1.
「死になさい」と、そのひとは言った。
震え、かすれ、遠く離れた潮風にも吹き飛ばされそうな程の、か細い声だった。
サーヴァントは夢を見ない。
エーテルで紡がれた体は肉感を伴うだけの残像だ。虚数物質で以って構築された意識に新たな創造は許されない。少なくとも遺して往けない。生者の役目を奪うことを、どうやら僕たちは禁じられている。
そういうもの、としか説明できないことに理由を求めるのは性分だ。
霊核を取り巻く極小の第五架空要素、それらが形作る多能性幹細胞に酷似した物質、そこから生まれた意識こそがこの僕である。
結局のところは仮初の存在、知覚されるために纏った記憶形状型の外殻は僅かな刺激で形を変えてしまう。
例えば祈り。
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