青々と茂る木々の葉の間から、光が差す。夏だ。
木漏れ日のなか、街道をゆったりと歩く。夏の気配は色濃く、落ちる。夏は私に縁遠い季節のように思っていた。
雪に音が吸われて、しんと静まり返った冬のことを思い返す。
窓辺に立つに人の、流麗な立ち姿。長い金の髪が玲瓏として輝く。
春夏秋冬がどれほど繰り返されたところで、ずっと冬であったような気がする。時が止まってしまったようかの錯覚。時を止めるのは自身ではなく、我が子の方ではあるのだが。
夏の気配がじりじりと肌を焼く。ただの錯覚だ。本当にこの肌を傷つけられるはずもない。だが。
道の先に立つ男を見つけた。振り向く動きに合わせて、長い金の髪が広がって、光を浴びてきらめく。
「カール」
笑いを含んだ声で呼ばれて、まぶしげに目を細める。
ああ、夏だ。命の鮮やかさをもはや隠す必要もない男はあまりにも輝かしかった。