アクナイツ草案ロドスは、万年雪に覆われたウルサス領南端に連なる、龍の背のような山々の合間を二週間に渡って進航しつつ、比較的穏やかな日常を送っていた。快適に保たれている艦内では数多のオペレーターが各々に過ごし、発電施設は増加する電力を特段問題なく賄えている。進路制御班が言うには『新雪のせいで、荒野を進む時よりレバーが重い気がする』ようだが、前もって技術班が駆動部の出力機構を強化してくれていたおかげで、幅十数メートルはあろうキャタピラは力強く雪を踏み、重いなどでは表しきれないロドス本艦を背に黙々と進んでくれている。懸念されていたウルサス特有の極寒に起因するシステム障害は確認されず、また敵襲はおろか敵影もなく。オペレーター達が貴重極まりない長期休暇を満喫していれば、彼らの上に立つ代表達の仕事も三、四割ほど減少する。ロドス全体がゆったりとした連休状態となり、通常よりも多忙にしているのは駆動部に関わるサルカズ達と技術者、食堂を預かる者達くらいだった。
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