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    MenthoKATOU

    @MenthoKATOU

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    MenthoKATOU

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    こういうまんがが描きたかったけど長いので以下略。
    針磁石の馴れ初め話でもある。
    勢いだけで書き出したので加筆修正したすぎ~

    【岩男3】宇宙渡航前夜の話【針磁石】 深夜。
     日中は人間もロボットも入り混じって忙しく働いていた作業現場は、いまは闇の中で静まり返っている。
     格納庫の中心に物言わず佇むのは上半身のみの巨大なロボットで、周囲には作業用の足場が高く組まれている。
     キャットウォークの上を照らす数個のライトが、そこに二体のロボットの輪郭を浮き上がらせていた。

     
    「いよいよ明日だな」
    「…………」

     
     赤と青のロボット達は、足場の上から巨大なロボットの頭部を見下ろしながらE缶を啜っている。
     もっとも、青い方は手に持っているE缶にまったく口を付けていなかったし、しゃべっているのも赤い方だけだった。

     
    「……いいひとたち、だったよなぁ」
    「…………」
    「博士も、ロックマンも他のライトナンバーズたちも。みーんな気がよくて、優しくて」
    「…………」
    「それも、明日には全部おしまいだ。みんなオレたちの敵になる」

     
     赤いロボットの口調は終始変わらず、世間話のような調子だった。
     青いロボットはやはりしゃべらない。

     
     世紀の天才Dr.ライトとDr.ワイリーによって、世界平和のために共同開発された巨大ロボット「γ(ガンマ)」。
     その稼働エネルギーを確保するために、未知の惑星に赴く8体のロボット達。
     平和な世界の更なる発展のために、栄えある航路へ旅立つ天才二人の寵児たち。

     世界中でただ自分たちだけが、何もかもが嘘で茶番だと知っている。

     
    「しかしガンマのやつ、こうして見ると、結構間抜けな顔してるよな。一応世界の救世主ってテイなのに」
    「…………」

     
     創造主のうち、一人の裏切り。
     自分たちロボットは抗うことは出来ない。
     創造主の片割れに警告することも助けを乞うこともできないまま、こうしてその時が来るのを待つだけだ。
     何もかもが終わるときを。

     赤いロボット……マグネットマンはE缶に口をつけ、ちびりと中身を飲んだ。
     視線は救世主の頭部に投げかけたまま、これもほとんど世間話のような調子で零した。

     
     「これでおしまい、なんて嫌だな」


     誰に宛てるでもない呟きは格納庫の暗闇の中に吸い込まれ、落ちていった。

     マグネットマンが何気なく横を見やると、予想外にも目線がかち合った。
     それどころか、青いロボット……ニードルマンはじっとこちらを見据えているではないか。
     その青い目に浮かんでいるのは怒りが半分、呆れが半分、のように見える。

     
     「終わり、だ? さっきからお前は、今までが終わればすべてが終わるみたいな調子だが……」

     
     ニードルマンが一歩踏み込んでくる。マグネットマンはこんな剣幕の彼を見たことがなかった。
     
     
     「間違えるな、これからがやっと始まりなんだ。まだ何事も成し遂げちゃいないんだぞ俺たちは。
     エネルギー獲得のために製造されて、ワイリー博士に全て狂わされて、……それがなんだ?
     今までの日常が狂わされることより、こうして造られたのに何も成せないまま終わる方が余程嫌だ!」
     
     
     毒舌家で、少々陰険なのかとさえ思っていた。それが、こんなにも感情を露わにして、未来と生命の話をしている。
     
     
    「だから、俺はやり通す。決意をもって。お前らも覚悟を決めろ。これからが始まりって覚悟をだ。」

     
     ……お前ら?

     
    「……ああ。ああ、そうか、そうだった……。他の仲間は、どういう心持ちでいるだろう……」
    「知らん。どんな心持ちでいようが、もう一人もこの計画からは逃がさん。兄弟なんだからな」
    「ええ?」

     
     まさかこの男から兄弟なんて言葉が出てこようとは。毒舌家の彼とは違い、他のメンバーとそれなりにうまくやっている自分ですらその意識は希薄で、目の前の男を兄だと思う瞬間だって皆無だったのに。

     
    「……はは。あんた、こんな兄貴肌だったんだな……知らなかった」
    「俺だって世話を焼かされるのは好きじゃない。こう振る舞わされるのはお前らが頼りないからだと自覚しろ」
    「ははは」
    「ヘラヘラするな」

     今更気付くなんて呆れた話だが、自分には兄弟がいたのだ。裏切れない兄弟が。
     下には騒がしくて、どいつもこいつも面白い連中が6機。ひとつ上にはおっかなくて、頼りになるのが1機。
     失った代わりに、とは思わないが、それでも一緒に困難な船旅を乗り越えていく人員としては十分だ。
     
     これから、オレの人生――ロボット生というものが、ようやくはじまるらしい。

    〈了〉
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    Replies from the creator

    MenthoKATOU

    MOURNINGぱなみさんとネーム交換させてもらった汽車星のおはなしの、そのまた前身のおはなしです。ネームにはここまで描いて放ってあり、それを文字起こししたものになります。
    タイトルはぱなみさんが漫画本文内で素敵な解釈をして下さってたのでお借りした概念です
    星のかけらを食うロボットの話 水で満たされたピッチャーとカラフルな英字に彩られた箱が机の上に乱暴に置かれた。
    ガラガラと箱の中身が白いスープボウルの中に注がれる。いくつもの黒い石の塊がボウルの中で山盛りになる。
    赤い機体はそれをスプーンですくって口に運んだ。ボリボリ、ゴリゴリと、石を食んでいるとしか云えない硬質な咀嚼音が響く。
    ひとさじ、ふたさじ。三さじ目を頬張りながら赤い機体――チャージマンはピッチャーを呷り、中身をぐびりぐびりと半分ほども飲み干した。

     この食事風景を眺めていた者たちがいる。同じくエネルギー補給を行っていたチャージマンの兄弟機、総勢七名である。
    彼らのエネルギー補給はチャージマンとは違い、ロボットに必要なエネルギーが濃縮されたE缶を啜ればそれでおしまいだった。だから彼らにとって、大量の石炭と水を腹の中に詰め込むチャージマンの「食事」は一種異様な光景に……云ってしまえば、動物園のゾウが大量の干し草を食べるところを眺めるのに似ていた。
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