「やたら食いついてきたな」
「何が?」
「俺を買うだの売るだの、客席からのレスポンス」
「あー」
一人一部屋割り振られている深幸の部屋で、来訪するなり「お疲れ様」に続く賢汰の言葉がこれだ。
声出しも解禁という事で、せっかくのMCの時間を盛り上げようと積極的に拾い上げた話題ではあるが、本人から指摘を受け、冷静になってみれば確かに少し食い気味だった気はしなくもない。
「まあ、あれはグッズやその類いの事だろうけどな。そのまま受け取ったのでは面白みがないだろ」
「確かにウケてたけど…てか、面白いとかそんなん考えてたのかよ」
真顔で反応していたステージでの姿を思い返し、深幸は思わず鼻で笑いながら肩を竦める。
その様子を見て賢汰は可笑しそうに口元を緩め、ベッド脇へと腰を下ろし、ぽす、とシーツを手のひらで叩いた。
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