「不評だそうだな」
牛島に突然そんなことを言われたので、影山は首を傾げた。隣で着替える日本代表のエースが何について語ったのか、まるでわからなかったからである。
代表合宿は始まったばかり、合宿2日目の練習後であった。ナショナルトレーニングセンターのロッカールームで、左腕のエースは汗に濡れた練習着を脱ぎながら、当然のことを話すかのような調子で突然口を開いた。他のメンバーはとうに着替えを終えて部屋に戻っていたから、ロッカールームにいるのは牛島と影山のふたりだけだった。
影山は脱ぎ捨てた練習着を回収ボックスに放りながら、「何がっすか」と尋ねた。誰の何がどこに不評なのか、何も心当たりがない。直接聞いたほうが早いだろう。
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