真夜中の迷子 いつもくだらない事で突っかかってくる嫌な奴だった。
本気で腹を立てても殴ることもできず、舌を出して遠ざかって行くムカつく顔を見つめるしかできなかった。
一年の時にこの学校を逃げ出さなかったのは、あの顔を一発殴りつけてやりたいという理由も大きかった。
「なんかおかしいんだけど」
硝子に診てもらってくると言い出して、当たらないのに怪我をするわけがないだろうと、全方向に甘えたがるお坊っちゃまがとうとう同級生にまで甘えだしたのだと思って二人で入っていった部屋の扉に聞き耳を立てた。
「……、な奴が……、……つれ…る……痛くて……」
「管轄外だ。本人に言え」
性格に似合わないモソモソと聞き取れない言葉をピシャリと一括した硝子がガラッと扉を開けると、間抜けな俺と目が合い、顎で入れと示されそのまま位置を入れ替わった。
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