あたためて朝目が覚め換気のために暫く私室の窓を開け、身支度の最後にクラバットを巻こうとしたところで「りばい」と間の抜けた声が自分を呼ぶ。か細いそれに恐らく何度か聴き逃しただろうと思いながら足を向かわせる。
「やっと起きたか」
頭まですっぽりと布団を被った声の主を見て呆れた声が出た。いつまで寝てるんだと顔を顰めたところで目元だけ出した彼女と目が合う。
「りゔぁーい、抱っこしてよ〜」
「三十過ぎの人間が何言ってんだ」
「寒いの。抱っこしてあっちまで連れてって」
「いつまでも甘ったれてんじゃねぇ」
わがままを言う彼女に呆れてはいるが、それほど悪い気はしていない。突拍子もなく予想していなかった言葉を発する彼女に興味を持ち始めたのはいつだったか。出会った頃は二十代のクソガキだったが、今も大して変わっていない。
「寝てるのに窓を開けたリヴァイのせいだよ」
「さっさと起きろ」
身を屈め布団を剥がそうと手を伸ばしたら、彼女の両腕がリヴァイの首に回され引き寄せられる。伸ばしていた手は咄嗟に彼女の顔の横につき、同じほうの膝をベッドの上につくとグイグイと顔を引き寄せられた。
「寒いからあたためて?」
「……テメェ」
彼女の言うあたためてが抱きしめて暖を取りたいということなのはわかってはいたが、ふざけたことを抜かしたコイツが悪いとリヴァイは思った。ベッドへと乗り上げて体勢を整えれば嬉しそうに擦り寄ってくる。せっかく正した身支度のことが一瞬頭に浮かんだが、考えるのを辞めた。するりと服の中に自身の手を滑り込ませれば、彼女の小さな悲鳴が聞こえた。
「リヴァイ、手、冷たい」
「さっき手を洗ったばかりだったな。こうしてればすぐ温まる」
「あ、待って、どこ触って……!」
「お前が温めてって言ったんだろ」
「や、ちょっと!リヴァイ!そういう意味じゃないってばっ」
わかってるくせにと続く彼女の唇に噛みつき言葉を飲み込ませて、ついでに自身の唾液も送り込む。暫く鼻から抜ける声を聞き、薄らと目をあければ寒い寒いと言っていた彼女の頬は先程より紅潮し、腹や腰を撫でていた手を上へと這わせていく過程で随分と体温が上がっているのを確認した。
「は、ぁ、リヴァイ……するの?」
「さぁな。お前次第だ」
さっさと起きてくれねぇとどうなることか。