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    nowtblnolife

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    nowtblnolife

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    初夜後にセンシティブな🦌を気遣う✳️が気に入らない🦌です。

    たぬきんお疲れ様でした。パワーをもらいました。

    初翌日掠れた声が名前を呼ぶので、見ていた夢を忘れて目を覚ました。日はとうに上り雨戸の隙間から部屋の奥まで差し込んでいる。
    「寝過ぎた」
    そう言った自分の声まで掠れていて、鼻を掻いたふりして咳払いする。昨日おれを抱いた男が困ったように目を逸らして俯き、たぶん謝ろうとしたので、溜め息の前に二の句で止める。
    「お早う、門倉」

    門倉に雨戸を開けさせて、おれは二組の布団を上げる。澄み切った朝日が門倉の輪郭に輝いて眩しく、そこでようやくいつもの額当てが夜に外れたまま布団と共に片付けてしまったことに気づいて押し入れを改めた。
    朝飯の支度ができなかったので、乾飯と適当な山のものをまとめて鍋で温める間に土間と続き間の掃き掃除を済ませ、道具を磨き、こそこそとイナウを作って火を招くのが遅くなったことを詫びた。ふと、昨晩の行為を咎められるだろうかとどきりとするが、カムイたちはそんなことまで怒りはしないだろう。婚前のふしだらを糾弾するのはたいてい人間だ。火に当たった頬が乾燥して痒い。顔を手で覆いながら背が丸まっていく、朝からあまり良くない。あぐらの座り心地が悪く、今日は敷物が欲しかった。門倉がたまに敷いている座布団を借りようと顔を上げた時、門倉がのそのそと囲炉裏端にきたので反射的に腰をあげる。
    「もう食えるぞ。注ごうか」
    「うん。座っとけ、運ぶから」
    え、と言う間にぬるりとキラウㇱの横を通り過ぎた門倉は、ぺたぺたと土間に降りて食器やらを一まとめにする気のようだった。「今日は何?」と土間から呼ばれたのに、「適当に煮た」と答えに出た声はあまりに小さかった。
    「いいね適当。おまえのはなんでもうまいよ」がしゃがしゃ、がしゃんと雑な音の合間に聞こえた独り言が現離れしていて、まだ夢の膜に包まれている気分になる。夢かもしれないから手の甲に爪を立てて抓ったが普通に痛く赤く残った。
    朝食だか昼食だか分からない時間に適当な飯を食い、だらだらと任された雑用をしていると他の仲間が戻る時間になりそうだった。ちりちりとした焦燥感にキラウㇱの気持ちが逸り、畳に新聞を広げた門倉に躙り寄ると「どうした」と顔をあげてくれた。それだけで飛び上がるほど嬉しくなる。門倉に伝わったのか困ったようにくしゃりと笑う。新聞の邪魔をしたくないので、「抱っこさせてくれ」と手を広げると門倉は喉でくふくふ笑った後にわざとらしいほどゆっくりと背中を向け、ちょっとずつ後退してキラウㇱの懐に収まってくれた。毎日着ている半纏が中々臭い。今日門倉が寝具を洗濯していたから、まとめて洗えばよかったんだ。門倉の背中に貼り付き原に手を回して抱えていると頭が重たくなって肩に寄りかかる。慣れた臭いに体温が落ち着き無言になってしまった。その実、気持ちを言葉にするのは真綿で出口を絞めるように禁じられていて、他に何と言って気を利かせようか迷っている。臭いだの体が痛いだの、誇張した悪態は今の気分でなかった。
    「なんて、書いてある」
    新聞に水を向けると門倉は見出しをいくつか読み上げて、それから「今日は収穫なしだな」と溜め息をついていた。口角を下げると首にも皺が寄る。柔らかい皮膚が形を変えるのに薄ら色を感じて目を逸らし、遠い新聞に視線を落とす。
    「門倉、下、読んでない」
    「広告だもの。函館の映画館で特別開催だとよ」
    「ふうん」
    「欧米からフィルムを取り寄せて連続上映だと。結構ちゃんとしてら」
    そうか、と気のない返事をして会話の尻尾を掴もうとする。門倉は機嫌良く函館やら映画やら話題を広げてお喋りだ。雰囲気を悪くせずに「もういい、離れよう」と言う暇もない。自分の方にも、欧米ってどのあたりだとか、映画と活動写真は違うのか、門倉は見たことあるのか、言いたいことはたくさんあるのに。自分勝手な苛々が募って、門倉の腹に回した手を脇にひっこめて揉みしだくように擽ることにした。
    「うおっ!…何だよ、いきなり」
    「長話、飽きた」
    「お前がくっついて来たんだろ、このっ」
    もつれて転がり、いつも通りに笑い合っているようでお互いの間にごわごわとした違和感が挟まっている。少なくともキラウㇱは好いているのに、気持ちを言葉に乗せられないのは気持ちが悪い。門倉にそんな気がないのなら一発殴って軽蔑するし、似たような気持ちでいるなら喜ばしいだけではないか。自分ばかり我慢しているようで腹が立ってくるが、門倉は、和人は気持ちも意見もあまり言わないし門倉はさらに黙り慣れていると聞くから、もしかしたら門倉も我慢しているのかもしれなかった。我慢比べと思えば少し興味が湧いたから、仕方なく譲歩することにする。門倉の寝技が決まり姿勢が固まる。
    「降参か」
    首をひねって、得意げに見下ろす面差しを見上げる。目が合うと揶揄うように顔を近づけ、ふうと耳穴に息を吹き込んで逃げられた。
    「気持ち悪いッ!耳の穴も弄るのか」
    ひひひと悪い顔で笑う門倉を追いかけ倒し、勝ったと見下すと門倉は笑みのまま「降参」と両手をあげて、わざとらしく息を切らした。キラウㇱの腰をポンポンと叩いて降りるように促す演技臭さにむかっ腹が立ったので、腰を下ろして体重をかけ悲鳴を上げさせたところで、外出組が帰ってきたからやっと大声で笑ってやった。
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    recommended works

    さわら

    DOODLE貴方はさわらのアシュグレで『ひねくれた告白』をお題にして140文字SSを書いてください。
    #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/375517
    140字を毎回無視するやつ
     口付けるように指先が額に触れる。
     普段は重く長い前髪に隠れたそこを皮膚の硬い指先がかき分けるように暴いて、するりとなぞる。
     驚くように肩を揺らした。けれどそれ以上の抵抗らしい抵抗はできない。ただされるがまま、額をなぞる指の感触に意識を向ける。
     アッシュの指がなぞっているそこには、本来であればなかったはずのものがあった。ある時から消えない傷となって残り続けているそれは、過去のグレイとアッシュを同じ記憶で繋げている。
     アッシュがこちらに触れようと伸ばしてくる腕にはいつも恐怖を覚えた。その手にいつだって脅かされていたから、条件反射で身が竦む。けれど、実際に触れられると違うのだ。
     荒々しいと見せかけて、まるで壊れ物に触れるかのような手付き。それは、本当に口付けられる瞬間と似ていた。唇が触れ合ったときもそれはそれは驚いたものだけれど、最終的にはこの男に身を任せてしまう。今と同じように。
     乱暴なところばかりしか知らないせいか、そんなふうに触れられてしまうと、勘違いをしてしまいそうになるのだ。まるで、あのアッシュが『優しい』と錯覚してしまう。
     そんなはずはないのに、彼からはついぞ受け 2766

    sheera_sot

    DOODLE頭が煮えるほどあつい火曜日、閉店間際のスーパーで永遠の向こうにあるものに気がついたことの話をしてください。
    #shindanmaker #さみしいなにかをかく
    https://shindanmaker.com/595943
    こちらで書いたものです。バンユキだけど万理しか出てこない。
    バニラアイスが溶けるまで 見切り品の野菜の棚から少しくたびれた小松菜を手に取る。煮浸しでなら食べられそうだし、野菜しか食べない線の細いあいつには丁度いいおかずになる。自分用に半額シールの貼られた唐揚げもカゴに入れてレジに並ぶ前、冷凍ケースのアイスクリームがいやにおいしそうに見えた。
     スーパーを出れば日も暮れているというのに茹だるような暑さが待っている。部屋まで歩いて十分、少し溶けてしまうかもしれないけれど買って帰ればきっと千も喜ぶし。バニラアイスを一つだけカゴに増やして、列に並ぶ。
     俺の一つ前にはワイシャツの男がいて、エネルギーバーと栄養ドリンクだけを持っていた。カバンも持っていないから、多分中抜けして食べ物だけ調達しにきたという感じだ。お仕事お疲れ様です、なんて思いながらちらりと様子を伺う。限界まで緩められたネクタイに少しくたびれを感じるけれど、その目はなんだか生き生きしていた。こうやって打ち込める仕事をその人はしているのだろう。なんだか、羨ましい。
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