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    zirosan_

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    【卍/ふゆばじ】
    夏SS

    メルティソーダ パキン。音を立てて割れたアイスは歪な形になってしまった。片方の先がもう片方に持っていかれている。割り箸をうまく割れなかった時のようなものだ。当然オマケが付いた方を場地さんに差し出した。
     「千冬ぅ。今日ヘタクソだな」
     場地さんはオレの短くなったアイスと自分に差し出されたものを見比べて笑う。すみません、とオレも笑った。
     自分の分を齧ると、すぐに棒に歯が当たる。先の部分は殆ど場地さんの方に行ってしまったらしい。爽やかなソーダ味が口の中に広がって、茹だるような暑さがほんの少しマシになった気がした。
     「あれ、どうかしました?」
     アイスを見つめたままの場地さんに声をかける。既に表面が溶けかけているので急いで食べないと落ちてしまうと思った。
     場地さんがこちらを向くのに合わせてポニーテールが揺れる。涼しげな首元には汗が光っていた。見惚れているうちに場地さんがそのオマケの部分に齧り付いて、
     「え」
     冷たい唇が自分のものと重なった。すぐに氷の塊が……塊と、ぬるりとした舌が、口に入り込んでくる。目の前に長いまつ毛に彩られたヘーゼルが見えた。ドッと体温が上がって、口の中だけが冷たい。やわく刺さっていた八重歯が離れて、やっとソーダの味を感じることができた。
     顔を真っ赤にしたまま呆然としているオレに、場地さんは少し照れ臭そうに笑う。
     「半分コもオマケ付き、ナ」
     堪らなくなって抱きしめそうになったけど、溶ける前に食えと言われてしまったので、ポタリと地面にシミを作り始めたアイスを口に運んだ。
     空いた手を場地さんの指に絡めてみると、ピク、と震えた後握り返してくれた。長い髪に隠れていない耳が少し赤いのは暑さのせいじゃ無いと思う。手を繋いだまま溶けかけのアイスを完食して、今度はこちらから口付ける。冷たい唇と冷たい舌、熱い指先の温度も半分コしてしまった様だと思った。
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