今日何度目になるかわからない、クラージィからのまじまじとした視線を受けて、「もういいだろう」とノースディンは軽く目を逸らした。だがクラージィは目を合わせていたわけではなく口元を見ていたので、ノースディンの反応を気にしていない。変わらぬ視線を感じる。
「もしわたしが直毛で現れたら、お前はずっと気にするだろう。それと同じようなものだ」
それを言われたらノースディンは相手の態度を拒絶できない。
今日のノースディンには、口髭がなかった。
稀に思い出したように、髭のない顔がどうなのかと雑談で出されてはいた。それをこちらもふと思い出した折、ほんの気まぐれで髭を落として来訪を迎えてみたのだが、当然というか、彼の視線はノースディンの顔にずっと釘付けだった。
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