落日の境界線 はるか昔、人と人ならざる者は近しい間柄であった。
人は人ならざる者の存在を認識し、畏れ、ときには崇め、良き隣人であろうと努めた。
しかし人の悪心を知らず知らずのうちに吞み込んだ存在は、やがて悪鬼へと変貌し、人々を襲った。
多くの人が亡くなった。
多くの人が涙を落とし、憎しみを芽生えさせた。
それから人は、人ならざる存在すべてを『悪いもの』と定め、これらを排他。認識することを恐れるようになった。
自身たちの罪を、決して見ようともせず……。
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打ち付ける雨が痛い。
口の中がじゃりじゃりと砂っぽくて気持ち悪い。それだけでなく、安っぽい着物も、黒い髪も肌に張り付いて、嫌になる。
濁った水溜まりに足を浸からせて、空を見上げた。
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