依存性父は優秀な医者だった。
医学に対して常に誠実であり、いつまでも勤勉で、最期の時まで医療に心を尽くす人格者だった。病や怪我でうちの病院をたずねる者は皆、父を慕っていたように思う。
父は、毎日のように医療に関する知識や心構えをローに説いてくれた。その頃のローはまだ、両親の病院を継ぐものだと信じて疑わなかったから、父の話を一言一句懸命に聞いていた。
「煙草は百害あって一理なし」
父はよく、そう口にしていた。
喫煙は心配機能を低下させ、肺がんのリスクを高める。その上歯に着色汚れがついて外見にも悪影響がある。それなのに、依存性が高くやめられない。正しく百害あって一理なしなのだ。
「じゃあ、なんで大人は煙草を吸うの?」
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