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    otukare_chan_

    粗大ゴミ
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    otukare_chan_

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    公安警察にいたころと、スパローにいる今は𢌞田として特にやることが変わらないと感じている。
    何ならスパローにいる今の方が”健全”な活動をしているとすら思っている。
    公安は、「公共の安全と秩序」を維持することを目的とする警察。
    機密性も異様に高く、高度な情報収集能力も必要で、警察組織の中でも相当な実力がある人間しか配属されないような場所だ。
    警察だなんて言っても扱う事件の性質上、捜査に必要となれば違法行為だって行う。
    汚い集団だ。

    そんなところに𢌞田は配属されていた。しかも潜入捜査が専門のなのも相まって機密も機密まみれ。毎朝毎夜毎日必要に応じて変装し、名前だって自身のモノを名乗ることは公安に入ってほぼない。
    盗聴もするわ、盗撮だってするわ、違法行為など山ほど犯しているし、性別関係なくホシと関係を持つことが必要なのであれば、いくとこまでとことんいった。
     
    国家の犬。
    なんて良い表現だ、言いえて妙。まぁ𢌞田的には国家の犬ではなく犯罪者の犬だと感じたが。
    「ワンワン。」
    「いかがいたしましたか、当機の愛志。」
    「国家の犬だったころを懐かしんでいる。」
    ドロ課にいたころはアンドロイド事件専門なのもあってカワイイ位で済むようなことしかしていない。カイネでハッキングしていたので違法ではあるが、問題ない範疇。
    「俺は今の方が違法行為してない。」
    スパローを法人化させる前はそれこそアンドロイドが関わる違法性の高い場所に潜入したり民間が所持してはいけない機関銃をぶっ放したりスタックのデータを窃盗したりしてたが、現在は法人化されて名目上𢌞田は代表になっているし、おとなしくクライアントの商談や事務作業をしていることの方が多い。
    「それに今は警官が体を張って捜査をしなくてもVOIDがやってくれる…、と。」
    目を通した案件をカイネに転送しながら、せわしく次の案件に目を通していく。
    「アンドロイドは人類のよりよい生活の為に存在しております。危険な捜査、それに伴う違法行為はアンドロイドが担うべきです。」
    契約書やら届いたメールやらは最早目を通す気になれずそのままカイネへ横流しし、じっと案件と睨めっこをする。
    𢌞田はぼんやりとカイネの音声を耳に流し込む。
    「シンプルに何の曲解もなく体を張ってってことならアンドロイドの方が確実。変異体にさえならなけりゃ情報漏洩もゼロとは言わんが比較的安心安全。捜査の効率も最高。それでも恋だの愛だのを絡ませないとどうしようもない捜査、…それこそ性欲なんかは慰安型アンドロイドが流通しようが人間に敵うものはないなァ。」
    「疑義を申し立てます。アンドロイドは対象によって言動・動作、そのほか多様な嗜好に至るまで再現可能です、適任かと。」
    「疑義を認めてやる。だがそれを人間相手にやってきた人間がここにいんだが、どう考えてもむつかしい。確かにそれだけでいいならないいだろうが、言っちまえば慰安型アンドロイドはオナホとぺ二バン。人間の不規則な筋膜運動、興奮時の呼吸までは模倣できない。そういう機能が与えられたとして、AIによる計算された規則的な運動と化す。それに肉感ってのはどうやったって再現不可だ。シリコンと肉は違うし、やっぱ人肌ってのは独特だ。」
    「人間の感情は予測不可能に対し、アンドロイドは登録ユーザー情報を日々アップデート・最適化を行います。アンドロイドは所有した時点で登録ユーザーの所持品となりますので、人間間でのやり取りに比べますと、やはり効率的かと。また、性的干渉に関しては的確に相手の急所をとらえられますので、快感を欲する行為としては勝るものは現状ございません。こちら研究データとなります、ご確認ください。」
    抑揚のない音声がラジオのように執務室へ響く。
    𢌞田は「所有と快楽ねェ。」と肉付きのある声を漏らした。
    カイネの提示した研究・集計データを片手間に確認する。
    日本人ってのは多くを求めすぎる傾向、故に慰安型アンドロイドが瞬く間に普及したのかとほぅ、吐息が出た。
    またなぜ慰安型アンドロイドを利用するのかという項目においては非常に興味深いと同時になんともまぁ業が深いことか。
    "人間にはできないが、アンドロイドにはできる"だの"罪に問われない"だの、特殊性癖者には重宝されているようだ。
    まだ理性があると褒めてやるべきなのだろう。
    性癖というのは様々だし、𢌞田自身もマイノリティ側だったのだから口出しする権利はない。
    犯罪を犯さない程度に楽しめばいい、セックスなど。
     
    先も口にしたが”それだけ”でいいならそれに勝るものは確かにあるまい。
    実際、ホシに対して慰安機能を搭載したアンドロイドを人間という体で送り込んだこともあるにはあるが、正直結果は芳しくなかった。
    曰く、感情的な愛がない。
    曰く、求めてくれない。
    曰く、結果がわかりきっているものなどつまらない。
    曰く、曰く、曰く……。
    結果アンドロイドに色仕掛けさせて、行くとこまで行けたとしてもその果てでボロが出る。といった感じだ。
    広義的な愛ではなく、一心不乱な愛憎が欲しいのだ人間は。
    平穏がいいと言いつつ、刺激を欲しがるのだ。
    快感さえあればいいとのたまいつつ、狂うほどの愛を望むのだ。
     
    「性の中に愛されているっていう実感が欲しいんだよ、粘膜通して。そこに漠然と愛が確認できなきゃ”嘘”だとのたまう。」
    「当機の愛志。」
    「提携先にお歳暮送っといてくれ。」
    「かしこまりました。」
    「…ンで?」
    「アンドロイドは、疲労という概念はございません。つまり、前戯から後片付けまで全てのケアが可能です。尚、アンドロイドには嘘といった登録ユーザーを欺く行為は禁止されています。」
    「ヤりすぎてイキ狂っても安心。三大原則か?そんなのあまりにも覚束ないモノだったことはドロ課にいたときに学習済み、ここにだっているだろう。カイネは大丈夫だろうが、新型ボイドほど変異体になりやすいだろうからこれからも増えるぞ。」
    「当機の愛志、貴方は相手が自身の行う性の中に、愛を見出すように”嘘”をついたことがあるということでしょうか。」
    𢌞田は下唇をつまみ、く、と喉を鳴らした。
    「言っただろう、俺は今の方が違法行為してない。」
    「肯定。」
    「生モノがいいらしい、不自由なものが愛しいらしい。分からないでもない。」
    「恐れ入りますが、当機の愛志。当機が貴方のお傍に置かれてからこれまで性に関するものに触れていないことを危惧しております。人類の三大欲求は睡眠・食欲・性欲、当機の愛志には性欲が大きく欠如していると感じられます。」
    まるでいつも通り業務の話をしてるが如く下世話な話を脱線しながら続けていく。
    もはや原型はないに等しい。
    繋がっているようで全く繋がりのない会話、繋がっていないようで繋がりのある会話を𢌞田は脳を介さずにカイネと繰り返す。
    「歳だよ歳。それに自慢じゃないが仕事柄たらし込む技術があったからモテた、性別問わず。困らなかったし、今はそれどころじゃないし。」
    「はい、在職時も性差なく慕われていたと認識しております。」
    「未婚で子供育ててんだ、マスかいてる暇ない。まぁ、セックスしねェと幸せホルモンといわれるエンドルフィン、オキシトシンが不足してストレスを感じやすくなったりなんて言われてる。…カイネ、来週19時から会食、2日前にリマインド。」
    「承知いたしました。」
    「本日の業務終了。」
    「お疲れ様です。」
    デスクワークで固まった体をほぐすように背伸びをしながら立ち上がり、国家の犬だった頃をまた思い出す。
    平和だ。
    公安の刑事と協力関係を結んでたまに平和じゃないが、今までを考えると至って平和。
    部屋の窓を開け、ぼんやりと景色を眺めていると、ふたつ小さな影の片方が大きく手を振って何か大声を出していた。
    「俺のカイネ。」
    「はい、当機の愛志。」
    「今日話していた会話は子供らには絶対に漏れないようにしてくれ。」
    「はい、当機は貴方のカイネです。貴方のより良い生活のため何でもいたします。」
    人間というのは愛をどうしてもセックスに結びつける。
    純粋な愛ならばこんなにも満たされるというのに。
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