったが、俺は喜々と急いで手紙を出した。親切なことに、東の魔法使いたちがすぐに駆け付けてくれるとのことだった。ありがたいし、何より、推しの活躍を目の前で見れることに胸が弾んで、とても興奮した。一言くらい交わせないかな、いつも応援しております、俺の自慢です!って、言えたらいいのにな。

    でもやってきたのは東の魔法使いだけじゃなかった。

    俺の知っている4人の東の魔法使いに加えて、もうひとりがひょっこりと顔を出す。知ってるぞ。彼は北の魔法使いで、名前はブラッドリーだ。昔、悪さをしていたが、今は賢者の魔法使いとなっている。でも俺はまだ疑っているんだ。彼のことが書いている小説だって全巻買って読んだが、それでも俺の中の何かが、彼のことを誇り高き賢者の魔法使いとして認めることを拒んでいたのだ。今日この日までは。

    実際に目の前で見た彼は遠くから見た時よりも好青年で、快く魚の討伐を手伝ってくれるとのことだった。彼は銃を扱うので、遠くからの支援が容易とのことだ。

    素直にありがたいと思った。その分、近くでネロの活躍を見れる機会が増えるかもだから。なのにネロは少し悩むような表情の後、こう口にするのだった。

    「……わかった。俺はブラッド…リーくんと後方に回る」

    えっ! なんで!

    前線で活躍してくれるんじゃなかったの!? 確かにカトラリーを降らせるのには後方の方がいいかも知れないけど……。ちょっと残念。そんな俺とは逆に、ブラッドリーは機嫌が良さそうだった。ネロと一緒に行動出来て嬉しいのかな。わかる。俺だってあの立場だったら嬉しいし。羨ましい……。

    俺も何か手伝いたかったが、危ないからってやんわりと断られた。そうだよな、もっと落ち着かないと。でもやっぱりネロの姿を近くで見ておきたい。俺はこっそりと後方組の後に付いていくことにした。

    ネロとブラッドリーは、会話もなくただ目的地まで歩いていた。俺は下手くそながら、草むらに隠れて動いている。幸い、振り向かれたりしなかったのでまだ大丈夫だろう。
    頑張って追い付いていたら、彼らが突然立ち止まった。あれ? ここが邀撃の場所なのかな? と呑気なことを考えてたら、突然、ブラッドリーがネロの手にゆっくりと指を絡ませることだから。

    時が止まり、俺は唖然とした。

    「…てめえ、何考えてる」
    「いいじゃねえか、このくらい」

    ブラッドリーはにやにや笑いながら、ネロをからかっている。なんてことだ…。俺は飛び出しそうになり、必死に我慢した。ネロが怒ってるじゃないか!

    「離せよ……、うちの子たちの支援に回るんだよ、これから」
    「随分とマトモなこと言うじゃねえか」

    やめろおい! ネロが嫌がってるだろうが! 俺は心の中で必死に叫ぶ。ネロは流し目で、うろうろと、とても困っている。その姿を少しかわいいと思ってしまったが、そんなことより北の魔法使いが……。その時、俺はふと、固まってしまった。

    一瞬だけ、ネロと目が合ったのだ。

    ネロは間違いなくこちらを見ていた。俺は息が止まってしまった。仕方ない…、と言いたげな表情のネロは、ゆっくりと、その手に絡み返しつつ、指先でつうっと、ブラッドリーの掌に触れるのだった。そしてすらりと、円を描くように、指先でカリカリと掌を引っ掻いては、離れる。ネロはもう俺を見ていなかった。

    囁くような、ハスキーな、俺の大好きな声が聞こえてくる。

    「……あとでな、今は勘弁してよ」
    「おうおう、勘弁な」

    ……えっ?

    そして彼らはそれぞれの方向に散っていった。俺の目の前からネロが遠ざかっていく。

    遠く、遠く、遠ざかっていく。

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    44_mhyk

    DOODLEアニバネロのカドストについて真剣に語る。(ブラネロの民である私による妄想込み)まず…
     先陣を切って怪我をしたシノにネロが重ねたのは「ブラッドリー」だよね。
     重なって、そして、その上で、そんな怪我をするような無茶を一人でしてしまうシノを心配して表情を曇らせたヒースに、自分自身を重ねたのかなと思う。

     もちろん、それに加えて一人で倒してやる、みたいなやり方への心配が年上の魔法使いとして加算されているのはあるだろう。

     些細なことだけど、このまま重ねていくと、いつかは……。
     思い起こされるのは、自分の中で積み重なり抱えきれなくなったあの頃の苦しみ。
     ああなってほしくない。仲良く寄り添う二人だから。
     自分は、きっと、離れて忘れようとして、「後悔」したから。
     そんな思いでつい、普段の自分なら思っていても口に出さないであろう余計なひと言をシノに投げてしまった。という感じではないだろうか?

     シノが花束を作って(ヒースと相談をしたんだろう)謝りに飛んできた時、ネロの脳裏によぎったんじゃないかな。
     ネロを怒らせたブラッドリーが、オリヴィア・レティシアを手土産に機嫌を取りに来たあの頃のことが。
     シノは、ブラッドリーよりもわかりやすくて素直だから、彼を通してブ 1421

    zo_ka_

    REHABILI大いなる厄災との戦いで石になったはずのネロが、フォル学世界のネロの中に魂だけ飛んでしまう話1俺は確かに見た。厄災を押し返して世界を守った瞬間を。多分そう。多分そうなんだ。
     だけど俺は全て遠かった。
     ああ。多分、石になるんだ。
    『ネロ!』
    『石になんてさせない』
     ぼんやり聞こえてくる声。クロエと、後は、ああ……。
    『しっかりしろ、ネロ!』
     ブラッド。
    『スイスピシーボ・ヴォイティンゴーク』
    『アドノポテンスム!』
     はは、元気でな、ブラッド。早く自由になれると良いな。囚人って身分からも、俺からも。
    『ネロ……‼‼』
    「……」

    「なあ、ブラッド」
    「何だよネロ」
    「今日の晩飯失敗したかもしんねぇ」
    「は? お前が?」
    「なんか今日調子がおかしくてよ。うまく言えねぇんだけど、感覚が鈍いような……」
    「風邪か?」
    「うーん」
     おかしい。俺は夢でも見てるんだろうか。ラフすぎる服を来たブラッドがいる。それに、若い。俺の知ってるブラッドより見た目が若い。傷だって少ない。
     何より俺の声がする。喋ってなんてないのになんでだ?
    「ちょっと味見させてくれよ」
    「ああ、頼む」
     体の感覚はない。ただ見ているだけだ。
     若いブラッドが目の前の見たことのないキッチンで、見たことのない料理を 2283