明日雨らしい ふと目が覚めて、薄暗い洞窟内の澱んだ空気を吸う。日が昇ってもいないのに目が覚めてしまった。閉め忘れた岩戸から波の音が聞こえる。
マトリフは寝床を抜け出して洞窟を出た。空はまだ夜の色をしている。波が岩に砕けて、その雫が足元に飛んだ。
目が醒めてしまったのなら釣りでもするかと釣竿を持って出たが、舟まで出すのは億劫だった。その辺りの石をひっくり返して虫を見つけて釣り針につける。適当な岩に座って釣り糸を垂らした。
「随分と早起きだね」
その声に振り向けばガンガディアが鍋を持って立っていた。近くの森に住むガンガディアはよくマトリフの洞窟を訪れる。その際に料理を持ってくることが多かった。
「いい匂いだな」
「教わったスープを作ってみたのだよ。あとで味見をしてくれないか」
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