「カッコいい指輪してるね」
ただ歩いていただけで勝手に付いて来た女が、ウルフに声を掛けた。
右手中指につけたフェザーリングは、ニコの魔法が宿っている。浮くだけのくせに癖の強い魔法を、ウルフは使ったことがない。
そんなものに頼らなくても、早く走れるし、高く跳べる。
ケイゴから引き継いで、そのまま指に嵌っていただけだ。
「そうか?」
だから、それに特別な意味はない。
最初に声を掛けたのはウルフだが、次から次へと湧いてくる女の相手が面倒臭くなり、公園のベンチにどかりと座った。
寄ってくる女の相手も悪くないが、適当な反社会組織と戦う方が楽しい。
殆どの女は、ウルフの対応に熱が冷めて去って行ったが、一人だけ残った。
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