無題どうでもいいこと、どうでもよくないこと、何もかもをきっかけに、何百年も口喧嘩をしてきたんだ。もう飽き飽きだというのについカッとなってバッと吐いてしまう。ネロは目をかっぴらいて、よく知る憎たらしい顔を見ていた。これ以上何か言ってくると言うのならグーで殴ってやるつもりでいた。なのに、は、と、気の抜けた息が漏れてしまう。
しがみつくように抱きしめられたのだ。
ブラッドリーは、さっきまでの勢いはどこへやら、ネロの背中に腕を回して、溜息をつくように呟く。
「…正直言って、てめえがどうして怒ったのか分からねえ」
「……喧嘩売ってんのか?」
「ちげえよ、逆だよ、それでも喧嘩したくないんだよ」
呆気を取られる。咄嗟に、言葉を返す。
「ならどうしたい」
「普通に話していたい」
「バカじゃねえの」
嫌になる。こっちだって突き詰められてんのに、ズル過ぎる。
逃げ出したくなる。中身のやわっこいところなんて、見せないで欲しかった。
「…分かったから、離せ」
「離したら、行っちまうだろ」
「ああ行くさ! もういいだろ!」
そう、話を聞いてやるつもりなどない。顔も見たくない。訪ねたって、ドアなんざ開けてやるもんか。ネロはかさぶたを剥がすように、絡んだ腕を何とか解こうと藻掻いた。耐えられない。ああほら、この顔。なっさけない顔、悲しそうな、寂しそうなこの顔。
「なあ相棒、悪かった」
本当に嫌になる。
こっちが言いたいよ、許してって、もう許せって乞いたいよ。