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    conpota_tutumi

    @conpota_tutumi

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    conpota_tutumi

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    ライン交換しちゃったから没にしようかなって思った学ハ゜ロ めちゃ長プロット 描いてる途中だかれ、そのうちなにかしら形になるかも 文キモイよ

    三つ編みをし眼鏡をかけるuの様子。しんとした家を出る。
    行ってきます。

    座席表を見るm。
    おっ珍しい!まゆじゃん!
    見てよ、俺らまた同じクラスだぞ!
    おはよ…じゃないか。2人とも寝てないでしょ。
    バレたか。ていうかまゆもでしょ?
    まぁ。でも今日出ないと施設の人に連絡入って面倒だから……
    そゆことね〜
    賑やかな3人とすれ違う、静かに教室に向かうu

    ホームルーム中、LINEを隠れながら打つm。
    進路とかわかんねーよなー、俺ら来年3年とか嘘っしょ
    なー!まじ留年したろかな流石に。
    いや何いうてまんねん笑
    無理か笑
    てかまゆはどうするか考えてんの?
    決めかねてる。2人は?
    俺はとりま進学かな〜
    俺も俺も〜モラトリアム延長っしょ
    は〜まゆの頭脳が俺らにもあったらなぁ〜?!
    2人はただ勉強してないだけでしょ。すぐ学力テストあるよ。
    ウッ……
    😇
    では委員会を決めます。自薦……はないわよね。じゃあ他薦募集します。誰かー?
    ぁ、やべ、存在感消しておかないと。
    いやふわっち推薦は悪ふざけでしょ笑
    明那、清掃委員会になれ清掃委員会になれ清掃委員会になれ(※清掃委員会1番めんどくさい)
    ヤメロヤメロヤメロ!フラグたてるな!


    なに、
    まゆ図書委員まゆ図書委員まゆ図書委員
    突然なに。ていうかなんで俺?しかもなんで図書委員?
    や、まゆ今
    え、なに?

    はい、それでは黛くん、お返事がないのでOKって事でいいね!?
    え?
    ケータイから目を離し教壇を見ると、担任の郡道先生が黒板に図書委員・黛灰と書いているところだった。
    ふと前を見るとルイスがこちらに向かってピースしている。
    どうやらいたずらで図書委員に他薦され、しかも俺は拒否するタイミングを逃したらしい。
    あーあ
    放課後サボれなくなちゃたねぇ
    まゆまーゆぅ
    😡

    図書委員のはじめての集まり。
    本当にたまたま、いつもだったら学校に登校せず施設のことを手伝ったり、そのほかにも色々とあって委員会になんか出る気はなかったのに、何故か、気が向いて出席してみた。
    ペアになったのは一つ下の学年のメガネでおさげのu。
    いかにも図書委員らしい見た目の彼女は、しゃべってみると思ってたよりはつらつとして、そしてmを振り回す。
    ある日図書委員のシフトで放課後に訪れたmはメガネとおさげをとったuに出会う。
    知らないふりをするuに、いや誤魔化せないでしょ。と、腕を掴む。
    普段の雰囲気と違いほんのり化粧をしているように見える、明るい見た目の彼女に訳を問うと、実はアイドルになりたくて研修を受けているという。
    誰もいなかったし、いいか、と歌の練習をしていたというu。
    お願いします、このこと黙っててください…!
    いいけど……。
    っ本当ですか!黛さんが優しい方でよかった……!
    じゃあまぁ、とりあえず、他に人来るかもだし、眼鏡かけたら?
    あ、そうですね。そうします。
    ふふ、じゃあこの事は2人だけの秘密、ですね。
    これからよろしくお願いします。
    言い方。こちらこそ。どーぞよろしく。

    それからuに対して興味が湧いたmは頻繁に図書室に顔を出すようになる。
    施設の事情もあり、不登校気味、来ても保健室登校だったのが教室に顔を出すように。
    mの家が施設のため、夕飯の買い出しに駆られて出られないタイミングが訪れる。
    それを聞いたuは、私も手伝いますよ!と、意気込み2人で買い出し→施設へ。
    施設に帰ると、子供たちと独自のハンドサインで挨拶を交わすm。
    え、すごい!全員分覚えてるんですか?
    まぁね。そんな大した人数じゃないし。
    それでもすごいですよ……!えー、いいなぁ。
    いいなって。ういはもうちの子になったら考えてあげるよ。
    えぇー!なんですかそれ〜。
    とかなんとか話していると、子供が遊んで欲しそうにuの裾をつまむ。
    お姉ちゃん、あそぼ!!
    じゃ、子守よろしく。俺晩御飯作るし。
    えっ黛さん!?
    子供と遊んで踊って歌うu。
    子守は得意なようで、その間にmは料理を手伝ったりなんなり。
    たまたま施設に訪れていたkさんがuを見る。
    あれ、mさん、あの方は…?
    あぁ、同じ委員会の子。成り行きで上げてる。
    …なるほど。珍しいですね。
    そう?
    はい、そうですよ!……いい友達ができましたね。
    ……友達ではないかも。
    え?あんなに楽しそうに話していたのに?
    手で口元を隠す黛。
    俺、そんな顔してた?
    珍しく動揺する黛に驚く加賀美社長。

    ---

    夏。uがオーディションを受けるという。元々研究生だったが、ユニットメンバーに入るための試験が行われるため、課題曲とダンスを叩き込むのだと。
    見るだけしかできないけど、感想とかいる?と返すmに、はい、mさんの意見が聞きたいです!と元気な返事。
    素人なりに考えを伝えるm。なるほどと意見を汲み取るu。今日も学校の後練習なので、先生に聞いてみます!明日また見てくださいね!
    と、にこりと笑い出ていくu。
    それから1週間、図書室は練習場となっていた。
    練習が続く日々、教室の窓からuが見える。ふと目が合う。
    パチリとアイドル笑顔とウィンクを送ってくるuに、あぁ、本当にアイドルなのだな。と納得するm。
    努力を楽しむuにアイドルとしての素質を感じながら、オーディション当日となった。

    オーディションの次の日。
    珍しくmだけが1人図書室にいる。
    uが当番をサボるのは珍しくて、どうしたものかと携帯に手を伸ばすも、連絡先を交換していないことを思い出す。
    アイドルの彼女を応援するのならば、超えては行けないライン。
    改めて、過去にまだ、なんて言った自分を呪う。
    心配になるも、待つことしか出来ず、1人待つ。
    静寂が終わりを迎え、下校時間になるもuは来なかった。
    雨の中、帰る。
    施設の前に傘を刺し立つuがいた。
    「u、どうしたの…」
    「mさん、私オーディション、落ちちゃいました。」
    ふにゃと崩れそうな笑顔を見せるu。
    目が合わせられないらしい。
    「後少しが届かなかったみたい。」
    「でも良くても悪くても、mさんに1番に聞いて欲しくって。あ、もしかして今日図書委員の日でしたっけ。サボっちゃってごめんなさい。」
    「……うん」
    「…私、がんばれてましたかね。」
    「うん。」
    「次こそ、ちゃんと、アイドルになれますかね……」
    「大丈夫。」
    「っ、mさん…」
    「uは俺にはもうアイドルに見えるよ。」
    「……っ!!」
    「uは施設の子を何人も笑顔にしてる。もう立派なアイドルだと思う。」
    「……っ」
    「…オーディション、お疲れ様。」
    少しだけ微笑むmと、やっとmと目を合わせられるようになったu。
    突然傘を畳むu。
    「え、u」
    「あー!雨が冷たいなー!」
    「ちょ」
    「んーーー!!気持ちいいーー!よぉし、次頑張るぞーー!!!えいえいおー!!」
    「風邪、風邪ひくから。」
    傘を差し出すm。その手を押さえるように掴み…
    「アイドル相羽ういはは…泣きません!!!」
    「!」
    「私はもう、嬉し涙以外、流さないって決めました!!」
    「…」
    「だから、これは全部、雨です。」
    「…ん。」
    「えへへ…ファンの前で泣いてちゃアイドル失格ですし!ね!」ウィンク
    「……うん。ちゃんとファンがいるって、辛くなったら思い出してね。」
    「!!はいっ!…へくちっ」
    「で、まぁそうなるよね…」
    「2人とも〜「!!」
    「とりあえず中、入ったら?」
    あ、お邪魔します〜

    ---

    秋。
    文化祭の季節に。
    今年も中央のステージの出し物を決めることになる。
    時間ごとに区切られており、3日開催される日の中で日毎に割り振られている。
    1日目は2年生が行う演劇。
    2日目は部活動の出し物。
    そして最終日のオーディション制の自由枠。
    ふと、uはでないの?と提案するm。
    が、そんなの恥ずかしいですよぉ!といつになく気弱な姿勢のu。
    珍しいな、理由があるかこれは。と感づくm。
    学校にアイドル相羽を見せたくない人がいるとか?
    …………
    図星か……。
    やめて!勝手に推理しないでくださーい!!
    まぁ無理にとは言わないけどさ。せっかく大人数の人にパフォーマンス見せられる機会だし、もったいないきがするけどね。
    …ですよねぇ……。
    そのあとオーディション受付せず数日経つ。
    uはmと図書委員をこなしているも、まだ迷っている様子で。
    一線を超えるm。ここら辺で喧嘩しておきましょう。
    u、いいの?オーディション。
    ……。学校のステージに立ったら、私がアイドルに憧れてるの、バレちゃうじゃないですか。
    ?ういはにとってアイドルは隠すものってこと?
    違います。
    俯くu。言葉を渋るuの気持ちが見えなくて。怒らせるつもりもなく、心配するm。
    今日、どうかした?いつものういはっぽくないよ。
    地雷を踏まれ、ピクリと肩を震わせるu。
    黛さんから見た私って、どんな子ですか?
    いつも明るくて、元気で、ちょっと変わってて……悩みなんてないように見えてますか?
    ういは?
    今日は帰ります。ごめんなさい。
    うい、
    パタン。
    扉を閉めるuに引き留める言葉がかけられないm。
    次の日uは図書館に来なかった。
    オーディション受付最終日。実行委員かつ軽音部の仙河と、音響担当の軽音顧問夢追先生の元にmが訪れる。
    お、オーディション参加者か〜?
    黛じゃん、何歌うの?チューリングラブ?
    いや誰とだよ。違う、ほら、保健室で話してたさ……
    あー、例の図書委員の子ね?黛もそういうの興味あんの?
    あーもう、だるい絡み方だな。
    なるほどねぇ、青春かぁ〜
    話通じないなぁ……。
    んーや、それっぽい子はまだ来てないかもね。
    ん、ありがと。
    まぁ……。元気出せよ。
    本当に適当な励まし方じゃん。ありがとね。
    ……ん、あれ?
    あ……
    そこには眼鏡とおさげのういはの姿が。
    (ペコ
    あ、オーディション参加者?ここに名前ドゾ〜
    はい。(書き
    1年A組相羽ういはさん、ね。出し物は?
    当日演技するのは歌3曲と、ダンスです。
    じゃあ、オーディションって名前だけど気負わないで、本番にやろうと思ってる演技内容をさわりで…1曲だけでいいかな。見せてもらってもいい?
    あくまでジャンルの偏りがないか、とかの判断なだけだから。内容もよっぽどじゃなければ落ちたりもしないし。緊張せずにやってもらって大丈夫。
    はい。
    オーディエンスは……いても平気?
    黛をチラと見るゆめお。
    黛さんなら、大丈夫です!
    目線を合わせてニコ、と笑うu。
    少しほっとするm。
    カラオケ音源とかある?流すけど。
    あ、じゃあこれお願いします。
    ほーい、少々お待ちを〜
    テキパキと音源セットする軽音2人。
    黛さん、この前はすみません。
    ペコリと謝るういは。
    いや、ごめんういは。本当に俺が悪い。踏み込みすぎた。
    ううん、私のわがままで黛さんのアドバイスを蔑ろにしちゃったから……。
    オーディション、失敗しないで終わったら、少しだけお話しするお時間くれませんか?
    セットできたよ〜!合図くれたら流すね。
    はい!眼鏡とおさげを解くu。
    よろしくお願いします!


    オーディション後。近くの公園で、ブランコに腰掛ける2人。
    私実は、アイドル目指してるの家族にも…友達にも言ってないんですよ。
    そうだったの?
    はい。お父さん、忙しくってあんまりお話し出来ないし。
    友達も……中学の時にちょっと話したら、バカにされちゃって。
    母親のことは尋ねない黛。
    うん。
    私不思議でしょうがないんですよ。
    努力もしないで最初から諦めるなんてできるわけないじゃないですか!でも、そう返したらその子次の日からお話ししてくれなくなっちゃって……。
    ………。
    だから高校ではアイドルになりたいって言わないようにしようって、決めたんです。
    それに、どうせ正体バラすならかっこいい方がいいじゃないですかぁ!ちゃんとアイドルとしてデビューしてから、高校デビューしてやろうって思ってたら、もう秋になっちゃった。アハハ……
    確かにね。人生で一回しかない機会だよね。
    そう!そうなんですよ。だからね、大事にしたいなって。ちっちゃいプライドですけど!
    でも今日の2人の反応見たら、もう驚かせるには十分だったと思うよ。
    あはははは、お2人の顔見ました?思わず歌詞飛びそうになりました。ふふふふ
    ね。俺仙河のあんな顔はじめて見た。
    ね!
    ……改めて、オーディション合格おめでとう。
    はい。ありがとうございます。
    絶対見に行く。
    はい!黛さんが思わず歌っちゃうような歌、セトリに組んでおきますからね!
    楽しみにしとく。

    文化祭当日。
    委員会の展示は推薦図書の紹介のみで、適当にやった2人。
    黛も1日目に組の出し物「シンデレラ」を照明操作担当で終える。IoTを使った制御を行い、特殊演出が話題になった。
    あっという間に3日目、相羽ういはのステージに。午後2時30分から15分間が与えられた時間。
    黛の施設の人達も楽しそうにステージを囲む。
    それが見えるステージ脇で。
    「わぁ、すごい……わたしが目当てって人だけじゃないだろうけど、こんなたくさんの人の前で歌うの、はじめてです。」
    「いつも通りやれば大丈夫でしょ。施設の子達の笑顔を思い出したらリラックスできるんじゃない?」
    「すーーー……はーーー……うん、少し楽になりました…!」
    「ん。頑張って。」
    「…黛さん。」
    「なに?」
    「前に話した家の事と、友達の事、あれ実は嘘なの、気づいてました?」
    「え!?」
    「あはは、なにその顔。全部が嘘じゃないんですけど、それだけじゃないっていうか。」
    「他にも理由があったって事?」
    「はい……アイドルだって知られたくない人がいるって黛さん言ってたじゃないですか」
    「あぁ、うん」
    「わたし黛さん以外の人、全員にばれたくなかったんです」
    「…どういうこと?」
    「私がアイドルだって秘密が、黛さんと私を繋いでくれてる唯一の…理由な気がしちゃって。」
    「今日、2人だけの秘密がなくなるんです。それでも黛さんは図書室で私の歌を聞いてくれますか?」
    「そんなの当たり前でしょ。心配しすぎ。」
    「へへ……そうですよね。」
    「………ねぇ、2人だけの秘密があればいい?」
    「へ?」
    「前に施設で言ってた、2人だけのハンドサイン。」
    ここでハンドサインを見せる。
    「これが俺たちの新しい2人だけの秘密……って、ちょっと。かっこつけすぎって思ってるでしょ。」
    「っ、あはははは!黛さんかっこつけすぎ!」
    「なんなんだ一体……緊張解けるかなって考えたんだけど。」
    「あはははは、拗ねてる!あはははは」
    「…ありがとうございます黛さん。」
    「今日早速使うので、見ててくださいね♪」
    相羽さん、お願いします!
    「はーい!」
    「頑張って。」
    「はい!行ってきます!」
    全力アイドルのういはろと、客席の反応。そしてこっそりと送られるハンドサイン。

    ---

    冬。
    黛さん、選んでください。
    ……選べない。
    どうして?
    俺にそんな資格ないでしょ……
    なんでそんな事……
    だって……
    グリーディングなんてミッキーとミニーどっち行っても同じじゃない?
    違うよ!!何言ってるの!?

    年の瀬、ディズニーに来ている2人。
    グリーディングをミッキーかミニーかで悩んでいる最中。

    文化祭のステージをたまたま見ていた芸能関係の人にアイドルとしてスカウトされ、図書室に顔を出す回数が少なくなっているういは。
    久しぶりに図書室で顔を合わせた2人はディズニーに行く約束をしたのだった。
    ういはは相変わらず学校では眼鏡に三つ編みをしている。正体隠しという理由もありながら半分自身の好みだったようだ。
    黛の方はといえばあの時からあまり変わらず。
    ういはがいつ訪れるかわからないので図書委員の当番はサボらずに出るようにしていたものの、教室に行く機会は如実に減っていた。進級には問題ないくらいの出席日数だか、進学にはいささか心許ない。
    未だLINEの交換すらしていない2人だが絆は育っている状況。
    ういははしゅこやにもらったマフラー巻いてる。

    じゃあ両方行くー?
    えぇ…流石にしんどくない?
    え~……楽しいから寒いの気になんないよ?
    いやいや、それはういはだからこそ……
    あ、ちょっとおトイレ行ってきてもいい?戻ってくるまでにどっち行くか決めといてね、まぁゆ!
    はいはい。
    じゃあ行ってきます!
    見送る黛に手を振るういは。

    出会ってからもうすぐ1年が経とうとしている。
    変わっていくういはと、変わらない自分。
    ういはとの関係は良くも悪くも、変わらない。
    たった一人のアイドルから、みんなのアイドルになったというのに、接し方を変えてこないから心配になってくる。
    距離を取るならいいタイミングだ。3年生に進級したら委員会に参加しなくていいことになっている。
    そもそもLINEすら交換しておらず、直接図書室で会って会話をするしか連絡手段がないのだから、活動がなくなればういはとの関わりもなくなるだろう。
    2人の終わりが近くなって来ている今、どう結末をつけるか考えなければならない。
    「2人だけの秘密がなくなっても、黛さん、図書室で私の歌聞いてくれますか?」
    2人だけの秘密があったとしても人間関係を終わらせるのなんて簡単なんだろうな、と、連絡が取れない師匠のことを思い返した。

    待つ間スマホで写真フォルダを見返す。
    見上げたエントランスゲート。
    カチューシャを選ぶういは。
    施設の子に見せたら喜ぶと撮った大きなお城。
    蜂の羽音が聞こえてきそうな大きな本。
    野鳥が泳ぐ池。
    今日はチートデーなので!という主張の元、チュロスを頬張るういは。
    カートゥーンアニメの世界の街並み。
    笑顔で鉄格子を曲げるういは。
    ポップコーンバケットを掲げて満足げなういは。

    今日だけで何枚写真を撮ったのだろう。
    いつも整理して保存枚数が少ない携帯に、豊富な思い出が詰まっていた。

    そして、手元にないけれど。
    カチューシャを被せて笑うういはに写真を撮られたり。
    ドナルドとの写真待機列に無理やり並ばされてピースさせられたりだとか。
    景色を眺めているときにふと鳴るシャッター音だったり。

    きっと彼女のスマホにもたくさん思い出があるのだろう。

    お待たせしましたぁ~
    前髪を手櫛で整えながら戻ってくるういはに見られたくなくて、スマホをそっとしまった。


    帰り際、流石に寒そうに肩をすくめつつ、笑顔のういは。イルミネーションで煌びやかな景色を撮影している横顔を思わず写真に収める黛。
    あ、今撮ったでしょ。私変な顔してた気がする
    いつもと変わらないと思うけど?
    まぁゆ~?
    はい。すみません。
    あ!こっち立ってー最後のフォトスポットだよ!
    えーー……、はい。
    いいね、写真映えするね~
    ほらぁ見て、いい感じにイケメンだよ~
    笑顔で画面を見せるういは

    あ、あの。
    ういはに声をかける女性がいた。
    しまった。油断していた。
    この様子、ういはのことを知っているファンだろう。
    駆け出しアイドルが男とディズニーにいるところがばれていいわけがない。
    高速で回転する思考がまとまるより先に、
    あっ!大丈夫です、多分、他の人たちは気づいてないです!あの、本当にファンで…声かけてしまってごめんなさい。
    ういはに向かってこそりと言葉を紡ぐ、赤の他人。本当かどうかもわからないそのことを、ういはは信じるようで。
    わぁ嬉しい……!声かけてくださってありがとうございます!
    アイドルスマイルを振りまきつつ、対話をしているういはは普段の印象よりもずいぶん大人に見えた。
    春に見たあの少し自信のなさげな眼鏡の奥の瞳と今力強い輝きを放つその瞳。まるで違うようで、人を引き付ける色を持っているのはずっと変わっていない。
    きゃあきゃあと会話をしていたういはと女性が突然コチラを向く。
    まぁゆ!写真撮ってくれるんだって!
    はい、よければお友達さんとの2ショット、お撮りしますよ!
    えっ、俺?
    そうだよ、君以外いないじゃん!
    あぁ、はい‥‥
    じゃあ撮りますね~!3、2、1!

    ういはがこちらに向かって笑う。
    なんとなく、同じことを考えているような気がした。


    いい感じに撮れました!確認してください!
    ありがとうございます~!わ、映えてます~
    お手伝いで来て光栄です…!あ、友達が待っているのでそろそろ行きますね。
    ペコリとお辞儀をしあい分かれたあと、こちらに向くういは。
    先ほどまでの雰囲気から一転。普通の女の子に戻って、ふぁ~緊張した~と大きく息を吐いた。
    びっくりしちった…私のこと知ってくれてる人、いるんだ。
    お疲れ様です。
    え、なに。距離感じるんですけど。
    いやアイドルしてたなぁって…
    なにぃほっとかれてすねちゃった~?
    何言ってんだ。
    あはは、あ、写真!ポーズ!
    いや、目が合った時これしかないと思った。
    さすがに以心伝心できたの嬉しくない?
    2人で確認する写真には秘密のハンドサインをする二人。
    いいじゃん。いい写真じゃ~ん
    ……うん。

    まぁゆ、この写真どうしたい?
    ……どうしたいって?
    またまた~頭脳明晰な黛灰がとぼけないでよぉ

    そう、俺たちはLINEを交換していない。
    今日だって時間と集合場所を決めただけだ。お互い遅刻するタイプじゃなくて良かったと思う。
    写真をLINEで送ろうか?そう、言外に問われているのは理解していた。

    とはいえ、同じ学校の先輩後輩がLINEを交換するのと勝手が違うことは理解している。
    今写真を欲しいと言ったら、アイドル相羽ういははきっとなんのためらいもなくLINEを交換してくれる。

    でもそれを求めてしまったら、その先の未来で背負う後悔も増える。今諦めてしまえば、多大な幸福を得られない代わりに、大きな悲しみを背負うこともない。
    結局大事なのは利率なのだ。+を得れたところで、-も大きければコストパフォーマンスが悪い。
    それに温かく降り積もるここ1年の思い出たちが、いつか冷えて腹を内側から腐らせていくことがひどく怖かった。

    それでもこの輝きは離れがたいのだけど。

    …今更じゃない?アイドルにそんなこと言う資格、俺にはないでしょ
    まぁゆはアイドルになる前から関わりあるんだから、資格あるんじゃね?
    俺は……
    …そんな顔するのに、なんで悩んじゃうんだろうね
    表情を見られた照れ隠しに口元を隠す黛。
    実は俺、悩むの好きなんだよね。
    悩むのと、さっきのツーショ写真と、どっちが好きー?
    ……迷うなぁ。
    えー!!なんでぇ!?
    ういはと話してるの楽しいよ。誘われたら迷わずに遊びに行くくらいには、気に入ってる。
    そうなんだぁ
    見てて面白いしね、ういは。
    え、バカにされてる?
    純粋に、俺じゃ考えつかないことやるから、一緒にいて飽きない。
    まぁアイドルらしいってことなら、褒め言葉として受け取っておいてあげる!
    そう、後輩で、アイドルな相羽ういはが、俺は大事なんだよ。
    うん
    確かに出会ったときはアイドルじゃなかったかもだけど、今はもう、ファンがたくさんいるアイドルじゃん。
    これからどんどん大きくなっていくのに、足を引っ張れない。
    それは…ちょっと心配しすぎじゃない?
    でもういは、さっきの人の悲しむ顔、見たくないでしょ?

    ……でも、私は黛さんにもそんな顔してほしくないなぁ……。
    視線を合わせない黛に向かって微笑むういは。
    ……
    わたしが笑顔にしたいのは確かにたくさんの人だけど、その中には君も入ってるよ?
    今年1年、たくさんの勇気や笑顔を黛さんにもらったから。
    その分、君に笑顔を返したいなって思う人間が、ここにいます!

    ねぇ、黛さん、これからもずっと、あなたのことを笑顔にさせてもらえませんか?

    ういはもきっと同じ気持ちだ。
    目の前にこんな顔をした人がいるなら、笑顔にしたくなる。
    思わず、頷いた。

    何でも楽しめるういはのことだ。この先俺がいなくてもそれはそれは楽しくてキラキラとした人生を歩むのだろう。
    それなのに、俺とのこれからの別れを思って悲しませているのが不甲斐なかった。

    出会ってからの出来事を思い出す。
    こうやって出会ったからには、ここまで踏み込んだからには、彼女に対してある種の責任がある。

    アイドル相羽ういはが今まで教えてくれたのは、諦めないこと。そして恐怖を乗り越えること。
    ここに確かに縁がある限り、努力すべきは目の前の、大事な人を笑顔にすること。

    この人に出会わなかったら、俺はきっと別人のようになっているのだろう。

    ん、ありがとう黛さん。
    こちらこそ。ありがとう。
    じゃあ早速LINE交換しーましょ♪
    ん。

    軽く震えた後画面には「うー」と書かれたアカウント情報。

    あー、これでスマホ落とせなくなったなぁ。
    そうですよ、丁重に扱ってね?
    ういはも気をつけてね。俺のアカウント流出したら1番最初にういはが原因だと思うから。
    任せて!絶対に無くさないから!

    交換した側から気に入っているであろうスタンプを連打してくる。
    そう、こういう連絡にも耐えるのが俺なりの責任の取り方なのだ。

    わかった、わかったからスタンプ送るの止めて。充電なくなるから。
    しょうがないな〜後で充電器貸してあげるから!
    何で送るの止めるって選択肢がないんだ……。

    スタンプの後にぽつりと送られてくる緑色のテキスト。

    「ねぇ黛さん」「私たちって友達、ですか?」
    隣にいるのに声に出しづらくてそのままLINEで返す。
    「なに、突然。」
    「今年1年色々あったけど、結局私たちってなんなんだろうなーって」
    「友達なんじゃない?」
    「そっかぁ。」

    隣で口元を緩めるういはをとらえつつ、これは文章として残しておきたくなくて、ぽつりと呟いた。

    ……まだね。
    ……え?まだ?!
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