「鬼鏡」 疫神1一
目に映るのは、底も知れない漆黒の闇。
それは己の運命を示すのか、それとも心の内を現すものか。
春日(かすが)は、ゆっくりと視界を巡らせた。瞳を開けようとも閉じようとも変わらない、黒い風景。どこまで続くのかも、どれほどの広さがあるのかも解らない。瞳に映るものは、何もないはずだった。
不意に、闇の向こうに浮き出るような白い光がぼんやりと立ち上ぼった。
丸い、毛玉のような光は、手も届かない彼方に、ただ揺らめきながら浮いていた。遮るものは、何もない。
春日は、顔色も変えず、手にした大筒を構えた。
低い銃声が響いた。
どさりと、重い音とともに光は消えた。その下には、狐の死骸が転がっていた。
「まだだ・・・。」
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